男性医師でも女性医師とサシ飲みが許されていた時代
■先輩と後輩のサシ飲みが普通だった時代
時代が変わったから仕方がないでしょうが、私は何回も先輩方から食事や酒の席に誘っていただきました。今では女性医師も増えましたが、まだまだ2割程度。男性医師が多い業界ですが、私の小児科医局となりますと、女性医師が多い産婦人科や皮膚科には敵わないですが、男性医師と女性医師の割合はほぼ1対1です。そのため、私には男性医師の先輩も、女性医師の先輩も同じぐらいの割合でいます。そしてどちらの性別であっても、サシ飲みにも連れて行っていただき、愚痴を聞かされたり、愚痴を聞いたりしていたものでした。
小児科医局だけであれば人数は多くいますが、私が専門とする小児神経学や児童精神科学となると、そんなに人数はおらず、こじんまりとした集まりになります。私は先輩の経験談を聞くのが好きでしたが、経験談を語るのは自慢話につながりそうなので、私は人に話すのはあまり好きではありません。
とはいえ、何十年も小児科医として働いていた先生の話を、腹を割って話していただけるのは、とてもありがたいことです。私の大切な思い出の一つとなっています。
■今の時代のコンプライアンスと先輩の叱咤激励
ただこの男女というくくりは、世間体を考えると、それっていいのかなと思ってしまうところがあります。私は既婚者ですが、そんな私と未婚の女性が2人きりで食事に行くのはいかがなものか?と感じるからです。というのも勤務先のコンプライアンスの問題や、若い先生の大切な時間を削るのはプライベートやプライバシーを守るためにもいかがなものか?という風潮になってきたからというのもあります。
それでも私の場合は、いまだに女性医師の先輩に呼び出されても、ホイホイ出かけて行きます。先輩に誘ってもらえるというのは、相手が男性でも女性でも、やっぱり嬉しいことですから。そんな女性医師の先輩に、10年ほど前にこんなことを言われました。
「今の若い先生と飲みニケーションとっている?」
「いやいや、今は時代が…」
「なんなの! あんたは後輩に慕われたくないの?」
「いえ、そりゃあ慕われたいですけど……」
「私はねぇ、後輩に慕われたいわけよ。あんた、けちけちお金溜め込んでんじゃないわよ!」
と店内に響きわたる大声で叫ばれたのでした。
おーこわ。
そんな風に先輩に叱咤激励をされたので、私は後輩に声をかけました。急に私から誘って変に思わないかな、と気を揉んだのですが、後輩たちは特に何も気にすることなく誘いに乗ってくれました。
5人で焼肉へ、およそ10万円。女性3人男性2人でした。そこそこ飲んで食べたので、私も満足です。次の日、医局で「先生、ごちそうになりました」「楽しかったです」と言われたときは、やっぱり嬉しいものです。
■どんな思い出も、時間がたつと大事な力になる
でも、この話には続きがあります。
後輩たちは、なぜか私と女性医師の先輩のサシ飲みのことを知っていて、
「ただ先輩、あの女性医師の先輩と飲んだ時に、酔いつぶれたそうですね。道路に座り込んで、雪が空から降ってくれるのを寝転んでみていたら、このまま天に昇る感覚ですねと言っていたから、「ヤバい」と思った女性医師に背負われて帰ったそうじゃないですか」
なんて話をされたときには、顔を真っ赤にさせられました。ですが、思い出だけでもずっとつながっているのは、それぞれの支えになると思います。10万円を後輩のために使ったなぁと思えば、ふだんはケチケチしているのでスカッともします。
私としては同じ思いを持つ、「子どものための医師」であっても気が合わない医師もいます。でも話し合ったら、気が合わないと感じていたことも解消されると思うのです。女性だから男性だからと2人きりで飲むような、そんな機会を潰すのはもったいない気もします。
もやもや。