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書評

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2021年3月の記事一覧

村木厚子(2020)『公務員という仕事』ちくまプリマ―新書



厚生労働事務次官を務めた著者による、若者向けの職業解説本。公務員という仕事のやりがいを、当時数少なかった女性総合職としての視点も踏まえて、分かりやすく伝える。

著者は公務員キャリアの途中で郵便不正事件で逮捕・起訴されたが、無罪判決が確定し復職、その後厚労省官僚トップの事務次官まで昇り詰める。検察のミスをただ批判するのではなく、改革のために何が出来るのかを主に前を見るべきだと説く。

行政の在

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湊かなえ(2016)『山女日記』幻冬舎文庫



山を手がかりに、身近な人や見知らぬ誰かの新しい人格と出会い続ける物語。そして必然的に自分自身の心を問い直すことに。読後の爽快感と、あぁ山に行きたい!という思いは折り紙付き。

一つのものを好きになるといっても、その在り方は十人十色。一人で山と向かい合いたい人もいれば、誰かと一緒に出掛けたい人もいる。何でもいいのは間違いないけれど、中には山での出会いが日常にということがあるのはやっぱり新鮮。

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瀧本哲史(2013)『僕は君たちに武器を配りたい エッセンシャル版』講談社文庫



夭逝した投資家・教育者であった氏の若者に贈る一冊。資本主義という競争社会のなかで、どのような生き方が評価されるか概説し、若者に社会を渉る指針を授ける。

社会全体のパイが放っておけば縮小していく現代にあって、価値を創造する側に立つにはどのような考え方が必要かを説く。そして最後には著者のような「投資家」が果たす役割を朗々と謳い上げる簡潔にまとまった良書。