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「うるさ型がみても大丈夫」という設定値を踏まえて「ものづくり」をする/編集者の言葉#10

今回は、映画パンフレットを中心に活動した編集者で、『POP中毒者の手記(約10年分)』などの著作があるライターの川勝正幸さんの名言に、編集者としての心構えを学びました。

意識というか、この仕事だったら自分の知っている何人かのうるさい人が見ても大丈夫という設定値を、その都度考えますね。/

『東京の編集』

「パンフであれ本であれ、川勝さんは自分の客、自分の読者を意識しているように思える」という質問に対して、川勝さんが答えたのがこの言葉です。

「いい本をつくる」といいますが、目指すべき指針がないと、ときとしてそれはひとりよがりの「いい本」になってしまう可能性があります。そこで川勝さんは「自分の知っている何人かのうるさい人が見ても大丈夫」という具体的な設定値を、その都度自分に課しているのです。

実によく考えられたクオリティコントロール法だと思います。と同時に、川勝さんのクリエイティブに対する自信と男前っぷりを感じました。

川勝さんが主戦場とした映画パンフレットの世界は、マニアも多いです。

とはいえ映画パンフレットは、一般の観客のためにもあるわけで、マニアのほうばかり向いていたら、一般の観客が楽しめない映画パンフレットになってしまうことになりかねません。

そこで、マニアの人だけでなく、一般観客にも伝わるような二重構造の、いわば開かれた編集となるように気をつけているそうです。ほんと、バランス感覚がいいですね。

自分が楽しいのが一番ですが、クライアントをはじめ、仕事に関わったすべての人がずっと取って置きたいと思わせるモノづくりができたら最高ですよね。それはクライアントに媚びるということではなく、その仕事を通して、誰もが新しい喜びがあったかどうか、なんじゃないでしょうか。そういう意味では。執筆陣やデザインや仕様に、絶妙な冒険があったほうがいいと僕は考えています。/

『東京の編集』

※川勝正幸さん編集書籍の代表作「裏小泉」と「コーネリアスの惑星見学シリーズ」。

映画パンフレットのみならず、書籍においても絶妙な冒険精神で人を喜ばせ続けた川勝さん。いまもご存命だったら、どんなファンタスティックな映画パンフや書籍を編集されたかと思うと急逝が残念でなりません。

最後まで読んでくださりありがとうございました。
よい一日を!


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