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関西弁が世代交代している

ドラマや映画で役者さんが関西弁を使うシーンは多い。
しかし、イントネーションがまるでなっていない下手な関西弁は聞くに堪えないものがある。

セリフの言い回しを聞いただけで、その役者さんが関西人かそうでないかがすぐにわかってしまうのをみると、やはり関西弁の言い回しはかなり難しいのだろう。

「わて」の多用に戸惑う

先週いっぱいで終了した朝ドラ「ブギウギ」は、笠木シズ子さんの人生をもとに創作された物語だったが、私が一番気になったのは主人公・趣里さんが使っていた関西弁だ。

主人公は「私」のことを「わて」と言っていたが、果たしてこの時代に当たり前に使っていたのかは疑問に思う。
時代的には、大正から昭和の戦前戦後を経て高度成長期までの時代に、このような死語●●ともいえる言葉を使っていただろうか?

私が物心ついた時にはすでにまわりに「わて」と言う人はいなかったし、漫才や落語、新喜劇などでしか聞いたことはなかった。

その他「おまへんな~」「でっけどな。」と私のようなバリバリの関西人でさえ、オーバーな表現となり、その演技までがクドく感じてしまった。
同じ朝ドラでも、2020年の浪花千栄子さんの人生を描いた「おちょやん」で杉咲花が使っていた関西弁は、似たような時代設定にもかかわらず、ごく自然に耳に入ってきたのだが。

これは演技の違いなのか?
それとも方言指導の違いか?

「わて」は私が生まれた昭和30年後半には一般の家庭では、すでにほとんど使われていなかったし、同じように「私」を「うち」という人もほとんど少ない状態だった。
たとえ関西でも「私」は「わたし」とすでに変化していた。

以前、大阪の「船場言葉」が絶滅しかけていという記事を書いたが、もしかしたら純粋な関西弁も標準語に近寄って変化してきているのかもしれない。


普段使いの関西弁が変わってきた

Z世代の新・関西弁?

40年近く前までは、東京などで関西弁で会話していると、それだけで注目を浴びたものだ。
関西人は一般人でさえボケとツッコミが天性として備わっている人が多く、普通に会話しているだけで漫才師だと勘違いされた(笑)

しかし、今や関西弁は珍しくもなく、関東の方々もうまく取り入れて、ギャグにしている傾向もみられるぐらいだ。
そして、今どきの「Z世代」以降の関西弁も微妙に変化しているようだ。

・死ぬ
例えば、ゲーム機がフリーズしたりすると、「死んだ」というし、
疲れて熟睡することも「死んだ」という。
疲れる、壊れるという意味。

・くっさー
もとは「しょうもない」「つまらん」「カッコつける」ことを「くさい」と言っていたからなのかもしれない。
つまらない事、気取った事などにいう。

・知らんけど
これは昔から関西人の口癖で、話を面白くしたくて大げさにしておいて、単なるオチとして、最後に「知らんけど」と言う。
それには責任回避も含まれている。
これにツッコむとするならば「なーんやそれ。」「知らんかったら言うなや」が模範返答。
それが数年前には全国的?に流行ったのが今さらすぎて不思議だった。

・それな
「ほんまそれな!」と激しく同意する言葉だったが、愛想程度の軽い意味になっている。

・ワロタ
「笑った」を関西弁で「わろた」というので、それをSNSなどでカタカナ表記にするのが見られる。「ワロタwwww」という感じ。

関西弁として普通に使われてきた言葉が、最近になって若い世代に多用されるようになったのはなぜだろう??

失われていく関西弁

若者言葉として本来とは違う意味に変化したり、新しく生まれ変わるものもあれば、「わて」や「うち」のように死語になってしまった関西弁もある。

こんな風に時代の流れとともに関西弁も世代交代を繰り返し、大きく変化しつつあるようだ。

関西弁を話す人は関西弁への強い誇りと プライドを持っており,標準語への対抗心 も高い。

現在の関西弁における方言意識と標準語化

そういえば子供のころ、標準語を「東京」と言っていたのを思い出す。
今から思うと、わざわざ「弁」とつけるあたりに対抗心が垣間見えて、その健気でちっぽけなプライドに苦笑してしまう。

確かに、ひと昔前まで持っていた対抗心とは、裏を返せば「関西訛り」が田舎臭く取られはしないかと、一種の劣等感を持っていたため、必要以上に意識していたからではないか。

ところが、最近の関西弁は「わて」が「わたし」となったように、むしろ徐々に標準語寄りになってきているではないか。
反対に全国的にみて、「知らんけど」や「ワロタ」のように大阪弁の言い回しを標準語圏の人が会話の中に普通に使ったりしている。

関西弁と標準語の双方が少しずつ距離を詰めてきている気がする。

いわゆる「~でんがな」「~まんがな」は私の父母世代は使っていたが、私たちの世代になると「~ですやん」「~やろ」としか言わない。

新たな言葉に生まれ変わったり、標準語に近づいたりして、本来の純粋な関西弁が徐々に使われなくなる傾向は、関西人の一人として、ちょっとした寂しさを感じずにはいられない。

「船場言葉」が絶滅しつつある今、さらに追い打ちをかけるように「元祖の関西弁」も失われていくのも時間の問題だと言える。


関西弁50選!

