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どうか幸せになることを恐れないでほしい

夜中だから普段あまり言わないことを話す。単なる独り言で申し訳ない。

5年前、私は子育てが終わってようやく一息ついたところでひどいうつ状態になり、一時は死ぬことばかり考えていた。もしその時コロナ禍でもっとストレスがかかる状態だったら本当に自ら命を絶っていたかもしれない。それくらい危険だった。周囲が病院に行くことを強く勧めたのもその時期だ。

その当時、私を取り巻く環境は決して悪くはなかった。むしろ肩の荷が下りて、客観的に見れば幸せの絶頂と言ってもいい状態だった。今振り返っても死ぬ理由なんて一つもなかった。私の人生史上最大級の幸運が訪れた時だったと言っても差し支えない。

でも、長年続いたワンオペ育児の精神的な苦しみや、子育ての重い責任から解放されたことを自覚した時、突然ブラックホールに吸い込まれるような恐怖を感じた。そして、「これ以上の恐怖には耐えられない。死んでしまいたい」という気持ちに支配されてしまったのだ。

あの時の自分は、客観的に見れば確かに幸せな状態だったはずだ。にもかかわらず、これまでの人生の中で一番死に近いところにいたと思う。今考えれば非常に罰当たりな話だが。

子どものころから気苦労や重荷を背負う人生が自分にとって当たり前で、そこから解放された後のことなんて考えもしなかった。せっかく子育ても終わって心身ともに軽くなったのに、それがとても居心地悪くて身の置き所がなくなった。今こんなに幸せだと次の瞬間地獄に突き落とされるんじゃないか?と、底知れぬ恐怖にとらわれたのを今でもよく覚えている。

竹内結子さんの訃報に接した時、もしかすると竹内さんもそんな心境になったのかな……と考えた。もちろん推測に過ぎないが。

自分と竹内さんの状況が決して同じだとは言わない。人知れず苦悩を抱えるようなことがあったと考えた方が自然だろう。

しかし、ずっと嵐のような人生を歩んできた人が急に凪のように穏やかな生活になり、これまでにない充実感や幸せを感じると、この幸せは長くは続かない。という心境になる可能性は十分あると思う。

今が幸せだからこそ、その幸せがいつか壊れるんじゃないかという恐怖がひたひたと押し寄せる。今が頂点であとは坂道を転がり落ちるように奈落の底に落ちていくのではないか?という恐怖心にさいなまれて眠れない日々が続く。そんな体験をした人は私だけではないと思うのだ。

幸せでも鬱になる人はいる。幸せの絶頂だからこそ、先のことがとても不安になり、死にたくなる人も意外と多いのではないだろうか?

でも、どうか幸せになることを恐れないでほしい。その幸せはまちがいなくあなたが受け取っていいものだ。

過去や未来がどうであれ、今幸せならそれを素直に受け入れてほしい。いや、「これからの人生のためにもっと幸せになろう」と自分自身に無理にでも言い聞かせ、他の誰よりも自分自身が幸せになることを一番に考えていいと思う。

これまでの人生で数々の辛いことを乗り越えてきた人は、その分試練に強くなっている。そういう人は簡単に転落などしない。転落は幸せに胡坐をかいた人のおごりや油断が引き起こすものだからだ。

これからもその点に気を付ければおそらく大丈夫。今の幸せに感謝しながら自分のもとに訪れた幸せを享受しようではないか。「これからが人生の本番だ」と自分自身に言い聞かせつつ、残りの人生を悔いのないように生きよう。

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