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記事の小説まとめ

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記事で書かれた小説をすべてまとめています。
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2023年6月の記事一覧

【毎週ショートショートnote】口移しサドル

相棒に呼ばれ、俺は食卓へとむかう。

「今日は豚の角煮だ」
「うっわ、豪勢。ごちそうだ」
「下処理が、面倒だったな」
「つくってくれて、ありがとう」
「ああ、じゃあ」

「「いただきまーす」」

角煮のトロトロ具合が、何度も噛みしめたいくらいにおいしい。
相棒の料理の腕が上達は、俺が一役かっている。

あれが食べたい、これが食べたいと、ねだるからだ。

「うまそうで、なによりだ」
「そうだね。あの

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【毎週ショートショートnote】生き写しバトル

先祖代々の力を借りて、バトルせよ!

生き写しバトル!

…というインディーズゲームを見つけたので、そっと購入ボタンを押し、さっそくやってみた。

初期設定では歯が立たない相手に対して、子孫を増やし、その中でも傑出した力を持つ人間の力を脈々と受け継ぐ…という、ゲームとしてはありがちな、力をひきつぐタイプのものだったのだが。

子孫を増やしていると、その中で一族離反し、相手も似たような力で主人公を翻

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【毎週ショートショートnote】I 魚人(あいうぉんちゅ)

「高嶺さん、わたしのぶんのTシャツも買ってくれて、ありがとう」
「お礼を言われるまでもなくってよ」

高嶺さんのTシャツは塩人(しおんちゅ)。
わたしのTシャツには I 魚人…これ、なんて読むの?

「高嶺さん、わたしのTシャツ、なんて書いてるの?」
「あいうぉんちゅ、ですわ」

あいうぉんちゅ。
I want you. ということだろうか。

今、高嶺さんに告白…されてないな。うん。

「魚に人

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【毎週ショートショートnote】塩人(しおんちゅ)

広大な海が、目の前にある。

「いっしょに、泳ぎましょう!」
「は、はい」

わたしは高嶺さんに手をひかれて、海へ行く。

けど、高嶺さん、ものすごくスタイルいいな!
いつも思ってたけど、口には出さなかったけど。

「ふう、たくさん泳ぎましたわね」
「そうだね…」

高嶺さんがTシャツを着てくれたので、目のやり場に困らなくて済んだ。

Tシャツには塩人と書かれている。

「高嶺さん。塩人って、どう

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【インスタントフィクション】 待ってるよ をAIが妄想解説してから、私が感想からの妄想解説を書く。 

【インスタントフィクション】 待ってるよ をAIが妄想解説してから、私が感想からの妄想解説を書く。 

みんなのフォトギャラリーより杉江慎介|デザイナー様からイラストをお借りしました。ありがとうございます。たいがいの温泉施設ではサウナがついているのが、とてもうれしいですよね。私はどっちも好きですが、最近は風呂派になっています。風呂派とサウナ派の争いみたいなものは、ないと思いますが、まあ、今回のインスタントフィクションは、そういうおはなしです。「風呂好き」「サウナ好き」という言葉がゲシュタルト崩壊を起

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【毎週ショートショートnote】デジタル混入島

「計測器がないと、意味ないですね。ってなわけで、アプリに嘘発見器をインストールしました。勝負再開です!」
「もういいでしょ。不毛な争いは、やめよう」
「まずは、私からです!」

理香ちゃんは僕を無視して、林檎ちゃんにむかって、大声で叫ぶ。

「林檎さん、私は親友ですか?」
「親友じゃないね」
「親友になったら、恋人になれますか?」
「理香ちゃん、女の子だから、なれないかな」
「私が男になったら、つ

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【毎週ショートショートnote】アナログ巌流島

「犬先輩! 勝負です!」
「え、なに?」
「どっちが、林檎さんをよろこばせられるかの勝負です!」
「なんで、そんなこと、しなきゃならないのさ」
「勝負です!」
「どんな勝負なの?」
「林檎ちゃんは、口をはさまないで、ややこしくなるから」
「ルールは、林檎さんを口説いて、恥ずかしがらせたら勝ちです!」
「え…それ、僕になんのメリットがあるの?」
「私が先行です!」

理香ちゃんは、大声で叫ぶ。

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【毎週ショートショートnote】名を自動転売鬼

「お面を買ったらね、名前をつけるんだよ」
「じゃあ、おばあちゃんはメガロドンにするわね」
「うん!」

だから、メガロドンとは、なんなのだ。

「じゃあ、みかんちゃんは、どうかしら」
「かわいいね!」
「かわいいわねえ」

みかんに関係するものなのだろうか。
私がそう考えていると、孫は、なにかのお面をつけはじめた。

「ふっふっふ。私は名前転売鬼…! 転売デーモンであるぞ! お前のみかんちゃんは私

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【毎週ショートショートnote】顔自動販売機

「今日は自動販売機になるの! おばあちゃん、好きなの買ってね」
「あら、ありがとうね」

今日も孫は妻と遊んでいる。
自動販売機に自らなるとは、なかなかにトリッキーな遊び方だ。

「なにを売ってるのかしらねえ」
「顔だよ!」

まさかの。

「へえ素敵ね。どんな顔を売ってるの?」

妻はどうじることなく、孫につきあっている。

「えっとね、まずはこれ!」

孫は紙でできたお面をいっぱい持ってきた。

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《記事小説》小川未明読書感想文通 7通目

ショコさんからの手紙がくるスピードは、とんでもなく早い。

昨日、手紙を送ったら、明後日には、手紙の返信がくるぐらい早いのだ。

速達で送っていないから、ショコさんは私の近くに住んでいるみたいだ。

もしかすると、どこかで会っているのかもしれない。

ショコさんらしき人が、私にはなしかけてくるのを想像してみる。
きっと、落とし物をひろってくれるに違いない。私はよく落とし物をするから。

よく落とす

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