さて、関西弁はこれからも変化することを見越して、今現在、使われている言葉をここに50単語を書き出し、将来、どの言葉が失くなり、どの言葉が標準語化するのか。
また「知らんけど」「ワロタ」に続いて。全国的に多用されるものがあるかもしれない。(( )内は例)

王道!普段使いの関西弁

①いらう=触る
(いろたらあかん。いらいなや。)
②なんしか=とにかく
(なんしか、その通りにしたらええねん。)
③わや=無茶苦茶
(さっぱりわやや。わやくちゃ過ぎるわ。)
④おぼこい=子供っぽい
(見た目がおぼこいから、若く見えるわ。)
⑤やんぴ・やんぺ=やめる・抜ける
(おもろないから、もうやんぴや。)
正味しょうみ=ぶっちゃけ
(しょうみ、どーでもええわ。)
⑦ようけ・ぎょうさん=たくさん
(ようけ持ってるで。ぎょうさん食べや。)
⑧イキる=かっこつける、調子にのる
(イキり過ぎやで。イキった兄ちゃん。)
⑨ええし=良家のお金持ち
(ええしの子ぉやから。)
⑩さぶいぼ=鳥肌
(あかん、さぶいぼ立ったわ。)
⑪炊いたん=煮物
(芋の炊いたん。)
⑫いちびり=お調子者
(いちびりでおもろい人やな。)
⑬なおす=片付ける
(食器、なおしてや。)
⑭自分=あなた
(自分はどう思うん?)
⑮めばちこ=ものもらい
(めばちこできたから眼医者いくわ。)
⑯はみご=仲間はずれ
(あの子は嫌いやから、はみごにしょー。)
⑰ちょける=ふざける
(ちょけたらあかんで。)
⑱しゅんでる=染み込む
(このおでん、よー味しゅんでるな。)
⑲ほる、ほかす=捨てる
(ゴミほってきて~。)
⑳よして、よせて=仲間に入れて
(かくれんぼ、よして。)
㉑かしわ=鶏肉
(かしわの炊いたん。)
㉒べべ、べった、どべ=最下位、ビリ
(かけっこ、べべやった。)
㉓さら=新品
(さらやから、汚したらあかんで。)
㉔えらい=つらい、きつい、とても
(えらい歩いたから、体がえらいわ。)
㉕いらち=せっかち、気が短い
(いらちやから、はよしてや。)
㉖ぐねる=足をくじく、捻挫する
(足ぐねて、歩かれへん。)
㉗こすい=ずるい、狡猾な
(あんた、こすいなぁ。)
㉘なんぼ=いくら?
(これはなんぼ?)
(これ、なんぼにしてくれるん?)は値切る場合。
㉙いけず=意地悪
(べっぴんさん美人やけど、いけずやで。)
㉚けったい=奇妙な、おかしな
(けったいな顔しなや。)
㉛つぶれる=故障する
(テレビつぶれた。)
㉜ぬくい=暖かい、温かい
(この毛布、ぬくいわ。)
㉝きしょい=気持ち悪い
(きしょい態度。きしょい服。きしょい所。)
㉞おがる=怒鳴る
(そないおがらんでも聞こえるわ。)
㉟もみない=不味い
(もみない弁当や。)
㊱蚊に噛まれる=蚊に刺される
(かぁ噛まれてしもた。)

マジか!関西だけとは知らなんだ

水屋みずや=食器棚
㊳どんつき=行き止まり
㊴ポリボックス=交番
㊵モータープール=駐車場
㊶Yシャツ=カッターシャツ
㊷コマ=自転車の補助輪
㊸パチもん=偽物
一丁いっちょ噛み=いろんな事に少しずつ何にでも首を突っ込む人。
(いっちょかみしてたら、大物なられへんで。)
㊺テレコ=互い違い、食い違い、入れ違い、あべこべ
(テレコに置いて。テレコ模様。)
㊻三角座り=体育座り
㊼ほたえる=騒ぐ、暴れる
(ほたえたら、ケガするで。)
㊽押しピン=画びょう
㊾お造り=刺身
㊿アテ=おつまみ


ー番外編ー

私も知らんかった!こんな関西弁があるとは驚いた!

・けなりーー羨ましい
・てんごーいたずら
・じんじろーつむじ
・かんてきー七輪


さぁ、気になる言葉はあったかな?
実際に聞かんと真似するんはめっちゃ難しいやろけど、普段の会話でギャクっぽく使えるもんがあったら使つこうてみてな。
どろくさ~い関西弁も、かえって新鮮かもしれんで(笑)

それにしても、関西弁に限らず「方言」てええなぁ~。


↓↓↓2年前にオール大阪弁で書いた記事です。



・現在の関西弁における方言意識と標準語化



=皆さんが知る死語となった方言を教えて下さい=

お住いの地域の方言で、
祖父母世代や父母世代まで使っていたけど、自分たち世代以降は使っていないという言葉はありませんか?
もしありましたら、コメント欄または記事作成で教えてください。

記事の場合
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・ハッシュタグ「#方言の世代交代」

もし、ある程度集まれば、後日に総括させていただきます。

※無期限です



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