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#クリミア戦争

病気の「原因」と「治療」とは何か -ナイチンゲール時代の「公衆衛生運動」と「細菌医学」の奇妙な格執-:序論

病気の「原因」と「治療」とは何か -ナイチンゲール時代の「公衆衛生運動」と「細菌医学」の奇妙な格執-:序論

この前、ナイチンゲールについて書いたとこと の続編。

さて、スクタリの病院に集団で収容されることで死亡者が増えたという現実にその後向かいあうことにその後の彼女の人生は捧げられたわけだが、この問題について更に論じていくためには、当時、パスツールなどの先駆的業績の中で認識されはじめていた、伝染病や傷の化膿・炎症における「病原菌」の果たす役割についての学術的な研究への関心の高まりが、実際には、公衆衛生

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当時の外科医はマッチョで非情な「大工職人」だった -ナイチンゲール時代の「公衆衛生運動」と「細菌医学」の奇妙な格執-:本論1

当時の外科医はマッチョで非情な「大工職人」だった -ナイチンゲール時代の「公衆衛生運動」と「細菌医学」の奇妙な格執-:本論1

前回の続編。

 ナイチンゲールの派遣されたスクタリの病院で、最初の数ヶ月、なぜ42%という驚くような死亡率が生じたのか。

 下手に医学用語を使うと間違う心配があるので、敢えてまどろっこしく、できるだけ私なりに普通の言葉で書いてみよう。

 当時、ある程度以上重度の傷や骨折が生じた場合の治療法は何だったか? .....手足であれば、「切断」がいともあっさり行われていました。しかも、傷口よりもかな

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「皆さん、手術の前には手を洗いましょう」の創始者、ゼンメルワイスの苦悩 -ナイチンゲール時代の「公衆衛生運動」と「細菌医学」の奇妙な格執-:本論2

「皆さん、手術の前には手を洗いましょう」の創始者、ゼンメルワイスの苦悩 -ナイチンゲール時代の「公衆衛生運動」と「細菌医学」の奇妙な格執-:本論2

 前回からの続き。

さて、ナイチンゲールがクリミアで活躍した、19世紀中葉当時の外科医は不衛生で不潔そのものだった......と申し上げると驚かれるかもしれない。

当時の外科医はたいてい黒い服を着ていた。なぜなら、浴びた返り血の色が目立たないようにするためである。手術用のエプロンも着けることがあったが、それもまた黒い色をしていた。しかも、そのエプロンはずっと洗濯されておらず、血糊が無数にこびり

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「ナイチンゲール 神話と真実」について

「ナイチンゲール 神話と真実」について

 ナイチンゲールについて、書く、書くといいながら、ずっと先送りになってきた。

 その理由のひとつは、これを機会にいろいろ調べる必要があることが連鎖反応的に出てきたからである。

 結局、公衆衛生学の歴史から細菌学黎明期の歴史までいろいろ調べる必要が出てきた。

 しかしの記事は、その「前編」として、スモール著「ナイチンゲールの神話と真実」(田中京子訳 みすず書房)のおおよその紹介としたい。

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