フルーツパーラーと喫茶店のなつかしいホットケーキ
家では焼けない、ホットケーキもある。
写真は京都のスマート珈琲店。
京都を訪れると、ホテルよりもカフェでモーニングを食べるのが好き。
昔ながらの落ち着いた雰囲気は、カフェではなくて喫茶店。
そこで1日の道筋を考えたり、していた。
ホットケーキはしっとり、しっかり、ふんわり。全体がきれいなきつね色で、上に四角いバターが載っている。
口に入れるとバターの香りと、昔風にきちんと焼かれた香ばしさ。
何年後に行っても変わらない、そのたたずまい。店も、ホットケーキも。
ヘッダーの写真と下の写真は2年間も違う。でも、まったく変わらない。
ホットケーキが好きで、何軒か回った。
思い出すのは、今はなきフルーツパーラーのホットケーキ。
それは池波正太郎が愛した味。
神田にあった万惣フルーツパーラーのホットケーキだ。
万惣は創業は弘化3年(1846年)、落語『千両みかん』にも登場する老舗。
『千両みかん』は病気の若旦那のために夏にみかんを探す話で、みかんを万惣で購入している(江戸版)。
池波正太郎はエッセイ『むかしの味』で詳しく書いている。
映画を観てから父が私に 「何が食べたい」 と尋いた。
そこで「ホットケーキ」というや、父が「そうか。それなら、ちょうどいい」と、電車通りを向う側へわたると、そこに「万惣」があった。
「へえ。果物屋にホットケーキがあるの?」「あるどこのさわぎじゃない。万惣のホットケーキは天下一品だ」
〔万惣〕は、ホットケーキにせよ、フルーツにせよ、その仕入れのルートと、品物のえらび方において、他の追従をゆるさぬところがある。
ホットケーキなどでも、この製法を盗むために入店してきて、ついに、
「まねができない」
と、いうことになるらしい。
生クリームをかけたり、苺や、餡をつけたりするホットケーキなら、いくらでもまねができよう。
しかし、材料へかたむける店主の情熱だけは、まねしきれないのだろう。
万惣は、さほどに個性をもった店なのである。(「むかしの味」より)
神田の須田町という交差点に、、万惣ビルが建っていた。
私も何度か、ホットケーキをいただいた。
仕事がつらくって、頭が「うわ~~~」っていっぱいになっていた時。
たまたま出先がここのそばだったので、お昼どきに飛び込んだ。
「ごちそう」だった。おいしかった。ふわ~っと息を抜いた。
同僚と会社帰りに寄ったこともある。お酒というほどじゃなくて、おしゃべりを楽しみたいと思ったら・・・。
彼女の失恋話を聞いた。
「飲みたい気分じゃないの。もう終わっているから大丈夫」
ぱくつきながら笑っていた、が・・・。
中2階の席から、交差点が見下ろせた。
厚みがあって、しっかりと鉄板で焼かれた、奥行きのあるホットケーキ。
シロップは黒糖をベースにしたコクのある味。
常温に戻されて出されるバターはトロリと溶ける。
今人気のふわふわのパンケーキではなくて、味わうと粉の香りが広がった。ホットケーキとバターとシロップが口の中でひとつになって膨らむ。でも重くはなくて、するり、と食べられる。
万惣のビルは東日本大震災後、建築規制の変更によって建て替えが必要になった。
そして2012年に本店・支店ともに閉店してしまった・・・。
166年の歴史に幕を閉じて・・・。
だから手元に写真がない。
ただ万惣の味を継いだお店が都内にあるという。
写真はホームページからお借りしました。
そう、こんな感じ。
地味なようで、口に芳醇な香りが広がるホットケーキ。
万惣で20年以上修行された方が開店したとか。
食べに行きたいな。
ふわふわのパンケーキも好き。
でも時には、なつかしい、昔ながらのホットケーキを食べたくなる。
それは、ちょっと大人の味。
甘いのにどこかほろ苦いなつかしさのある味。
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