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酒粕と柚子胡椒

もち麦、キヌア三種、レンズ豆二種、黒米、そしてゆめにしき(イタリア産新コシヒカリ)の多穀ご飯を炊くのが大学に入ってから日常の一環となっていて。特にもち麦とキヌアのモチモチとプチプチが口の中でハーモニーを奏でるのです。

ファンデーションコースの年(大学に入る前の準備コース)、初めてロンドンの学生寮へ引っ越し、食材を買い揃えようと近所のミニスーパーへ。KIKKOMANの醤油や日清のカップヌードルがあり、「もしや日本米もあるんじゃないか」と期待し、バスマティやインディカ米など、長粒米が並ぶ中、唯一見た目が日本米と似たパエリア用の白米を購入。

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Sainsbury's Spanish Paella Rice 500g 

インド米やタイ米は和食に適してないだけで、ご当地グルメを美味しくいただく際に長粒米を食べるのは常識なので、その点では何の問題もないのです。けれど私が自炊する時は水分のある、粘り気の強い日本米に合うものを作ることが多いため、主食である米は何とか理想に近いものを探し続けた。

炊きたてのパエリア米の見た目はあまり日本米と変わりがなく、艶があり、そこまでパサつきが目立たなかったので、嬉しくなっておにぎりを作って学校へ持参。だがそこで私はお米ランキング一位のショックを受ける。おにぎりのラップを開けた瞬間、団結力のない白い粒の土砂崩れが手の中で起こったのです。口は閉じたままであるといいな。五秒間の沈黙と硬直、手のひらに乗ったラップと、おにぎりの残骸と、机や席に散りばめられた抜け殻に呆気にとられる。その日からしばらく麺とパンが主食となりました。

流石にご飯が恋しくなったある日、私は日本から輸入された食材を主に扱うお店へ向かった。包装に漢字とひらがながあるだけで魅力的に見えて、その中でも昆布を見たときは勝手に口の中でだしのうま味が滲み出ていた。

ウマミはなに?学生寮で日本大好きな方と共用キッチンにいたときに聞かれて、すぐさま英語で説明できなかった悔しさ。「和食でよく昆布や鰹節を煮だして、味に深みを出すことがあるんだけど、そのだし汁の味が所謂うま味だよ」と、ググり、だし汁で蒸し野菜を作って分けたら感動してました。彼曰く、私の炊くご飯は違うらしいです。ありがとう。全てお米のおかげです。

あなた視野狭いねって言われてもいいことが一つ。和食は世界一美味しいと確信しています。ここへ来てから実感したこと。一周まわってアジアン料理を推します。スパイスやハーブを上手に使うパキスタン料理やベトナム料理、ロンドンへ来てから一層好きになったな。イギリス料理といえば、「フ」から始まるあの料理、そして私も一時ハマったサンデーローストなど、見た目は黄色か茶色なものばかりで、脂っこい印象。学食のもち麦とブロッコリーサラダは大好物でした。ビーガンやベジテリアンの選択肢が多いのは、進んでるなと思ったけど、近所のスーパーで買う野菜や果物の味が水っぽくて、薄くて。これだから頑張って調味料や調理法で誤魔化してるのかなと思ったり。本来の食材の味を活かす料理を食べて育った者として、イギリスのお料理は少し重すぎました。

昆布のだし汁に生姜を入れ、冬仕様にし、食べやすい大きさに切った野菜を投下。塩を一振り、野菜が柔らかくなったら、一番最初に書いたハーモニーを奏でる多穀ご飯をフライパンに投入。そう、お鍋ではなくフライパンです。浅いほうが無駄な水が蒸発しやすいのと食材の状態が確認しやすいから。ご飯がだしと野菜のうま味を吸収する頃には弱火にし、酒粕と味噌を溶かしたものを最後にかけて、少しグツグツさせたら完成。お好みで柚子胡椒を少々添えて。冬の雑炊は幸せレベルこたつだよ。ごま油垂らしても美味しいよ。

という、大雑把すぎるレシピでした、で終わろうかと思ったけど、やっぱり和食が恋しいので少し味わいたい食材をここに並べさせてください。茗荷、山椒、紫蘇、柚子、蓬、蟹、鰹、春菊、高菜、三つ葉、韮、桜、梅、柳葉魚、鮎、胡麻豆腐、湯葉、山葵。食材本来の香りと味を生かした料理ならどんな調理法でも可!今年達成したいことリスト100に入れよう。

82.茗荷、山椒、紫蘇、柚子、蓬、蟹、鰹、春菊、高菜、三つ葉、韮、桜、梅、柳葉魚、鮎、胡麻豆腐、湯葉、山葵を使った料理を味わう

残された一週間、残された食材を最善の状態でいただこうと思う。まだ実感が湧かないな。本棚もクローゼットも空っぽになったけど、冷蔵庫にまだ酒粕と柚子胡椒残ってるもん。





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