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自分の中にあるものって何だろうって探し始めたあの日


「これじゃ、ダメだよ」
そんな言葉ばかり、繰り返された。

昨日から新年度。
新入社員が社会に飛び立った日。

もうずいぶん昔の、自分の入社式は緊張したことしか、もう覚えていない。

記憶にあるのは、そのあとの自分の失態。

原稿を間違えて印刷所に入れたこともある。
確認が夜中に来て、タクシーで会社に戻った。

「こんな失敗をしたやつは他にいない」
断じられて、しょげ返った。

数々の失敗と、厳しい上司の言葉と。
落ち込み、胃潰瘍にもなりかけた。
その「胃潰瘍のあと」は今もあって、人間ドックのたびにチェックが入る。

できないことばかりが目の前にあって、できるようになったことはできて当たり前のことばかり。

文字のまちがえ、指示のもれ、締め切りに間に合わない・・・。

当時は書いた原稿に自分で赤を入れたのだけど、それも抜けだらけで。
見てもらって返ってきた原稿は、赤の上に赤い線だらけで真っ赤だった。

自分はこんなにできないやつなんだ。

毎日その事実を突きつけられて。


そんな自分を思い出したのは、昨日。

毎年、4月1日の朝刊に、伊集院静さんの言葉が載る。
1月の成人の日にもある。
サントリーの広告だ。

私は、この言葉を読むのが好きで。

今年は、
「真剣にオモロイことをやれ。」というタイトルだった。

私の心に残ったのは

何をやるにしても、すべて初めてのことだ。
失敗だらけの日々になるに決まっている。
でも失敗は君だけのことではない。先輩たちも皆も
繰り返した。失敗と後悔はいつも仕事の隣りにある。
そうなんだったら、君は君のやり方をして欲しい。

失敗は皆してきた。

当たり前のようで、そうではない。
周りはみんな「初めからできていた」ように見えた。
そういう顔をしている(ように思えた)。

そうじゃない。

ずっと「失敗しない」ことだけに夢中になっていて、そんな自分がいやだった。
間違いをしない。
叱られない。

それが大事で、第一になったときもあって。


そうなんだったら、君は君のやり方をして欲しい。

いわれた通りだけではなく、自分で考えて。

少しできるようになったのは、3年目か、4年目か。


「自分の中にあるもので、書けばいいんだよ」

言葉をかけてくれたのは、上司ではなくてフリーのライターさんだった。
ベテランで、「アンカー」という原稿の仕上げをする方。

たまたま小さな記事を、急に私が書くことになって。
あわてながら、悩みながら、書いたものに目を通してもらった。

「うん」

読みながら、うなずいて、線を引く。

「こことここはいい。もっと詳しく書いて。これはいらないから」

そして、いった。
「自分の中にあるもので書けばいい」

「いらない」といわれたのは、背伸びした「知識」だった。
見透かされたようで恥ずかしくなったけれど。

実感を込めて、書くこと。
を知った。

「書き出しはいい。それと、たとえがわかりやすいね」
その言葉で、私の中にふんわりと笑顔が、生まれた。

当たり前のようでできなかったことを、手渡された。


私らしく。
私の中にあること。

その言葉は今も大事にしている。

noteを書くときも。
人に何かを伝えるときも。

あの時が、もしかしたら私が「社会人」になれた日だったかもしれない。

そういいながら、今も「自分の中にあるもの」を探し続けている。
探しながら、書いている。

一生続く、と思うけれど。

つかみかけた時は、笑顔になれる。
今だって。

新社会人、新成人、新入生・・・
たくさんの新しい方、おめでとうございます。

あばたらしさ、を見つけてください。

私もまた、新しい気持ちで歩いていきます。


※イラストはおくちはるさんからお借りしました。ありがとうございます。



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