営利を背負った心理カウンセリングは機能するのか|ココカリ心理学コラム
オンライン心理カウンセリングで独立開業することにした。現在サービスの詳細を詰めている。前々から気になっていたこと、それは営利が絡んだ心理カウンセリングは、クライエントにどのような影響を与えるのか、ということだ。
私は今まで大学相談室や病院で心理カウンセリングを行ってきた。売上は組織に入り、カウンセラー個人には入らない。クリニックによっては成果報酬型の雇用があるので全部がそうだとは言い切れないものの、私は余計な事を考えずにクライエントが抱える困難の解決や病理の寛解に専心することができた。
独立開業すると、心理カウンセリングの目的に売上が加わる。カウンセリングで行う内容自体は変わらないのだが、カウンセラーの意識に金だとか保身だとか、そういったものがどうしても入り込んでくる。自分の目が腐らないように、以下の5項目を訓戒にしようと考えた。
新規顧客を流入させ続ける
まずは金の問題をクリアにしておきたい。クライエントからはその人にとって必要な代金だけを頂戴する。それ以上は貰わない。サービス内容に不満足で離脱する以外は、最少の実施回数で最大福利が提供できる姿が美しいと思っている。この思想・美学を貫き通す。売上を増やす手段は、新規顧客の獲得に傾倒させる。コラム書いたり取材受けたりの広報活動と、あとは伝手をあたって、このサービスが必要な人の目に触れる機会を増やす。興味関心を持ってくれる人が止まることなくサイトに入ってくる状態を目指す。
倫理観
カウンセラーが独立開業すると、医療の縛りがなくなる。やろうと思えば、やりたい放題できる。例えば、カウンセリング回数を増やすがために、不要なセッションを設けたり、ぬるま湯の共依存関係になったり、主線上にない問題をほじって新たな困難を表出させたり、有効性が不明な心理療法を実験したりなど、危険行為は枚挙に遑がない。クライエントには真っ当な判断を下せない精神状態の人もいるわけで、カウンセラーには倫理観が強く問われる。
ここで番人になってくれるのが、臨床心理士における「臨床心理士倫理綱領」、公認心理師の「公認心理師法」である。上記資格者はこの枠からはみ出す行為が禁止されている。カウンセラーであれば、枠のありがたみと重要さを、現場で身に染みるほど実感しているだろう。枠という限界の中で、クライエントのためにカウンセラーが支援できる精一杯を提供していく。
リファー先
病院で行う心理カウンセリングは、医師の指示のもとで行うため、語弊を恐れずに言うと、何かあれば医師やチーム医療が助けてくれるという状況であった。いい意味で責任は分散され、カウンセラーはカウンセラーの役目に専念できた。
独立開業すると、そばに医師もチーム医療もいない。だからこそ、リファー先の存在が重要になる。カウンセラーひとりで行えることの限界を真摯に受け止める。私ができないことは専門家にお願いする。リファー先との信頼関係を築く努力を怠らないこと。物理的に隣にいなくても、助け合える絆があれば、恐れることはない。
プライバシー保護
心理カウンセリングで明らかにされる情報は、一級品の個人情報である。取扱注意の情報を保持している意識を高める。法令を遵守し、本来の目的以外で使用しないことを肝に銘じ、データには何重の鍵をかけて管理する。
コミュニケーションの透明性
インフォームド・コンセントを必須とする。心理カウンセリングでは、全体的な見立てや各セッションの目的など、マクロもミクロも可能な限り説明する。同意を得ながら進めていく寄り添い感も大切で、ひとりで先走らないよう気を付ける。誠実であることを常に意識したい。
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通勤電車で読んでた「How Google Works」に、グーグルのスローガンが書かれていた。「長期的目標に集中する」「エンドユーザーの役に立つ」「邪悪にならない」「世界をより良い場所にする」。すごく素敵だなと思った。規模は違えど、私のオンライン心理カウンセリングルームも、これと同じ心意気で運営していく。
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2023年12月に開業しました。ご興味ありましたらぜひご利用ください。
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