- 運営しているクリエイター
記事一覧
AIは猫にとって理想の家族となり得るか?第5話
《本当に大切なこと》
家で仕事をするようになって、気付いた事がある。
(私、こういう仕事の方が向いてるかも)
散々母から管理されていた為、仕事をサボらずに一人でも一生懸命出来るし、集中して何かに取り組むのは得意のようだ。
要するに、自分は部下を管理する管理職には不向きだが、自分を管理コントロールし、集中して仕事をこなすのには向いている。
それに会社で働いていた分、一緒に仕事をする
AIは猫にとって理想の家族となり得るか?第15話
《三日目、救いのない話》
全てを終え、落ち着いてからでないと語り尽くせない。真希は、騒動の終息を得てから、一枚の絵画のようだった、あの場面を反芻した。
母の目に浮かんでいたのは勝利の確信。あらゆるものを削ぎ落としてでも手に入れたかったものが、手に入った瞬間のように見えた。母は見たこともない華やかな微笑みを浮かべて、幸せそうに見える。
例えそれが幻想であったとしても、母にとってこの瞬間は生
AIは猫にとって理想の家族となり得るか?第14話
《二日目、不穏なニュース》
『家事専門AIと言っても、多少出力を変えれば武装した軍人と変わりませんよ! あなた、タンスを持ち上げる力で殴られたら怪我するでしょ!』
『ご覧下さい、極秘に入手したこちらの映像! これだけの身体能力を備えたロボットが、いつ私達に刃向かうか誰にも分からないのです!』
『こんなロボットは廃棄するべきだ!』
『OWBはコレを一般生活に浸透させて、我々を支配するつもりだ!』
AIは猫にとって理想の家族となり得るか?第12話
《怒濤の三日間》
その日は、突然やってきた。いつも通りの朝、新しい家族との暮らしにも少しずつ慣れてきた頃。
呼び鈴が嫌いなチナツが慌てて走って逃げ、隠れてしまうのを笑っていると、ゴローが来客の対応をしてくれる。
突然やってくる人に心当たりは無いし、何か通販で頼んでいたかしら、と気軽に考えながらコーヒーを飲んでいると、ゴローは直ぐに戻って来た。手に荷物は持っていない。ただ、一言告げた。
AIは猫にとって理想の家族となり得るか?第11話
《ゴロー、SNSデビュー》
ハカセが出席する予定の首脳会議のニュースを見ながら、咲希が朝食をリクエストしてくれた。
トーストも美味しいけれど、今朝は和定食が食べてみたい、と。ゴローはリクエスト通り、炊きたてのご飯に納豆と焼き海苔、焼いた鮭に大根おろしを添える。味噌汁は豆腐とわかめ。だし巻き卵は甘くないタイプ。昨夜の残り物だが肉じゃがも小鉢に入れて準備を整えていると、足下でチナツが鮭を欲
AIは猫にとって理想の家族となり得るか?第13話
《一日目、ゴローの供述》
「ハイ。チナツさんは、七月三日六時四十六分三十二秒、マキ様の母に当たる方が「ちょっと預かって」と置いて行かれマシタ。その後、受け取りに来られなかった為、ワタシがお世話を継続しておりマス」
もう、何十回も同じことを話している。繰り返し話すことで矛盾が生じるのは人だけだ。ロボットは記憶中枢に登録されたメモリを読み上げているだけなのだから矛盾が生じることは決してない。
「
AIは猫にとって理想の家族となり得るか?第8話
《悪夢の襲来》
どうしよう。
小さな体と心が押しつぶされるような不安の中で、真希は何時も部屋の片隅で小さく自分を折りたたんで固まっていた。
どうしよう。また、百点を取れなかった。お母さんに怒られる。
『どうしてあの人と私の子なのに、こんなに出来が悪いのかしら』
母は怒鳴ったり叩いたりしない。怒ると、静かにため息をついて、そのまま。背中を向け、真希など空気か何かのように見なくなる。ひょ
AIは猫にとって理想の家族となり得るか?第7話
《素敵なプレゼント》
毎日の日課内に、午前中の家事を終えたらチナツとの特訓が加わった。猫として少々鈍い所のあるチナツに合わせて、ゴローは丹念にトレーニングコースを組んでいる。
「チナツさん。トレーニングを開始シマス」
「うる!」
すでに臨戦態勢のチナツは姿勢を低くして長い尻尾を振りながらタイミングを計っている。
「トレーニングモード起動。初級、瀕死のげっ歯類」
ふわふわの猫じゃらし
AIは猫にとって理想の家族となり得るか?第6話
《天才達の日常》
地球救済計画保護法(Earth Salvation Plan Protection Act)。それは、進退窮まった世界各国のトップが「このまま行くと全人類が滅びる」との計算を受けてようやく重い腰をあげ、国と言う柵を超えて手を取りあった証。
一先ず、公式発表では、そう言う事になっている。
保護法が守っているものとは、現在の定義では「人類を存亡の危機から救う力のあるもの」
AIは猫にとって理想の家族となり得るか?第4話
《モノタリナイ?》
診察時間の十分前、病院前に到着したゴローは、早速入り口から安全確認のスキャンを行った。
「入り口に異物発見。スキャンスタート、完了。カエルの置物、無害」
「るおーん!るおぉおおん!るぁああああん!」
「チナツさん、ここは安全デス。何があっても、ワタシがお守り致しマス」
ここからの手順についても、完璧に予習してきた。ゴローは入り口を開いて、内部のスキャンを行い、受付の窓