コミュニティは入り口が肝心!オンボーディングの8パターン
コミューンコミュニティラボがお届けするnoteマガジン。今回はオンボーディングのリサーチの途中経過をお届けします。コミュニティの面白さや可能性を感じながらお読みいただけたら嬉しいです。
オンボーディングとは?
オンボーディングという言葉は、乗り物に乗っていることを表す英語表現「on board」に由来しているそうです。それが今では、コミュニティに入ったばかりの新規メンバーが定着するプロセスのことも指すようになりました。
新規メンバーにコミュニティを楽しんでもらうためにも、コミュニティ運営者がコミュニティを盛り上げ成果を出すためにも、丁寧なオンボーディングは欠かせません。
もしオンボーディングに失敗すれば、コミュニティの価値を体感する前に新規メンバーが脱退する可能性が高い。さらに、新規メンバーが増えないことで、既存のメンバーが盛り上がりを感じにくくなり離脱する可能性も高まってしまいます。新規ユーザーだけでなく、既存ユーザーや運営者にとっても、オンボーディングは重要なプロセスなのです。
では、コミュニティでは実際にどんなオンボーディング施策が行われているのでしょうか。コミューン社が支援する多様なコミュニティの実例やコミューン社のコミュマネへのヒアリング、そしてコミューンコミュニティラボ所長を務めるわたしの経験や知見から8パターンに分類してみました。
オンボーディングの分類
オンボーディング施策は、運営者と新規メンバーがお互いの時間を確保して行う「同期型」と、時間の縛りがない「非同期型」に分類することができます。
また、運営者が新規メンバー一人ひとりと相対する「個別対応型」と、あらゆるメンバーに対して同じのアクションをとる「全体適用型」に分類することもできます。
同期型や個別対応型は金銭的もしくは時間的コストがかかる傾向にあるので、一般的には非同期型かつ全体適用型になりやすい。一方で、同期型はメッセージの伝達力が強く、個別対応型はロイヤリティ向上につながりやすい。そんな傾向もアタマに入れていただくとオンボーディング施策を検討しやすくなると思います。
以下に、オンボーディング施策の8パターンをご紹介します。ご自身の関わるコミュニティではどれが採用されているのか、チェックしながら読んでみてください!
①適切な量の情報を伝えよう
新規メンバーがいきなりたくさんの情報に触れると、その量と早さに「ついていけない」と感じて離脱してしまうことがあります。そのため、最初からすべての情報を伝えずに、徐々にキャッチアップできるようなプロセスが理想的です。
具体的には「とりあえずこのページだけ見ておけばOK」というように特定の情報の重要性を伝えておくか、もしくはコミュニティを運営するツール上で情報を制限して最低限の情報以外は見せないようにしておくのも手です。
メンバーは徐々にコミュニティに馴染んでいきます。情報提供にはステップを設けて1週間から1ヶ月かけて小出しにしていくといいでしょう。
逆に、コミュニティの情報がまったく届かないとそのまま離脱してしまいます。専用アプリがあればダウンロードしてもらったり、メールマガジンがあれば定期的にチェックするようにお願いしておくのが効果的です。
②自己紹介をしてもらおう
コミュニティに入会した新規メンバーには、まず自己紹介をしてもらいましょう。リアルでもオンラインでもどちらでもOK。これによって運営者は、新規メンバーがコミュニティに入った「目的」や「興味関心」を知ることができます。
自己紹介の内容は、運営者にとってはコミュニティの運営方針やコンテンツ企画・イベント企画の参考になります。また、既存メンバーにとっては新規メンバーの存在を知りコミュニティの盛り上がりを体感できたり、同じ想いや価値観を持つ仲間が増えたことで所属意識が高まります。
新規メンバーにとって、他のメンバーに自分のことを知ってもらえているという感覚が重要です。自己紹介によってコミュニティを「居場所」と感じやすくなり、その後のアクションの後押しになります。
自己紹介については以下のような声もあり、参考になりました。↓
確かに自己紹介はオンボーディングに含めて当然というイメージがありましたが、優先順位が高くないケースも確かにありそうです。この辺りもう少し研究の余地を感じます。
③コミュニティ関連グッズを送ろう
新規メンバーにコミュニティ関連グッズを送ることで、コミュニティへの所属意識を高めることができます。コミュニティに関連する商品もしくはコミュニティのロゴや名前の入ったノベルティを送ってみましょう。なかにはコミュニティに関する冊子やパンフレットが送られてくるケースもあります。
一定のコストがかかるので費用対効果の見極めが必要になる施策です。そのため、やらないという判断もアリですし、やるとしても抽選にして実施するのもいいでしょう。
グッズは所属意識を高めるだけでなく、届いたグッズの写真を使ったUGC(User Generated Content:ユーザーが生成するコンテンツ)がコミュニティ内やオープンなSNS等で発生し、コミュニティの熱量が波及するキッカケになることもあります。
④カルチャーやビジョンを伝えよう
コミュニティに入ってくる理由や背景はさまざまです。中には既存メンバーの知り合いに誘われて参加というケースもあるので、コミュニティへの理解があまりない状態で参加している新規メンバーもいます。
