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『スティール・ライフ短編集』の話(文学フリマ東京36)

文学フリマ東京36のために用意した小説の紹介記事です。
5/21 東京流通センターに遊びに来てね。

アクションを書きたかった


 小説投稿サイトに載せている、私の初めての長編シリーズだよ。近未来SFアクションにしたのは、自分がアクション映画を好きな影響で、映画を見つつ、「こういうの書きたいな」と思っていたから。それで書いたらボツまみれになり、試行錯誤の結果、こうなりました。  
 スティール・ライフ
 手探り感がハンパないです。設定ブレブレです。今読み返すの超こわい。でも最後の一文に着地したときの「やったやーん」みたいな達成感、良かったな、という思い出。

なんとなく書いてボツだらけ

 2018年頃、なんか攻撃力のあるものを書きたかった。それ以前もアクション書きたい欲は度々あったが書き方がわからなかった。
 書いてみないと始まらんというのと、福井晴敏などの硬派な作家への憧れもあり、ちょっと真似して書いてみたのである。
 しかし、これまで一人称で二万文字くらいの話ばかり書いていたので、全く進まなかった。三人称特有の視点や、どうしても増える登場人物の立ち回りが下手すぎて、ボツ続きだった。基本のキャラクターや設定はあったけど、上手に動かせなかった。

映画を書こうと思った

 自己紹介の記事と一部被るが、ある日、家でトニー・ジャーの映画を見ていた。本人の動きももちろん食い気味で見るけど、見ているうちにマーシャルアーツはデザインだと思った。きちんと計算されたアクション構成。そしてそれをどんなアングルで撮影すれば主演が映えるのか。そのカメラの動きを追ってヒントを得た。

 「なーるほど。映画を撮る体で書けばいいのか」
 そう思って早速パソコンを開き、キャラクタを書き出して、作りたいシーンをイメージした。頭の中にロケーションを広げ、人を配置する。私が監督である。もちろんカメラマンや照明スタッフなどもイメージの中に配置する。「アクション」の脳内ボイスと共にキャラを動かすと、勝手にタイピングが進んだ。
 「お、いけるんじゃないの?」と思って、ようやく自分スタイルが決まった。だから登場人物たちは皆キャストであって、おのおの役作りをして作品に作品してもらってる。そんな設定で書いている。

気づいたらシリーズになった

 そうして気づいたら4作書いていた。というより、1作目の途中で「あと3つ書くだろうな」と思って、実際そうなった。それで短編含めて計8作で完結することができた。
 振り返ってみればイビツな話だけど、「ひとつの作品をちゃんと書き終える」目標が達成できて、本当に嬉しい。やってみたかったこと、ぜーんぶ詰め込んだよ。
1、ソリが合わないやつと組まなきゃいけない展開
2、いわゆる中二っぽさを含む設定
3、主人公のピンチを助けに行くツンデレ
4、魅力的なライバルの登場
5、格闘技を使う、マーシャルアーツメインのアクション
 等、いろいろ書けて楽しかった~。

活躍してるのは、ほぼ30代のキャラクター達

 登場人物は、そのほとんどが20代~30代のアラサーになった。
 自分が30歳を超えて、自分も周りも含め「30代って全然大人じゃないじゃん、30代ってまだまだこれからじゃん」と思ったからである。
 アラサーならではの悩みもあるし、20代のやんちゃ期を通り過ぎた熟成中みたいな人たちを書きたかった。
 絶対万能なヒーローではなく、普通の生活を大事にしていて、有能かもしれないが優秀とは少し違う人たち。だから協力し合わないと乗り越えられないし、誰かの行動で失敗に繋がったとしても補い合える関係性にしたかった。主人公1強にはしたくなかった。むしろ助けてもらいっぱなしである。

 モノはアクションですが、彼らは話の中で“仕事”をしてるので、仕事に対しての向き合い方とかも大事にした。現実の30代もだいたい係長職とかにつく頃だな、というのは勤め先の社員さんを見ていて思ったので、登場人物はアラサーにしました。伸びしろまだまだあるからね。

