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コロナ感染5日目:ちょー怖い、閉所恐怖症を発症する

感染も5日目になると第一回復期ともいうのか、熱はないし、咳もでないし、薬のおかげで取れてくる痰をせっせとティッシュペーパーでくるんで捨てることに終始できている。
まだ、食欲は完全ではないが、段々と日常というものが戻りつつあるのだなと感得している。

連休もあったせいで会社にも現況と今後のことを話すのがこの日になってしまう。とにかく、出社する前にもう1度PCR検査を受けてこいという話になる。迷惑と心配を詫びると電話を切った。

昨日まで家族と行っていたzoomは疲れたので勘弁してほしいと妻に言われる。妻になにがあったのかよく分からないが贅沢は言えない。勝手にコロナ感染して家族を放ってホテルに逃げ込んできている身分だ。そこは僕の分が悪いというもの。そこで一気に何もすることがなくなってしまった。

ふうと息を吐いてあたりを見回してもせまい部屋のなかは何も変わらない。窓の外には高層ビル群が見えて街は僕などいなくても回っている。
部屋のテレビは部屋の広さに全く合っていない大きさでベッドの真正面に据え付けてある。部屋のどの角度から観ても近すぎて目が疲れてしまうのでテレビ鑑賞は止めてしまった。

完全に詰んでしまった…という感覚が身体を支配してしまった。
ここからまだ5日間はでられないんだな…この部屋せまいな…テレビも部屋の大きさに合わない感じだから観るのつかれるなぁ

「閉所恐怖症」がやってくる!

シャワーでも浴びようかなとユニットバスに入った途端、「それ」はやってきた。胸の奥から圧迫感がせりあがってくる。ヤバい、きた!と思った瞬間、それは全身に廻ってゆく。

僕は実を言うと「閉所恐怖症」である。

簡単に言えば狭い場所が居心地悪いと感じるところの針が振り切れてしまう状態と言えばよいだろうか。たとえばエレベーターの中に閉じ込められてしまうとか、満員電車で身動きが取れない状態とか、そういった状態が非常に苦痛に感じるのである。

別に痛いとか痒いとかいう症状が出るわけでもなく、恐怖感というか圧迫感が喉元からせりあがってくるのだが、なにか自分の中の負を背負った生物が口のなかから出てくるという感覚に苛まれるのだ。ひどい人だと閉所と認識しただけで卒倒してしまったり、けいれんやひきつけを起こしてしまったりする。

健常な人から見ると「何なのこの人?」となるわけだ。なったことがないと理解と言うか認識さえも難しいものだ。それが間の悪いことに様々な場所と場合でフラッシュバックもする。

パラノイア的思考というか、見まい訊くまい思いだすまいと思えば思うほどにそういう負の思考回路にはまってしまう。そういうところがある。

閉所恐怖症のほかに、先端恐怖症、集合体恐怖症、潔癖症、など訊いたことのあるものから、悪魔恐怖症、(特定の)匂いへの恐怖、イギリス恐怖症(嫌悪)というものまで含まれるという。恐怖や嫌悪がそのまま意識の中に摺りついてしまい恐怖症として顕現するのだろうか。

とにかく僕は閉所恐怖症なのである。覚えはない。閉じ込められたことはないし、小さい頃に住んでいた家は、閉じ込められるような部屋もない家だったし、いったい自分に仕掛けられた「爆弾」がいったい何なのかわからないという恐怖がさらなる恐怖を呼ぶ。
エドガー・アラン・ポーの「生きたまま埋葬された花嫁」を読んだときの記憶もせりあがってくる。

コロナ療養なのに自分と戦う!?

とにかく、僕はせまい部屋の中を駆け回った。

縦3メートル、横2メートルしかない部屋を、だ。そこにセミダブルのベットがあるのだから、「駆け回った」という表現はいささか、適してはいないと思われる。喉から登りつつある恐怖感を押しとどめようとする。絶叫しようと思った時にさすがにそれだけは思いとどまった。違うところ(!)に運ばれでもしたらさすがにマズい。僕には大切な家族がいるのだ。なんとかして気を紛らせるしかない。

窓を開けたが、自殺防止用に拳ひとつ分も開かない窓。その日は風もなく外気が入ってくることもなく。少しだけひんやりした空気が頬を撫でただけだった。
スクワッドもしたがダメ、瞑想みたいに座禅を組んでみようと思い立ち座禅を組むがダメ、テレビを大音量でつけてみるがなにも気を逸らしてくれるような番組もないし、頭の体操みたいな計算問題をネットで見つけてやってみるが却って箱のなかをのぞき込んでいる自分を想像してしまったりと悪循環が続いた。

僕はそんなことを一時間くらいしていただろうか。

ピークが収まってくるととにかく関係のないネット動画をみたり、好きなジャズの曲の複雑なメロディをなぞったりしていた。こんなことが続くのかと途方にくれてしまったが、ここで事務局に内線をして早く帰らしてくれと泣きつくのも宿泊療養証明書が無効になってしまうと思い我慢した。
すこし後に宿泊療養でも入院保険が下りる(!)ということを訊き付け、それも後々のモチベーションアップにつながった。

ホントに自分と言う人間のポンコツさにはうんざりする(苦笑)

もうそんなこんなで自分を信用していない。20代・30代の頃に酒豪としてその名をほしいままにしたが、40代になった途端、ブラックアウトを繰り返し、すっかり意気消沈してしまった。老いてゆく自分が今までの自分と違うようで、そのぜい弱な肉体を嫌悪した。そんなときにまた「閉所恐怖症」も起きるようになってしまった。他人に話してもわかってはもらえない。ただのコンプレックス自慢に文脈を変えられてしまう始末。

まあ、とにかく死ぬ思いで気を逸らし続けてようやく平穏な状態になる。
そうは言ってもフラッシュバックしやすいので、そういう波が来そうなときは深呼吸をして、別のことを考えることにした。
僕の場合はやったことのないソロキャンプのことを考えた。火をどのようにつけて、どのように持ってきたと思しき食材を調理し、酒を飲むことを考えて、フラッシュバックタイムに備えた。
ここでバタバタ騒いでしまったとしても病気で隔離されているわけだから、パラノイアのせいで発作が出てしまうと言われても、隔離を優先させるに決まっている。どう考えてもそういうものだ。あまりにも分が悪い。

せっかくなので下にその日に出た食事を載せてみた。例によって昼食を持ってきたときに閉所恐怖症の発作がでたのでその時の写真はないのだが(笑)


朝食はボイルソーセージと温泉卵とサラダ(シーザーサラダもどき?)とサラミハム、ポテサラ。デザートにマンゴー。
夕食は、インドのロティサリーチキン的なソテーとヒレカツ、豆の煮もの、タケノコと人参・ほうれん草のお浸しなど

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