見出し画像

【医療コラム】仕事でミスを連発・・・これって発達障害?

■仕事でミスばかりする人は発達障害の可能性があるのか。


 仕事でミスを重ねる人が発達障害の可能性があるとは一概には言えません。確かに発達障害は注意力や集中力の低下を招いたり、コミュニケーション能力や社会的スキルが乏しくなる傾向がありますがその程度は様々です。また一言に発達障害と言っても様々な種類があるのです。
 また、ミスばかりする原因としてはストレス、過労、学習の機会不足など様々な要因が関連しており、それらの要素がないかを精査する必要があります。仕事ができないからと言ってすぐ発達障害と考えるのは少し危険な考え方と言えます。まずはミスをしてしまう人の周りの環境や労働条件、学習機会の有無を確認しましょう。
 ただ自分の発達障害に気づかず、ミスを繰り返す理由がわからず苦しんでいるような人にとっては発達障害の診断をきっちりとつけて、その発達障害の特性に合わせて対策をすることで、発達障害による生きにくさを和らげ社会生活を営むことができるようになる場合があります。発達障害の可能性があると考えたら一人で悩むのではなくぜひ専門家に相談してください。

■ADHDとは。ケアレスミスが多いの?


ADHD(注意欠如・多動性障害は発達障害の一つです。多動性、衝動性、不注意の3つが中核的な症状として分類されています。ドパミンやノルアドレナリンなどの脳内伝達物質の不足などによっておこるとされています。
具体的な特徴としては
• 注意力を保てる時間が短く、すぐに気が散ってしまう。
• 一つのことに集中し続けられない
• ケアレスミスが多い
• 指示されたことを忘れてしまう
• 物を無くしたり忘れ物することが多い
• 落ち着きがなくじっとしていられない
といったものがあります。
一つのことに集中をし続けることが難しいという特性からケアレスミスが多くなります。ただし一言にADHDと言ってもその症状は個人個人により異なり、程度も様々です。症状の程度や周りの環境、週の人の理解度によっては特に問題なく社会生活を営むことのできる人もいます。

■参考文献
村上佳津美.注意欠如・多動症(ADHD)特性の理解.Jpn J Psychosom Med 2017;57:27-38.

■ADHDの診断基準


DSM-5の診断基準には9つの不注意症候と、9つの多動性・衝動性症状が提示されています。
不注意症状:
• 細部に注意を払わない,または学業課題やその他の活動を行う際にケアレスミスをする
• 学校での課題または遊びの最中に注意を維持することが困難である
• 直接話しかけられても聴いていないように見える
• 指示に従わず,課題を最後までやり遂げない
• 課題や活動を順序立てることが困難である
• 持続的な精神的努力の維持を要する課題に取り組むことを避ける,嫌う,または嫌々行う
• しばしば学校の課題または活動に必要な物を失くす
• 容易に注意をそらされる
• 日常生活でもの忘れが多い
多動性・衝動性症状:
• 手足をそわそわと動かしたり,身をよじったりすることが多い
• 教室内またはその他の場所で席を離れることが多い
• 不適切な状況で走り回ったり高い所に登ったりすることがよくある
• 静かに遊ぶことが困難である
• じっとしていることができず,エンジンで動かされているような行動を示すことが多い
• 過度のおしゃべりが多い
• 質問が終わる前に衝動的に答えを口走ることが多い
• 順番を待てないことが多い
• 他者の行為を遮ったり,邪魔をしたりすることが多い
これらの症状のうち不注意症状が6つ以上あれば不注意優勢型のADHD、多動性・衝動性症状が6つ以上あれば多動性・衝動性優勢型と判断します。
どちらも6つ以上ある場合には混合型のADHDとなります。

■こんな場合はADHDではないかも?


先述した症状があったとしても必ずADHDというわけではありません。ADHDに見える人でもADHDでないと判断される場合について見てみましょう。
DSM-5の診断基準では症状が以下の条件を満たす場合にADHDと診断します
• 6ヶ月以上認められる
• 子どもの場合その年頃の発達水準から予想されるよりより著しい症状がある
• 少なくとも2つ以上の状況で見られる(学校と家、など)
• 12歳前にはいくつかの症状が見られる
• 家庭や学校、職場での機能を妨げている
短期間しか症状が出ないような場合は周りの環境や体調による一時的な集中力の低下などが考えれます。また職場では注意力が散漫になるが家ではそのようなことがない、という場合単に仕事が手についていない状況と考えられます。
また大人になってから急にADHDになるということはあまり考えにくく、社会人になって急に症状が出たという場合にはADHDではなく、単に仕事が合っていない、環境によってパフォーマンスが低下している、他の疾患や体調不良が原因の集中力低下などを考える必要があります。
また集中力が低下するのはADHDだけではありません。うつ病や不眠症などの精神的な疾患でも集中力の低下は怒ります。身体的な疾患があっても集中力は低下します。ADHDは自己判断で簡単に診断できるものではなく症状の出現状況や生活の状況などを医師が詳細に聴取して総合的に判断をするものなのです。自分がADHDかもしれないと思っている人はぜひ医師に相談してください。

■参考文献
DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引き
MSDマニュアルプロフェッショナル版https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/19-小児科/学習障害および発達障害/注意欠如・多動症-add-adhd?ruleredirectid=465#診断_v1104578_ja

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?