見出し画像

■色気のある美人保育士


先輩主催の保育士さんと医師の飲み会で、一際目立つめちゃくちゃ美人で、胸の谷間を強調し、かつ太ももの絶対領域さえもあらわにしたセクシーな女性がいました。しっかりと目を見て話す美人な女性。飲み会に参加している男性は、みんなハートを射抜かれていました。そんな中、先輩に呼び出されて、男性トイレでの作戦タイム。先輩は我々後輩に、うまくアシストしろと言うのですが、全然彼女は先輩に気がない様子。後輩の我々は、どうしたものかと思っていました。

そして、何度目かの先輩の呼び出しで、先輩はついに声を荒げました。
「なんなんだよ。あいつ!」
自分の方に振り向いてくれない彼女が、後輩と少し話すだけで、トイレで説教をしたり、悪態をついたりします。
「だいたいなんで、あんな格好して来ているのに、誘いに乗らないんだよ!」
先輩は、美人の女性に対しても怒りの矛先を向けます。

(いやいや、それは先輩の態度が‥彼女は先輩の話を聞いてくれるので、先輩は気持ちのいい思いをしているけど、いざ彼女が話そうとすると先輩は話を聞こうとしないんだもんな)

という声が、みんな喉から出かかっていましたが、あんな美人だと先輩も冷静な考えができず、舞い上がってしまうのは仕方ないことかもしれません。

■美人保育士と良い仲になった友人


だんだんと私の友人と彼女はいい雰囲気になってきました。友人は彼女の話をしっかりと聞いてあげているからでしょう。自分の落ち度が理解できていない先輩は、こめかみに血管が浮き出るぐらいイライラしています。飲み会の終わる時間となり、結局先輩は美人の彼女と仲良くなれないままでした。面白くない先輩は、後輩を何人か引き連れて、別の店で飲むぞと声をかけます。ですが私は、おつきあいしている彼女がアパートに来ているので、先輩にこの後の飲み会に誘われなかった友人と二人で帰りのタクシーに乗りこみました。

「連絡先もらっちゃった」
嬉しそうに話す友人に、そのことが先輩にバレると面倒なことになるから、と伝えました。あんなに先輩にトイレでしめられていたのに、それでも仲良くなった友人はすごいなと思ったものです。

しかし翌日、友人は彼女とのことがよほど嬉しかったのか、うっかり医局でその話をしてしまい、あっという間に噂になって先輩の耳に届きました。結果、先輩の怒りおさまらず、それはそれは面倒くさくなりました。でもそれでも、幸せそうな表情をしている友人の顔は覚えています。よほど彼女との相性が良かったのかもしれません。

その後、私は当時おつきあいしていた彼女と結婚し、友人も美人の彼女と結婚をし、お互いに子どもをもうけました。

■その後の彼ら


我が家に2人目の赤ちゃんが生まれた時のこと。そのお祝いに、友人夫婦と二人の間にできた娘さんが私の家にやって来ました。友人の奥さんは元保育士なので、医療関係のことは全く知りません。ですが、医師は医師同士か医療従事者と結婚をする人が多いため、話しが合う人がいないと悩んでいるようでした。そんな時、私の妻も医療従事者ではないということを知り、友人の奥さんは私の妻と話をしてみたいと思ったそうです。

私も彼も医師家系に生まれて、私は父が産婦人科開業医、彼は両親ともに医師、そしてお互いに親族も何らかの医療従事者ばかり。だからか、奥さんたちは「子どもを医師に育てて」と言う無言のプレッシャーを、親族からかなり感じているようでした。そんな会話を私は彼と子どもたちの相手をしながら酒を飲みつつ、奥さま方もソファでそんな話をしていたようです。

やがて酔い潰れた彼はソファで何か奥さんと呟きながら、奥さんに頭をなでられながら寝入り始めていました。ふだん病院では見せない奥さんに甘える様子、そして人前で寝るような姿は、病院の彼から想像つきません。奥さんもうつらうつら。思わず写真におさめてしまいました。

娘さんはと言えば、うちの息子を抱っこしたいとせがんできていました。さっきまではお父さんお母さんに赤ちゃん落としたら大変だからダメ!と言われていましたが、せっかくだからと抱っこしてもらうことにしました。5歳になる娘さん。でも5歳ともなれば、もう女の子ですし、ときにもう女性になるときもあります。

「赤ちゃん可愛いね。私も赤ちゃん産むのかなぁ」と言うので、「意外とすぐだよー」と私が答えると、夫婦は「まだ早い!」とソファから飛び起きたのでした。
仲いいね。これぞいい夫婦と思いました。きっとお互いに話し合い、同じ方向性でいるのでしょう。

後日、医局で現像した写真を彼に渡すと、よほど気に入ったのでしょう。医局のデスクに飾ったのでした。
「奥さんめちゃくちゃ美人ですねー」
「奥さんに甘えちゃっているじゃないですかー」

医局員がみんな集まって目新しい写真に食いついていました。恥ずかしそうに照れている彼を見て、つい調子に乗って彼のなれそめを知っている私は得意げにその話をしていると、例の先輩は一言呟いて医局を出ていきました。
「なんなんだよ。あいつ!」
先輩はその後、我々医師の話をくだらない話をしっかりと聞いてくれる優しい医局秘書さんと職場結婚しました。しかし、実は結婚願望が強かった先輩に春が来るまでは、ずっと目の敵というぐらいに睨みつけられる日々を過ごしていたと、後から友人に聞きました。
先輩、決してやさしい奥さんと別れちゃダメですよ。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?