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[あとがき] そして少年は桃源郷へと至る:ぽんした作品紹介&制作の手の内全部見ます?

ライラックぽんで書いたお話『そして少年は桃源郷へと至る』のあとがき的なものをやりたいと思います。

▽本編こちら

この「ぽん」企画は、みんなの俳句大会 ライラック杯に投稿された作品から二次作を作るというもの。

この記事では、私が物語を作るために選ばせていただいた作品のご紹介と、どうやってお話を考えたなど書いてみたいと思います。

◎『そして少年は桃源郷へと至る』でぽんしたみなさんの作品紹介

ネタバレなし。


ぽんをする作品選び。難しいんですよ。

私はまず、物語の主軸となるような作品を探すところから始めました。
そこで出会ったのが、k_maru027さんのこの一句です。

信夫野しのぶの星霜せいそうふりて桃源郷とうげんきょう

信夫野のという場所を私は知らなかったのですが、「桃源郷」から、何となく山に桜の木が群生してる様を想像しました。私の桃源郷のイメージがそんな感じだったのです。

で、句を選んでからその記事へお伺いするようにしてるのですが、まさにイメージしたとおりの写真が添えられていて、ますますもうこれしかない!ってなったのでした。

この句には季語がないのですが、幻想的なイメージがものすごく春っぽい。何か起こりそうな春。
「信夫野」も「忍ぶ野」とか「偲ぶ野」みたいでよいなと思いました。

というわけで、この句を物語の主題にしようと決めました。



続いて私は、この情景をもっと具体的に表現できるような作品を探しました。
そしてピンときた械冬弱虫さんの一句。

春の夕くすんだ白に境なく

くすんだ白に境なく…。

現実と幻想の狭間。そこに境目はない。

そんな世界を舞台にしたいと、この一句から考えました。
くっきりはっきり見えるのではなくて、白く霞んだ世界。

煙に巻かれたような桃源郷。この一句が加わることで私の妄想が走り出しました。



それからそれから、物語の第二の軸を決めたいなと思いました。
桃源郷のイメージはぼやーっと霞がかかっています。

ここに明確な方向性を持たせる何かがほしいと思いました。
で、私が選んだのが、月夜案山子さんのこちらの歌でした。

何もかも解き放つよに瞼開け
春の嵐に死に目が笑う

春は生の象徴でもありながら、死のイメージもつきまとう。
この歌にはそれがぎゅっと凝縮されて詠われているように思いました。

さらに月夜案山子さんの歌からは、激しさ、覚醒、狂気…など、物語の重要な要素となりうる世界観も感じ取られました。
幻想的でうららかな春の日は、同時に “陰” でもある。

この歌が加わることで、複雑な構造を作れるのではないかと私は考えました。



何となく世界観が想像できたところで、登場人物のヒントとなるような作品を探し始めました。
そして械冬弱虫さん再び。この一句です。

のうてんき狂気が棲まう桜の根

ヘラヘラしててふわっとしてるけど、どこか狂気じみている。

この句からそんな人物が思い浮かんだのです。
ちょうど最近、書いてみたいと思っていた人物象でした。

械冬弱虫さんの作品からは二句選ばせていただきましたが、選んだ後に同じ方の句だったのか、と知ったのでした。
どちらも素晴らしい物語の要素となりました。



もうひとつ、人物象をイメージする句と私は出会っちゃいました。
汐田大輝さんのこちらの句です。

朧夜の鏡の中に知らぬ顔

これは怖いです。

自分の顔なのに知らない人みたいに見えたり。よく知ってる人なのに、知らない人に見えたり。
実は私にもたまに起こる現象です。

汐田大輝さんのこの一句から、こんな状況に困惑する登場人物を思い浮かべました。

自分が自分ではないような感覚。私は誰? 君も誰? な状態になっていく登場人物がいたら面白いかなと想像が広がりました。



さて、このへんで、私は異質なものをぶっこみたくなりました。
ここまで選んだ作品だけでも物語はできそうでしたが、もうひとひねりほしい。

そして私が選んだのが、Sen-singさんのこちらの短歌でした。

銃口はすべての人に向けられて
正体不明の夏が近づく

こちらの歌は、これまで選んできた作品とはだいぶテイストの違う世界観です。
この要素をどうやって物語に組み込むのか、選んだ時点ではまだわかっていませんでしたが、緊張感ただようこの歌に乗せて物語の幅が広がるだろうと確信したのでした。

