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いちじくの味

今、買ったドライいちじくを食べ終えた。
どんよりした空気の中、いちじくの味だけが懐かしい場所に私を連れていってくれる。
小学生の時に道端に咲いてる花の蕾の蜜を吸ったあの頃のような。
20歳の時、恋人と夜の上野公園を歩いたあの春の空気のような。
1年後、初恋が終わろうとしたとき、引き留めたかったあなたの後ろ姿を見送った、その頃、まだ私には純情な甘酸っぱさが何なのかわかっていた。
それを表現することもろくにできないのにただ友達に長電話してその切なさをぶつけることしかできなかった。
あの日あの時、あなたは振り返らなかった、と思う。なぜなら私はあなたが例えば振り返る前に泣いてしまいそうで、上野駅の公園入り口の道路を懸命にただ淡々と歩いていくしかなかったからだ。
あなたは元気にしていますか?
そうだといいなぁと思いながら
私はいちじくの味のする口の感触を味わって
前を向きました。

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