読書人間📚『恋しくて』編訳/村上春樹
『恋しくて』編訳 村上春樹
2013年 初版発行/中央口論新社
編訳 村上春樹
Ten Selected Love Stories
村上春樹が選ぶ世界のラブストーリー、10編
▶︎『愛し合う二人に代わって』マイリー・メロイ
とてもストレート。いじくり回さない。村上春樹さんが仰るように、私もこの真っ直ぐさが好きです。クリスマス、恋人たちがにぎわうシーズンに読みましたが、定番直球な映画を観たくなる感覚と重なりました。ナチュラルな恋愛模様は安心をくれます。
▶︎『L・デバードとアリエット 愛の物語』ローレン・グロフ
貧富格差のある男女の物語。とは言っても、元オリンピック選手と言う華やかな経歴を持ちながら売れない詩人の青年と、体の弱い娘。どことなく釣り合いがとれる流れになるのでは?と2人の情熱に浮かされそうになります。ですが、なかなかハードな2人の人生。壮大な歴史小説でいて短編という形に驚きます。村上さん同様、私も一息で読んでしまいました。
▶︎『恋と水素』ジム・シェパード
わたしには、いまいちピンとこず。色々がマニア向けな趣向になっていました。
同性愛はいいとして、危険な場所での交わり、飛行船もろもろの知識。村上春樹さんの解説を読んでも、なぜ、この作品をピックアップされたのか、不思議でございました。
▶︎『モントリオールの恋人』原題 Dominion(支配者) リチャード・フォード
倫にはずれた男女のお話。短編ながら、その手の恋情に付きものの心理がぎゅっと詰め込まれた大人の逸品。ですが人の道にあらがう恋に苦しんだ人のみならず、他人と深く関わるならこのような問いや疑問はつきものでは? 上手い訳だと感じた箇所を引いておきます。子どもには理解できない作品、完全に大人向けの作品ですね。村上さんは、僕にだってよくわかりにくい部分があると仰っていますが、十分にわかっていらっしゃる方の訳です。
「___気を紛らわせてくれるように段取りされた未来がなければ、人生はあっという間にただの反復に堕してしまうのだという事実___」
「___未来を誰かと分かち合うというのは要するに、反復をより巧妙にこなしていかなくてはならない___」
「___もしあなたがリアルなものに対してもっと敬意を持ったなら、偽物はおのずと消えていく___」
「___まだ完全に始まってもいないものをうまく終わらせるって簡単なことじゃないもの___」
▶︎『恋するザムザ』村上春樹 書き下ろし
小説家がアンソロジーを編むと、収録すべき作品の数が足りなくても「ええい、面倒だ。自分で書いちまえ」となる裏ワザ作品だそう。なんとまあ。
ある意味ストレートでドキドキした作品です。これも大人向けですね。
他
▶︎訳者あとがき
そもそも、村上春樹さんは、もっとストレートなラブストーリーを集めたかったそうですが、難航し、柴田元幸さんに推薦して頂いた作品も掲載されているとのこと。
正直で安心しました。なんだか釈然としない作品集だと感じ、ご自身の企画では無いのかと思いました。わたしのお気に入りは10作中、4作なので、ハードカバーはちょっと重かったかな、と言う印象。
装丁 田中久子
装画 竹久夢二「黒船屋」大正8年
竹久夢二伊香保記念所蔵
竹久夢二の装画に惹かれて購入しました。
素敵です。
🌝声、発声、機能を考える
ボイス・ボーカルレッスン/東京都
音楽療法(医療行為は行わない)の観点からオーラルフレイル、口腔機能、老化防止を意識した呼吸法、発声のレッスンも行います。