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本の感想まとめ。カバー写真は所属サークルHYGGEの合同誌。
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2020年8月の記事一覧

神さまを待っている / 畑野智美

神さまを待っている / 畑野智美

希望のある終わりを迎えた主人公を、もう私は羨ましいとは思わない。それは、私の成長であり、物語を真正面から受け止める若さを失ったということかもしれない。小説の始終を「これは創作だから」と割り切り自分への負荷を軽減する一方で、物語の結末が「一人でも多くの人の希望になりますように」と一読者の立場として願っている。

これは、貧困女子の再生の物語ではなく、人間関係への不信からの再生の物語だ。

主人公の愛

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おいしいコーヒーの入れ方 Second season  Ⅸ ありふれた祈り 村山由佳

おいしいコーヒーの入れ方 Second season  Ⅸ ありふれた祈り 村山由佳

待ち焦がれた最新刊が、最終巻で、四半世紀の恋が、ここに完結した。

私がおいコーに出会ったのは、高校生の時。図書室の司書教諭から、

「ほろほろの砂糖菓子のような」

といって勧められたのがきっかけだった。

寝ても覚めても恋愛ごとに飢えている JK には絶大なパワーワードだった。この推薦言葉は、その後、今日に至るまで、いや、今後もおいコーの表紙を見るたびに、私の「おいコーとは」を表す一言として刻

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謎の毒親 姫野カオルコ

謎の毒親 姫野カオルコ

意識しているわけではないけれど、多読していると似通った雰囲気の作品を手に取っていることが多い。一定の感情階層に浸ることで、多読が原因で起こる混乱を無意識に避けているのかもしれない。

先日記事にした「隠された悲鳴」に続き、これも、ノンフィクションのようなフィクションだ。ノンフィクションに基づいたフィクションと言った方がより正しいのだろうか。姫野カオルコさんの実体験を基に、姫野カオルコさん自身が小説

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隠された悲鳴 ユニティ・ダウ

隠された悲鳴 ユニティ・ダウ

『事実は小説より奇なり』
そして、『人間が想像できることはたいてい現実化できる』

この二つの言葉は、これまでの私の本読み人生を通し、間違いないだろうと思っていることだ。

小説というものは、そのほとんどがフィクション、創作であって、現実にあったことではなく、平たく言えば作者の頭の中で生まれ、練られ、作り物として世に放たれたものである。

殺人鬼が暗躍するサスペンスも、夜眠れなくなるホラーも、星空

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bechoriのカラフルハンドレタリング シンプルで美しい手書き文字レッスン

bechoriのカラフルハンドレタリング シンプルで美しい手書き文字レッスン

大阪か、京都で、レタリング用のモノライン(Bスタイルと呼ばれる丸いラインの書ける付けペン先)を購入できる場所はないだろうか。

御存じの方、コメントでお知らせいただけると幸いです。



文房具が好きで好きで、文具の仕事をしていた私の好みど真ん中の一冊。

レタリング技術の指南書としてもとても分かりやすい。
フルカラーで、サンプル掲載されているレタリングデザインもとても美しい。
説明文は簡潔で、

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