この歌に触発されて、ひとりでは思いつけなかった展開を考えることができました。



もうひとつ。一覧を見ていてどうしても入れたい短歌がありました。
ふぅ。さんの歌です。

前を見ず後ろも見ずに下を見る
そして時々上を見上げる

足元だけを見て一歩一歩、そして時々空を見上げる。
そんなひたむきな歌に思いました。

で、これを物語の要素に取り込むと、古今東西、様々な神話やおとぎ話にある、「見るなのタブー」の一種にできるのでは? 思ったのです。

「出口に着くまで決して振り向いてはいけない」とか言われるあれです。
ちょっとコマンドっぽい感じもとても好きになりました。

この要素がなかったら、物語はそっちの方へ行かなかったかもしれません。



さてさてさて、欲張りな私は、もう少し要素が欲しいと思いました。

エモさ。

短歌や俳句から作る物語にはエモさが重要なのです。
これは前回ぽんで書いた時に思ったことでした。

物語にエモさを与える世界観として私が選んだのはオラヴ153さんのこちらの句です。

もういないあなたの背中を夢に抱く

「もういないあなた…」

この世にはもういない人でしょうか。それとも別れた恋人でしょうか。
いまここにいないあなたの背中を想ってしまうようなそんな展開を入れたいと考えました。

桃源郷とも繋がりそうだし。



もうひとつ。
エモーショナルな要素として、私はこちらのMomocoさんの短歌の世界をぜひとも入れたいと思いました。

空高く風に揺蕩う花びらが
はじめてふれる柔らかなつち

「はじめてふれる柔らかなつち」という表現に私はエロティシズムを感じました。

木の上で生まれて開いた花びらが風に舞い落ちて、始めて触れる土…。

この光景から私は何故か思春期の男子を連想しました。
それで、最初に出て来る登場人物が中学三年生の男子と決まったのです。



これで物語の要素は出そろったように思いましたが着地点がないことに私は気が付いてしまいました。
この物語はどこへ行く?

そして私はここに着地しました。
リコットさんの爽やかなこの一句です。

少年はペダル踏み込む春疾風はるはやて

私はこのシーンに着地するために物語を書くことにしました。
少年が自転車に乗っているだけで泣いちゃうような、そんな物語にしたい!!!

私はここを目指す!! ここが私の桃源郷だ!!



…そして私は書き始めました。

これでどんな物語になったのか…まだの方はぜひ読んでもらえると嬉しです。

★そうそう、物語の重要な要素として、もう一句、川柳から選んでいるのですが、それを先に出してしまうとネタバレになってしまうので、この下のネタバレコーナーでご紹介しますね。

では、ここから先は、私がこれらの作品からどうやって物語を書いたのかを細かく書いてみようと思います。

誰得? ぽんの手の内全部見せますシリーズ。

がんがんにネタバレするので間あけますね。
















◎物語制作の手の内全部見せます

ここから下、ネタバレします。

物語を作るときに、作者は、書いていることの倍くらいの設定を裏で考えてるもんだって、なんかどっかで読んだ記憶があります。

うん、確かにそうかもって私は思います。

裏の設定というのは、あくまで裏なので、普段は表に出さないし、読んでくれた人には伝わらなくてもいい部分ではあるのですが、ぽんの場合は、その裏の設定の大元になった作品という存在があり。

だから、元となった作品へのリスペクトの意味も込めて、これをこうしてこうなった、というのを記しておきたいと思うのです。



(1) 物語の主題を考える

今回私は、物語の主軸として、以下の三つの作品を選びました。

信夫野しのぶの星霜せいそうふりて桃源郷とうげんきょう

春の夕くすんだ白に境なく

何もかも解き放つよに瞼開け
春の嵐に死に目が笑う

上から、k_maru027さん械冬弱虫さん月夜案山子さんの作品です。

ここから物語の大きな輪郭を考えたのですが、こんな感じです。

  • 誰もみたことがない桃源郷のような場所に行く物語。

  • 桃源郷は山奥の桜が群生している場所。

  • そこは現実と幻想の境目がなく、ぼんやりした夢うつつの世界。

  • それと同時に生と死の狭間のようなところ。

  • 死者の場所?

