傘🌂は杖代わりになる？　～杖を使って貰うためのヒント～

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    「俺は、杖よりこの傘で歩くのが良いんだ。」
　「傘の方が安心なんだ。」
　「杖を使えって？」
　「傘と変わらないじゃないか。」
　「杖よりコレ（傘）が安定するんだ。」

　面白い写真（☟）があったので、勝手に想像してみました。この方（以下Aさん）に、杖を使用して欲しい場合、どの様にお話をしていきますか？

　仮に、上の写真とは違う方で、歩行が安定し、杖なしで転ぶ心配もなければ『どうぞどうぞ』って私は言います(^^♪

　問題になるのは、上の写真の様に、Aさんが立った姿勢ですが、杖に荷重をかけていますね。明らかに膝が曲がり、つま先に重心が乗っています。

　（これは・・・杖を勧めたほうが良さそうだ）

　しかし、明らかに危ないのに、冒頭の様にAさんは拒むんです（笑）さぁ、困った・・・

　この様な時、お勧めしないのが

　『無理やり杖に変える事。』争いに発展しますね💦

　関わりを作る為には、まず共感を示すことが必要です。しかし、傘を杖代わりにする事に賛同する事ではなく、

　「Aさんは、安定する傘を使って、安心して歩きたいと思っていらっしゃるのですね。」

　と、Aさんが言った言葉を表現します。Aさんは『傘を使う事を理解して欲しい』のですね。

　今回は、話の『矛盾』にアプローチしてみます。

　ベテランであるほど、知恵が豊富な為、問題解決に向けて、すぐにでも以下のように助言や示唆を与えたくなりますが、これらはタイミングを見計らった方が良いでしょう。

　「傘で歩いていたら腰や膝を悪くしますよ。」
　「傘が壊れますよ。」
　「杖は高さも変えられて、握りやすくなっていますよ。」
　「いつか転びますよ。」

　助言や示唆、解決策を与えることを否定している訳ではありません。繰り返しになりますが、Aさんが『矛盾』に気づくことが大切なのです。いきなり解決策をお伝えするのではないという事ですね。

　解決策をお伝えした結果、Aさんと論争に発展したら会話も中断せざるを得ないのです。

（しまった💦もう説得は出来ないかも・・・）

　という展開だけは避けましょうね。

　早速、本題に入ります。

　方法としては、矛盾をこちらからは指摘しません。

　『では、傘ではなく、どのように杖を使って貰うのでしょうか。』

　前述しましたが、まず「Aさんは、安定する傘を使って、安心して歩きたいと思っていらっしゃるのですね。」と『共感』を示すことが必要です。

　次に、傘から杖を使って貰うという話の『方向性』を決めます。

　Aさん：杖を使った方が良いと家族から言われるけど、傘を使っても歩けるから、どうして杖を使わなければいけないのかと思う。
　私：ご家族から杖を使った方が良いと言われるのですね。それで、毎回Aさんは嫌な気持ちになるのですね。Aさんは、杖を使って欲しい理由はご家族からお聞きになっているのですか？
　Aさん：歩いているのを見て危ないと思っているからだろうな。
　私：Aさんご自身では歩く時に危ないと思っていらっしゃいますか？
　Aさん：俺は思わないんだよ。でも家族がそう言うんだ。
　私：お話して下さり、ありがとうございます。ご家族から、どうして杖を使って欲しいのか理由をお聞きした所、Aさんの膝や腰が曲がってきたのをずっと見てきて、転びそうになる姿をみて心配になったそうです。
　Aさん：俺はもう歳だから、膝や腰は仕方ないよ。今は転ばずに歩けているし、家族には心配させないし。
　私：Aさんは、ご家族には全く心配させていないと思っているのですね。
　Aさん：少しは心配かけているかもしれないけど、傘があれば安心なんだ。
　私：Aさんも、歩く時に危ないから傘を使い始めたけれど、ご家族には少し心配かけてしまっている気持ちもあるのですね。
　Aさん：そうだな。
　私：もう少し膝や腰を伸ばせたら、ご家族に心配されずに歩けるようになりますか？
　Aさん：小刻みに歩くのも見かねているのだろうな。
　私：そうでしたか。それでは、姿勢が伸ばせて、歩幅も広くなればAさんも安全ですし、安心して歩けますね。ご家族にも安心して貰えたらよいですね。
　Aさん：そうだな。
　私：もし宜しければ、私からいくつかご提案があるのですが・・・・