そういった新規メンバーにとっては、コミュニティでどういったアクションが推奨されているのか分かりません。何かアクションをしたときに既存メンバーや運営者からどんな反応があるのか分からないことが心理的なハードルとなってアクションを控えてしまいます。
そういった状況を避けるために、事前に言語化されたカルチャーやビジョンを新規メンバーに共有する必要があります。伝えるタイミングはコミュニティサイトにアクセスした際のポップアップや、1on1、イベントなどいくらでもあります。一度だけ伝えてもカルチャーやビジョンは記憶されないので、しつこいくらい何度も伝えるといいでしょう。
一方、ルールは必要な場面で最小限だけ伝えるのが適切でしょう。ルールはアクションに対する縛りでもあるので、繰り返し伝えると重苦しくなり新規メンバーのアクションを抑えこんでしまう可能性があるからです。
ルールについては以下のような声もあり、興味深いです。↓
カルチャーやビジョンに加えて、例えば「ぜひ投稿にはコメントを残してみましょう」のようなアクションを推奨するゆるめのルールも伝えていくとよさそうですね。
⑤マニュアルや質問窓口を用意しよう
コミュニティについて不明点があっても、新規メンバーはなかなか既存メンバーや運営者に直接は訊きにくいものです。そういった場面では、マニュアルやオフィシャルの窓口が存在することで安心して質問することができるようになります。
マニュアルで解決できることは多いので、必要に応じて検索できるように整備しておくと効果的です。こうしたマニュアルを利用した、新規メンバーによる自発的なオンボーディングを「セルフオンボーディング」と呼ぶこともあります。
しかし、マニュアルを読んでも分からないこともありますし、マニュアルで想定されていない事態もあり得ます(メンバー同士のトラブルなど)。いつでも質問できるオフィシャルな窓口があることは安心感にもつながりますし、新規メンバーがコミュニティの活用を諦める前に接点を持って手を打つこともできます。
⑥イベントやコンテンツを紹介しよう
新規メンバーにとって未知の場であるコミュニティでは、まず何をすべきか分かりません。そのため、自己紹介や登録情報を参考に興味を持ちそうなイベントへの参加やコンテンツへのリアクションを勧めてみましょう。これは人力でもアルゴリズムでも構いません。
また、その新規メンバーの目的や関心を反映させたコンテンツやイベントを企画するのも効果的でしょう。
いきなり大人数の場に参加して馴染めないことを懸念する新規メンバーもいるので、新規メンバーのために8人以下の少人数の座談会を開催して招待するケースもあります。その場で新規メンバー同士が知り合いになり定着しやすくなりますし、場の雰囲気もつかめるのでその後のアクションを起こしやすくなります。
⑦メンバーと1on1をしよう
1on1 はメンバーと運営者が気軽に話す時間です。30分〜60分が一般的です。
新規メンバーとの 1on1 は、自己紹介よりも深くその人のことを知ることができる良い機会です。1on1で運営者が新規メンバーと信頼関係を築いておけば、その後もアクティブに参加してもらいやすくなります。また、その場でコミュニティにまつわる不明点や不安を取り除くことも効果的です。
1on1をしていると、新規メンバーのやりたいことが見えてきます。そのやりたいこととコミュニティの重なりを見つけてコンテンツやイベントを生み出すことができれば、そのメンバーはただの参加者ではなく、一緒にコミュニティを作り上げていくパートナーと呼べるでしょう。
⑧メンバー同士をつなごう
新規メンバーと既存メンバーをつなぐことで、コミュニティを活用するハードルが下がります。ペアとなる既存ユーザーには「先輩」「バディ」「メンター」という名称でその役割が与えられるケースが見受けられますね。
こうしたペアリングはコミュニティ活用意向の強い新規メンバーには効果的ですが、そうでない新規メンバーには重荷に感じられて離脱につながることもあるので見極めが必要です。その場合は、新規メンバー同士をつなぐほうがいいでしょう。「同期」としての連帯感を感じられます。
そうしてコミュニティに知り合いが増えれば、知り合いが参加するイベントには参加しやすくなり、そのイベントでまた知り合いが増え、さらに参加しやすくなる、というループが回り出します。
運営者がひとりひとり意識してつないでもいいですし、仕組み化したり、イベントのなかにメンバーどうしをつなぐ仕掛けを仕込んでおくケースもあります。
さいごに
オンボーディングを8つに分類してお伝えしてみました。いかがでしたでしょうか?ご覧いただいた通り、オンボーディングのプロセスは地味です。やっていること一つひとつはシンプルですから。
しかし、今回ご紹介したオンボーディングアクションを組み合わせていくことで、新規メンバーがコミュニティを楽しみ、既存ユーザーが盛り上がりを感じ、コミュニティが成功に向かっていくのです。
地味なプロセスを着実に回し続けること、その積み重ねがコミュニティ運営の基盤となります。この記事を読んだ方はぜひ現在のオンボーディングを見直すキッカケにしていただけたらと思います!
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