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短歌

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#今日の短歌

三月自選短歌「春はここです」

三月自選短歌「春はここです」

くちびるに紅 まぶたには青
爪に花を咲かせて春はここです

洋服を脱ぎ捨てるように名言を
脱ぎ捨てていく着飾っていく

ニセモノは大抵キラキラまぶしくて
君の狡さも愛してくれる

手放したから手に入れる手のひらに
おさまるものは限られている

結末を選んだ順に春がくる。
別々に咲く花なのでしょう

振り切って駆け抜けて春とめないで、
もっと遠くの違う私へ

こんなはずじゃなかったはずのその先に

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雪の短歌 「警報級の光の粒だ」

雪の短歌 「警報級の光の粒だ」

まばたきの瞬間まつ毛の先っぽに
触れてたような光の結露

この身体でお拭きなさいとワイパーの
隙間に積もる雪のハンカチ

雪の降らない島に生まれた僕が
空を仰げば触れる光

あなたにも見せてあげたい白だけど
街のすべてを染めて隠した

大都会、白く染め行く立春の
警報級の光の粒だ

短歌連首 「マッチング・トーキョー」

短歌連首 「マッチング・トーキョー」

オレンジの光に誘われ走り出す
トーキョー・恋セヨ・電波塔ナリ

シモキタが知らないうちに整備され
吾の知らない街に変わった

ビルの間に東京タワーは身を隠し
僕らのキスを見ないふりした

書を捨てよ?勿体無いよメルカリで
売れば街まで行く金になる

マッチして尻尾を振ったら腰も振る
東京アニマルプラネットなう

たぶん風吹くとき僕らそこにいて
気付いたくせに気づかないふり

街灯が照らす無機質モノ

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連作短歌「92年夏。六歳」

連作短歌「92年夏。六歳」

コマネチで泣くほど笑った父がいた
蝉も泣いてた初夏の病棟

父さんが少しのあいだ留守にする
家はまかせて長男だもん

病棟の裏手の森にキジムナー
いるらしいんだ僕とよく似た

クワガタを集めるために蜂蜜を
差し入れみたいに抱えた七月

大声で笑って叫んで怒ってる
廊下のおじさんたちが朝から

ジャッキーチェンみたいに木登り
落っこちて心配される病院の庭

ママとパパどっちが好きと言われても
ママが

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