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転職2回⇒起業の27歳IT社長・広島【前編】「ゆとり世代」とバカにされたくない

 仕事で、日々の生活で、大切にしている「myルール」。初回は、広島市中区のウェブマーケティング会社「TOMORROW」社長、津川大輔さん(27)に聞きました。(聞き手・栾暁雨、写真・高橋洋史)

津川さんってこんな人
広島市生まれ。舟入高、広島修道大を経て証券会社に入社。半年で営業成績トップになり退社。オーストラリアで1年間のワーキングホリデーを過ごす。帰国後、広告会社でテレビCMの制作や営業に携わり、2020年9月に起業。

津川大輔マイルール

津川さん、起業して1周年なんですね。毎日ほぼ同じ服を着ているそうですが、なぜですか?

 一言で言うと効率がいいから。極力「選択」する回数を減らすためです。僕のコーデは、白のインナーと黒のパンツ、黒の革靴。この時期だと白Tシャツ、冬場は白のニット。ジャケットだけ変えれば、着る物に悩む時間を省けます。

 人って無意識に日々の生活で常に何かを選んでいるんですよ。今日は何を食べるかや、休日にどこに行くか。でも実は、さえた頭で重要な決定を下せる回数は1日15回ほどと言われている。僕の会社はウェブのマーケティングやIT関連のコンサルも担うベンチャー企業。商品の魅力的な見せ方といったイメージ戦略や人事戦略を、顧客に提案する仕事です。

 1人で立ち上げたので、当然ビジネスの方向性は全て1人で決めなくちゃいけない。だから、仕事のための決断力を残しておきたいわけです。着る服をある程度「制服化」してしまえば、服を買う金銭的・時間的なコストも減らせる。何より毎朝服を選ぶという決断エネルギーの節約は大きなメリットです。

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 なるほど。いつもタートルネックとデニムの組み合わせだったスティーブ・ジョブズみたいですね。ところで、どうして起業するに至ったんでしょう?

 小さい頃から経営者になるのが夢でした。そのために修行のつもりで、まずサラリーマンになり、転職して経験を積んだんです。

 新卒で入社したのは、証券会社の広島支店です。お金に興味があったので。入社前から、営業で成績トップになって自信が付いたら会社を辞めると決めていたんですが、入社半年で達成して。ちょうど試用社員から正社員になるタイミングで、このまま正社員になっても「報われないな」という感覚もあり、退職しました。

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 年功序列の日本企業では、成績トップになっても何の対価もない。「頑張ったね」で終わりです。会社に尽くしても労働力を搾取されるだけと感じました。特に営業職は今月のノルマは達成できても、翌月にはまたゼロからスタートする仕事。精神的にキツくて、離職する若手も多かったし、上司もしんどそうでした。
 
 そんな仕事を見合わない給料で続けるのは時間の無駄だと思って。でもどの人に相談しても「石の上にも3年。3年は我慢しろ」と同じ答えが返ってきた。そのたびに「絶対辞めよう」という気持ちが逆に強まりました。

 思い切りましたね。今の20代って、サクッと辞められるんですか?

 いやいや、同年代を見ていると組織に不満は持っているけど、愚痴って終わるだけって人が多い。「会社行きたくない」「だるい。たいぎー」と言うけど、現状を打開する努力はしない。「自分にもっと合う仕事があるはず。何かは分からないけど…」なんて言う人に限って、行動に移さないし、会社を辞める勇気もない気がします。

 生産性のない話を聞くのが嫌なので、ネガティブな飲み会には行きません。愚痴る暇があるなら行動すればいいじゃんって思うから。本当にやる人はだまって行動に移すんで。キツいこと言うようだけど、他人のせいにばかりして甘ったれている若者が多いから「ゆとり世代」とバカにされるんじゃないかな。

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 その行動力がオーストラリアでのワーキングホリデーにつながるんですね。海外で見えたことはありますか?

 日本は「安くて貧しい国」になってるんだなあということです。親世代はバブルを享受していたけど、僕らは生まれてからずっと不景気。うすうす分かっていたけど、日本経済が低迷して若者が内向きになっている間に、海外に大差をつけられているんですよ。

 向こうでは、バイトの時給ですら21㌦(約2300円)なんですよ。しかも土日は倍になる。その分、物価も高くてランチなんて5千円くらいする。でも経済成長する上でそれは当たり前のことで。長いこと給料も物価も上がらない日本で、「牛丼が390円でラッキー」と喜んでいる場合じゃありません。

 仕事は地元の紹介サイトで探しました。ウナギの養殖や日本酒造りを手掛ける日本食の卸企業に採用されて、そこで日本食イベントの企画などをしました。誰もがめりはりがある働き方をしていて、生産性も高い。だらだら残業もなく、サラリーも高いので満足感はありましたね。

 僕、オーストラリアには仕事も決まっていない、知人もいない状態で、航空券と手持ちの10万円を手に渡航したんですよ。大学時代にバックパッカーで30カ国以上回ったので、「何とかなるか」くらいの行き当たりばったりで。行って本当によかった。「日本やばいなー。思考停止したまま組織にしがみつく方がリスクだなー」と、起業への情熱がますます高まりました。

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後編に続く