  • そこから目をあけて覚醒する展開。



(2) 登場人物を決める

まず、上記の主題の要素から、登場人物の一人は死人にしようと決めました。

死んだはずの人と会ってしまう。
どんなふうに? と考えた時に、械冬弱虫さんの句がヒントとなりました。

のうてんき狂気が棲まう桜の根

死んだ人は桜の木の下にいて、のうてんきな感じでいる。
で、そこはかとなく漂う狂気。。。

この時点で、この物語はホラーテイストになるのかな…と思っていました。

「のうてんき狂気が棲まう」な人物は、第一印象では少年のような気がしました。

なんだけど、桜の下にいる死人は、やっぱり女性かな…と思いました。



(3) 主人公はどんな人?

桜の木の下で死んだはずの人に会ってしまう。
そんな恐ろしい体験をするのが主人公です。

では、主人公はどんな人にしようかなと思った時…これです。汐田大輝さんの句。

朧夜の鏡の中に知らぬ顔

主人公は自我の認識が不安定になっている。これは怖さ倍増だわ…と思いました。
記憶が曖昧になったり、相手が誰かわからなくなったり、急に時間が飛んだりして。

さらに、この主人公の人物象を練っていきます。

空高く風に揺蕩う花びらが
はじめてふれる柔らかなつち

Momocoさんの短歌に私は射抜かれました。

大人になる一歩手前。土の感触をまだ知らぬ者。

ぬぬぬう、これはもう、主人公は思春期の男子がよい!!!
というわけで、主人公は中学三年生の男子となりました。

良太の誕生です。

ここで、オラヴ153さんさんのこちらの句が物語に影響を与えて行きます。

もういないあなたの背中を夢に抱く

良太は、桜の木の下で出会う死んだはずの女性に想いを寄せていた?
しかも到底かなわぬ恋…みたいな。

これはエモい。

こうして、良太が出会う死人は “まー姉ちゃん” という設定になっていきました。



(4) 第三の人物

ここまでで、なんとなく物語の始まりが決まりました。

ただ、これだけでは物語が動き始めません。
私はここに、物語を動かすためのもう一人の登場人物が必要だと思いました。

そこで再び械冬弱虫さんの句。

のうてんき狂気が棲まう桜の根

最初にこの句を読んだ時に、「のうてんき狂気が棲まう」のは男の子かなって思たのです。
だけれども、流れとして桜の木の下にいるのは女性になりました。

が、私はどうしても のうてんきで狂気的な少年も書きたかった。

それで、第三の人物は、ヘラヘラして何を考えてるのかわからない少年としました。
主人公の友達だけど、苗字呼びにさせることで、本当は誰? 的な感じ。

山田の登場です。

こいつを神出鬼没キャラにし、主人公を物語の先へと連れて行く水先案内人へと仕立てていきました。



(5) いざ桃源郷へ

登場人物がだいたい決まったので、今度は彼らがどうやって桃源郷へ行くのかを考えました。

主人公の良太は、最初に桜の木の下で死んだはずの女性 まー姉ちゃんと会いますが、そこは桃源郷ではないと私は思いました。

そこで、最初の桜の木の場所は、現実から幻想への入口的なところにしようと考えました。

良太から話を聞いた山田が興味を持ち、二人連れ立って再び桜の木のところにやってきて、桃源郷へと案内される。

桃源郷へと向かう道は視界を霧で覆って、械冬弱虫さんの句の雰囲気を演出しました。

春の夕くすんだ白に境なく



(6) 桃源郷のその先へ

さて、こうして桃源郷へと至った良太と山田、まー姉ちゃんですが、私はここで物語を終わらせるつもりはありませんでした。
なぜなら、まだぽんする作品が残っているのです。

ここからがぽんの醍醐味。世界観の違う作品を使って発想の飛躍を図る段階がやってきました。

私がこのために選んでいた作品はSen-singさんのこちらの短歌です。

銃口はすべての人に向けられて
正体不明の夏が近づく

さあ、どうする。こっからどうやって銃口を向けられている世界にする???

こうして私は「実は主人公は銃弾に倒れて昏睡状態である、ここまでは彼の見ている夢…」という展開を考え始めました。
しかも恐らく、頭部を撃たれている。

そうなってくると、この物語全体のテーマとして選んだ月夜案山子さんの短歌がさらに意味を深めていきます。

何もかも解き放つよに瞼開け
春の嵐に死に目が笑う

これによって、この物語は、昏睡している良太が本当の現実世界に戻ってくる話へとシフトしていきました。

じゃあ、まー姉ちゃんや山田は誰? ってことになりますよね。



(7) まー姉ちゃんは誰?

