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メールではなく電話でお詫びのご連絡を入れよう──東日本大震災のあの日、クラシコで起こったこと

緊急時にどのような対応をする会社なのか。

それをお伝えするため、今回は私たちにとっても忘れることができない、2011年、東日本大震災のできごとをお話します。

当時クラシコは、縫製工場のほとんどを東北地方へ預けていたこともあり、非常に難しい意思決定が求められました。

あの日、何を考え、どう動いていったのか。チーフデザイナーの大豆生田(おおまめうだ)に話を伺います。

受注していた7割の白衣が被害に

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──さっそくですが、東日本大震災が起こったあの日、クラシコでは何が起きて、どのような問題が発生したのでしょうか?

2011年3月11日。あの日、東京では震度5弱の地震が発生。社員全員を避難させ、夕方には全員が帰宅できるような措置を取りました。

クラシコの東京オフィスの被害は少なく、それゆえ、大きな事態が東北地方で起こっていたことを把握するのに時間がかかりました。

状況がわかりはじめたのは夕方以降です。福島県の南相馬市が壊滅的な被害に遭っていることをニュースで知りました。クラシコで縫製を依頼している工場が被災したことも翌日知ることになります。

──被害状況はどれほどのものでしたか?

その時点までに受注していた800着ほどの白衣がすべてダメになってしまったと知らせを受けました。受注分のおよそ7割を占める量です。

現在は医療ウエアのひとつである「スクラブ」の売上も多いですが、当時は医師向けの白衣が売上のほとんどを占めていたので大打撃です。

縫製工賃については工場側で負担してくださいましたが、生地などの材料費はクラシコの負担です。特に厳しかったのは、翌月以降も工場再開の見通しが立たなかったことでした。

お客さまから「納期を待つよ」の回答

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──東北工場の被害報告を受け、クラシコの社内ではどのような会話がされたのでしょうか?

いま客観的に振り返ると、受注済みの白衣すべてが「注文キャンセル」になっていたら、クラシコは終わっていたかもしれません。

ですが不思議と「全部返金だったらまずいね…」という会話は社内で一切なかったと記憶しています。それよりも、お客さまにご迷惑をおかけしないために何ができるかという最善案を考えました。

──具体的にどのようなアクションをされたのでしょうか?

お客さまからはすでにご注文分の代金をいただいており、1ヶ月~1ヶ月半を待ってもらっている状況でした。

工場再開のメドも立たない状況でしたので、次の生産先を決める前にまずはありのままの状況をお客さまに話そうという決断に至り、社員全員で電話をかけることにしました。

メールではなく電話を選択したのは、少しでも誠実にお伝えするためです。

クラシコが用意した回答は「待つ or 返金」の2択。生産先もまだ決まっていない状況にもかかわらず、お客さまのほぼ100%が「納期を待つよ」と返事をしてくださったことは今でも忘れられません。

クラシコはお客さまに支えられているなと、改めて実感した瞬間でした。

新たな縫製工場との出会いも誕生

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──すぐに次の縫製工場は見つかったのでしょうか?

それがかなり厳しいものでした。工場リストを作り、かたっぱしから電話をかけたのですが、再生産先はなかなか決まりません。

というのも、ほかのアパレルブランドも似たような状況だったので、どこの縫製工場もパンクしている状況でした。

しかも仮に1度は縫ってもらえたとしても、その次も縫ってくれる保証がないなかでの交渉でした。

──当時は物流なども滞っていたので、問題も山積みだったと思います。

最終的には自分たちで新たに開拓した工場のほか、知人とのつながりから工場を紹介してもらうかたちで苦境を乗り越えることができました。懐かしいエピソードとしては、現在執行役員を務めるMDの松永からの紹介もありました。

まだ入社前にもかかわらず、松永が親しくしている工場を紹介してくれたんです。結果、それがキッカケで入社してもらうことになり、今では執行役員です。

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写真左/MD松永、写真右/チーフデザイナー大豆生田

──大変なだけではない、温かみのあるエピソードですね!

ほかにも良いできごとはありました。秋田にあるとてもステキな縫製工場との出会いがあったんです。非常に高いクオリティで生産をされていて、クラシコの理念にも大きく共感してくださっています。

これらの経験から、常に新しい工場を探す習慣ができ、定期的にサンプルや見本を新しいところにお願いするようにもなりました。

現在はリスクも考えて、売上の伸びに合わせて海外の工場なども増やすことでバランスを取っています。

また、東日本大震災から2年後には、南相馬市の被災した工場が2件、再度生産をお願いできるまでに回復。こちらからお声掛けすると「またやりましょう!」と快く引き受けてくださり、再び一緒にモノづくりができるようになりました。こちらも感慨深い、暖かな気持ちになった出来事でした。

緊急時だからこそ、顧客の視点で想像する

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──改めて最後に、問題が起こった際のクラシコの考え方について教えてください。

クラシコの掲げるバリューのひとつに「顧客の視点で想像しよう」があります。問題が起きたときほど、その精神を大切にしています。

相手の立場になり、どう説明してくれたら納得できるのか。もし自分がお客だったとしたら納得いくのか。

誠実で、誠意のある対応を徹底します。

クラシコは創業当時から、販売代理店などを通すことなく、直接お客さまとつながってきました。それもECサイトが中心。

顔を合わせることなく、メールでのやりとりだけで完結するため信頼関係の構築が特に重要です。そういった土台が、あの東日本大震災の問題が起きたときに活かされたのかなと思います。

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