と、このように展開していきます。

（多少頑固設定でしたので、長くなりました（笑））

　しかし、随分と展開が変わってきましたね。　

　このように『方向性』にフォーカスする事が大切になります。

　論点がズレてしまうと、話が進んだ後に振り出しに戻ることがあります。ですから、しっかり照準を合わせます。

　そして、次に

Aさんが発言した言葉から、変化へ繋がる言葉を引き出します。

　私：歩く時には傘が1番安定すると伺いましたが、一方、ご家族には今の歩き方で不安にさせていると思っていらっしゃるんですね。
Aさん：傘は安定しているんだけどな。
私：歩く時は杖より傘が一番なんですね。
Aさん：傘は安定していると思うんだけどな・・・
私：姿勢を伸ばすには傘を使うのが一番良い方法と考えていらっしゃるのですね。
Aさん：いや・・・傘を使うのは慣れているから使っているんだ。俺だってもっと良いのがあれば使う気持ちはあるよ。

Aさんと私の会話の中から、自身で述べた矛盾にAさんが気付き始めています。ひとは矛盾の存在に気付き、述べ始めると、変わるためのキッカケになるのです。

　矛盾に気付いた所で、具体的に杖を使用して貰えるように支援（計画）していきます。

　今回のAさんについては、２つから計画を立案してみます。

　　🔴最初から出来合いの計画（杖を使用して貰う）
　　🔵選択肢から選ぶ必要がある

　まず🔴では、杖を使用して貰う計画が予め出来ていますので、
　例えば、

　①杖は高さ調節も出来ますよ。
　②高さ調節も出来ますので膝や腰にも優しく、姿勢も起こしやすいですよ。
　③膝や腰の痛みはありませんか。
　④実は、杖先がゴムになっているので滑りにくくなっております。
　⑤傘は上から下に垂直に荷重をかけないと滑りますが、杖はゴムが変形する様に出来ていますので斜めに杖を着けられますよ。
　⑥斜めにつけて、安定するので、安心して歩幅を広げられますよ。
　⑦杖の握り部分が手のひらに密着するような形になっていますので握りやすいですよ。

　など、この段階で助言や示唆を与えていきます（冒頭部分で控えていた助言を活用します）。しかし、あくまで大切な事は、ご本人の発言を促す事、動機に繋がる言葉（ご本人に杖を使う事を決めていただく事）です。

　「使ってみるよ。」

　と言って貰えたら、殆どの確率で使っていただけます。

次に🔵では、杖を使用するか悩んでいる場合ですね。
例えば、

　①傘で安心されておりますが、まず杖を使う練習を一緒にしてみましょうか。
　②杖を使う抵抗もあるようですので、お家の中で使ってみましょうか。
　③杖の握り方、高さ調節の仕方、着き方など、まずは杖をご覧になってください。
　④お好きな色は何色ですか。（杖の色）
　⑤杖に慣れる為に、傘の握りの形に似た杖を使ってみましょうか。
　⑥まず1日使ってみませんか。
　⑦今、杖をお持ちしているので一緒に歩いてみませんか。
　⑧リハビリの先生に来てもらって一緒に歩く練習からしてみませんか。　

　など、何をいつ行うのか、杖の使用を一日のどこに組み込むのか、日常生活の流れを考えながら実行可能な計画を立てていきます。階段を上るように簡単な計画から、進んでいくと杖を使って頂けると思います。

　実際に、杖を使って頂けなかった場合もあると思いますが、その際はフィードバックをします。そして方向性にフォーカスし直してみてください。

　この様なステップを繰り返していくうちに、改善したい、相談に乗る、説得する、交渉するなど、憂鬱になりそうな場面であっても、日常の会話であっても自信を持って話を展開できるようになってきます。

　皆さまのご参考になれば幸いです。お読みいただきありがとうございました。

　この記事は、主にコミュニケーション学、医学（解剖学、脳科学、生理学など）、心理学（行動療法など）を中心に、掲載する写真に合わせて、交渉学など他の学問も織り交ぜていきます。そして、この記事はテーマの方を限定とした内容のみに留めていません。
　職場（従業員や生徒など）、家族（祖父母、父、母、本人、妻、子）、友人等の人間関係にも当てはまる内容です。
　専門用語はなるべく控え、簡潔に記載するように心がけておりますが、悩みを解決したい、対人関係を良くしたい、思うように話を展開させたい等、ご興味のある方がおりましたら、今後もぜひお読み頂ければ幸いです。

　記事を少しでも必要として下さる方がおりましたら、今後、写真を変えながら、記事を連載して行こうかなと計画しております。

お読み下さり、少しでもサポートして下さる方がおりましたらとても嬉しいですm(__)m

　※是非、スキ・コメントもお気軽に頂けると次回の参考になります(^^♪

＜追伸＞
　仕事仲間の皆さまへ、私のお話を現場で実践して下さり、話の展開が180度変わったと温かいお言葉を頂き感謝申し上げます。今後もご活躍をお祈り申し上げます。