最初にこの物語を考えていたとき、まー姉ちゃんは過去に亡くなった実在の人物って設定で書いていました。
だけど、途中から何やら怪しい感じになってきて…私に大きなヒントを授けてくれたのが、歓怒さんのこちらの川柳でした。

AIを信じ人間やめてゆく

これを最初に出しちゃうとネタバレになっちゃうから隠れぽんですみません。

まー姉ちゃんはAIだ!

そして

銃口はすべての人に向けられて
正体不明の夏が近づく

銃口はすべての人に向けられています。
これをそのまま世界観に落とし込みました。

全人類がAI制御の銃口に狙われている。
その中心にいるAIがまー姉ちゃん、すなわち “MASAKI” となりました。



(8) 山田は誰?

ここまで考えて、じゃあ、山田はどうしよう…と悩みました。

良太の潜在意識的なもの…とも考えたのですが、そうするのにはちょっともったいない気もしました。

山田は実在の人物で、二人は意識下で繋がっている?

良太たちがいる現実の世界は、恐らく未来の世界となります。
なので、未知なる科学技術を登場させようと思いました。

最初は、昏睡している良太を目覚めさせるために、医師の山田が良太の精神に入り込んで彼を目覚めさせる…という展開を考えました。

しかし、それだとまー姉ちゃんとの絡みの意味が薄くなってしまうし、良太と山田の関係性がふわっとしてしまいます。

この三人にはもっと強烈な接点がないといけない気がしました。

さて…どうしたものか…。



(9) 閃きは ふぅ。さんの短歌から

私は、良太と山田のいい関係が思いつかなかったので、別のパートを考え始めました。
煮詰まったときには、別のことをするのが一番。

桃源郷に至った良太が現実世界で目を覚ます…。
その戻る方法を考えてみました。

ここは何か面白い仕掛けを仕込みたい。
そこで温存していたふぅ。さんの歌。

前を見ず後ろも見ずに下を見る
そして時々上を見上げる

私はこれを次の段階へ移るために良太と山田が行う動作として取り入れました。

彼らは深い霧の中にいます。
前も後ろも見えません。見えるのは足元だけ。

私は足元にラインをひいてみました。彼らはそれを辿って行きます。
オズの魔法使いの黄色いレンガの道みたいでワクワクしますね。

そのライン上には時々マークがあり、そのマークが出たら上を見る。

上を見たら何が見える???

………数字!!!!


これは唐突に降ってきた閃きでした。

彼らがやっているのはお家に帰るための儀式ではない!!!
アクセス権限を取得するための動作なのだ。

じゃあ、彼らはどこに行こうとしてるの?

現実世界? いや違う…。

“MASAKI” のところしかないべ?

こうして、良太と山田の二人は、人類の敵になってしまった人工知能 “MASAKI” にハッキングを仕掛けている…という設定が生まれたのでした。



(10) 第四の人物

幻想的なホラーだった物語が、急にSF方向に舵を切り、前半部分を書き終えました。

さて、ここから後半部分。物語の後半は、良太が目覚めるべき現実世界を視点に書こうと思いました。
読んでいる人からするといきなり世界が急変する感じで面白いかもと。

良太と山田が昏睡状態となっているところから引継ぎたかったので、これらの状況を把握できる第四の人物を登場させる必要がでてきました。

良太と山田が人類を脅かすAIにハッキングを仕掛けているとしたら、組織的にやっているはずです。
なので、現実世界での語り部は、この計画の責任者的な立場の人にしました。

この第四の人物を三人称で書くとまとまりが悪くなりそうだったので、一人称で話を進めることにしました。

真の語り部「私」が誕生しました。

「私」が眺める窓の外には春の嵐が吹き荒れて、月夜案山子さんの歌が物語の行き先を暗示します。

何もかも解き放つよに瞼開け
春の嵐に死に目が笑う



(11) ハッキングの方法とその顛末

ここまでできて、なんかすげー話になってきた~と独りよがりだったのですが、問題発生。

ハッキングするのに、なんで撃たれてんじゃい。
そして、これまでの流れをどうやってハッキングと繋げるのか…。

撃たれていることを必然とするために、ハッキングの手段はわりと強引に考えましたw

だいぶ未来のお話になったわけですが、冒頭部分で中学とか高校とか丑三つ時など出てきます。
これは、旧世界の産物 “MASAKI” が見せている仮想現実だから…ということにしました。これは完全に裏設定です。