タイトルが決まらなくて

 一作目書き終えたはいいけど、タイトルがなかった。候補はあったけどピンとこず。一体何がしっくり来るんだろうと、ふと本棚に目をやると、池澤夏樹のスティル・ライフ(still life)があった。これじゃん。と思ってスティール・ライフ(steel or steal life)にした。
 そう、これはオマージュ、オマージュなのである。池澤夏樹氏は私に「読む楽しみ」をくれた作家だよ。

 名前にもこだわりはあまりなく、音の響きで決めることが多い。しかし注意しないと母音の音がほとんど「あ」で終わる名前だらけになってしまう。広がりある音が好きみたい。でも1作品に石原、笠原、大原がいた時はさすがに驚きました。即変えました。
 主人公の名前は伊野田さんでして、イノダコーヒーから借りました。大丸の上にあるコーヒー屋で大人が行くところ、という認識で憧れがあったのでイノダさん。漢字は当て字です。こないだ札幌大丸のイノダコーヒー行ってきたよ。焼き菓子おいしかった~。じゃ、本の仕様だよ。

『スティール・ライフ短編集』の詳細

文庫本 164P SFアクション

あらすじ

”近未来、メトロシティではAI産業の競争が激化し、オートマタ製造が普及したおかげで、人々の生活は格段に向上した。
一方、オートマタを違法に製造し犯罪に利用する者も増えた中、伊野田はそれらを取り締まる機関「事務局」に所属していた。そして登録名:ウェティブという違法機と自身に思わぬ関係性があると知り、彼はオートマタ産業の重鎮である「笠原工業」と対立することになる。”

 今回はより作品の魅力を伝えるため、短編集をつくりました。カクヨムに載せている番外編3エピソードと、本だけでしか読めない書き下ろしを収録しました。いろんなキャラクターの魅力が一冊で楽しめる超お得本です!
イラストは、そのエピソードに寄せて描いていただきました。ご覧の通り、とてもかっこいいです。

見どころ

 普段はちょっと抜けてて同行人に怒られてばかりの主人公が、いざオートマタとのバトルを開始すると、一気にかっこよくなるギャップが最高です。
 登場人物たちが紆余曲折しながら連携していく様も、見どころのひとつです。この話にでてくる人たちは、ウダウダ言いながらやることはやるし、問題に直面しても「なんとかせねば」と動きます。たとえチームとして未熟でも、今の最善はどれだ? と考えることができるのがわたくしの強みです。自己PRか。
 人間とオートマタの境界に悩む主人公が、自分と同じ境遇で全く違う立場のオートマタと対立しつつ、相棒や仕事仲間達と問題に立ち向かう姿のカッコイイこと!
 私的「かっこいいとは、こういうことさ」を詰め込んだアクション小説、ぜひ読んでみてほしい。
 

世界観

 近未来的だけど、どこか退廃した都市メトロシティが主な舞台です。煌びやかなはずなのに、虚無的漂う街です。本編だと海辺の観光都市や軍事的中立地帯に行ったりします。短編集では荒地や田舎町が出てきます。地域ごとの格差が大きいです。

 総じてハードボイルドな雰囲気が漂ってますが、重くなくどこかコミカルな部分もあります。キーワードはハードボイルド、サイバーパンク、絶妙な距離感、アクションなどです。

デザイン他

 今回のとてつもなくかっこいいカバーデザインは、ハルサカさんへお願いしました。ありがたいことに、小説の雰囲気とハルサカさんの好みのテイストがマッチしたらしく、とても楽しんで描いてくださったそうです。しかも超気さく。すっかりファンです。裏表紙もイイんだわ、これが。
 印刷は、今回も本はちょ古っ都製本工房へ。ブックカバーはプリントオンに発注しました。プリントオンはテンプレートが豊富で対応も超丁寧でした。

 というわけで、自身の作品『スティール・ライフ』の紹介でした。
 ネットに載せてるものは、正直いって形の崩れたシフォンケーキみたいな出来ですが、味はおいしいです。
 ぜひ文学フリマで短編集をゲットしていただき、それをホイップクリームがわりに本編を楽しんでくれたら本望です。
 
にこにこいらっしゃいませ、で待ってるね。

今回も読んでくれてありがとう!
次の文学フリマ案内はブース番号決まってからかな。
またねーん。


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