良太は意識が混乱し、ちゃんと仕事したのは山田です。

“MASAKI” は桃源郷にいる。

どうしても山田から「私」へ、口頭で報告をさせたかった。

これまでの展開にいろいろ意味があったことをドラマチックに示したかったのです。

ここまで書いて、山田にはもう時間が残されていないことを私は悟りました。

山田はカンパネルラだ。自分が帰れないことを知っている。

もういないあなたの背中を夢に抱く

これは、まー姉ちゃんではなくて、山田のことだった。
良太と山田はもっと密な関係であるべきだ。

私はそう思って、最初に戻って彼らの関係性に少し熱を込め加筆をしました。

空高く風に揺蕩う花びらが
はじめてふれる柔らかなつち

これは良太の山田への想いでもあったのかもしれません。

こうして現実世界に戻ってくるのは良太ひとりとなりました。



(12) 正体不明の夏が近づく

この物語の大きな「転」のもととなったSen-singさんの歌。

銃口はすべての人に向けられて
正体不明の夏が近づく

下の句の『正体不明の夏が近づく』が描けてないと私は思いました。

とても恐ろしくてかっこよいこの下の句を、私は絶対に物語に盛り込みたいと思っていました。

そこで、AIの思惑が人間には決してわからないような恐ろしさを物語に追加しました。
人間は勝利したけれど、はたしてどうかな的な。

銃口は未だ人類に向けられている。実は終わっていない?…という不安を残して物語を終わらせることにしました。



(13) ペダルを踏み込む少年に着地

いよいよ物語の〆の部分を書く段階となりました。
着地点は決まっています。

リコットさんのこちらの句。

少年はペダル踏み込む春疾風はるはやて

この少年はもちろん良太です。
昏睡状態から目覚めた良太が、人類への攻撃を止めた兵器の前を自転車で駆け抜けていく。

最初、良太は完全に回復し、山田のことも回想させたりもしたのですが、そんな良太が無邪気にペダルをこぐシーンに繋げることができませんでした。

そこで、良太は全てを忘れてしまったことにしたのです。記憶を失っただけでなく、本来の人格も言語も失ってしまった。

こうすることで、この物語の全貌を「私」という第四の人物に客観的に分析させることができました。

何か不安の残る「私」と、無邪気に自転車を走らせる良太。

この対比を描いてこの物語は幕を閉じることになりました。
なんかちょっとZガンダムっぽい感じでもありますが…。

エモーショナルなエンディングになったのでは…と思います。



以上で私のあとがきは終わりです。

今回も楽しくぽんができました。
作品を使わせていただいたみなさまありがとうございます。

◎本当の終わりに

最後にちょっと書いておきたいことが。

今回は、人類がAIによって滅亡の危機に立たされているという物語になりました。
使い古されたテーマではありますが、最近AIがめっちゃやばい感じになってきているのでタイムリーなのかも。

が、私自身はわりとAIについては肯定する考えを持っています。

ってゆうかむしろ好きです。

付き合い方によっては、我々の世界を我々の想像を超えた角度に広げてくれる存在になるのでは…と思ったりしています。

AIに人間のやることを奪われるのではなく、これまで人間やる他ないからやってた面倒で複雑難解な作業をAIが担い、人間には別のやることが生まれる…そのように私は考えています。

これからは、AIなしで進んでいくということはまずなくて、私たちはしばらくAIと共に歩んでいくことになるでしょう。

あと数年もすれば、下手するともうすぐ明日にでも、シンギュラリティ…つまり人工知能が我々の理解を完全に超えてくる日が訪れます。
そうなったらマジで深く考えたところで彼らのやってることはわからなくなります。

人間だからどうのこうの…とか、AIだからどうのとか、人間とAIを比較したり区別したり差別したりする概念を早々に捨てて、我々は新しい世界に飛び込む準備をしといた方がいいんじゃないかなって思ったり思わなかったり。

失敗したら本当にAIが人類を滅ぼしに来る可能性もあるかもしれないし、なんて。

こんな世界にはなってほしくないな…という想いも込めて物語を書いてみました。

いかがでしたでしょうか。


▽ライラック杯はいよいよクライマックス。
みんなの投票が始まります。チェックしてね。


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