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【アカペラ】「個人練してこないやつ」をどうすべきか

久々にアカペラについて書きます。

アカペラ、とりわけ学生アカペラ界隈は、ぶっちゃけわけのわからないことだらけの領域です。
その「わけのわからなさ」ゆえに悩んでいる人たちにとって、この記事が少しでも肩の力を抜くきっかけになれば幸いです。
また、アカペラに限らず、チームで行う競技やプロジェクトなどに取り組んでいる人にも、少なからず共感してもらえる内容になっていると思います。

さて、今回考えたいのはこんなテーマです。

メンバーが全然個人練してきてくれないんだけど、どうしたらいい?

バンマスしかり、バンドを引っ張る立場にある人にとって、あるメンバーが後れをとっているせいでバンド全体がうまく前進できない状況というのは、とてもイライラするものだと思います。
アカペラを頑張っている人であればあるほど、こういう悩みを抱えた経験は多いのではないでしょうか?

今回は、もはや古典的と言ってもいいこの問題について、考えていきたいと思います。

絶対にやってはいけないこと

個人練をしてこないメンバーに対して絶対にやってはいけないこと一つあります。
それは、

個人練してこい」と(言うだけ)言うこと

です。

「は????」という声が今にも聞こえてきそうです。
わかります。じゃあどうしろって言うんだ、やる気のないやつを甘やかせって言うのかと。憤りたくなる人もいるでしょう。
でも、本当にメンバーに練習してきてほしいと思うなら、ちょっと待ってください。

胸に手を当てて考えてみてほしいのですが、親に「勉強しろ」と言われたとき、自分がどんな気持ちになったか覚えていますか?
大半の人は腹が立つなり勉強する気を損なうなり、やる気とは程遠いネガティブな感情に襲われたことと思います。
漠然とした「個人練しよう」は、親の「勉強しろ」と同じです。
やる気を起こさせるどころか、相手をいっそう迷わせ、無気力にさせる結果につながりかねません。
それならばどうするか。

とにもかくにも、具体性

そもそも、練習ってなんのためにするものでしょう。
できないことをできるようにする、あるいは「頑張ればできる」を「鼻ほじっててもできる」にするためのものですよね。

となると、練習するために必要なことは何か。
それは、自分ができないことは何か、「できる」のレベルが十分ではない事柄は何か、についての正しい理解です。
すなわち、己の課題の認識です。
裏を返せば、自分が何をできていないか、どうすればもっとよくなるのかを知らないままもがいても、たいがい何もよくなりません

メンバーに「もっと個人練してほしい」と言いたい人、言ってしまう人、気持ちはわかります。
しかし、そのメンバーが「自分のどこがいけなくて、どうしたら改善できるのか」をきちんと認識していない限り、「個人練をしろ」という言葉は「お前は下手くそだ」という蔑みにしかなりません。
もちろん、そんなつもりはない人がほとんどだと思います。
しかし、蔑みではなく改善要求として伝えたいのならば、本人の努力によって解決可能な具体的な問題点の提示は、絶対に必須です

たとえば、新曲の初練習で音が取れていなかったメンバーがいたとします。
そのメンバーに、音が取れていなかったという事実のみを切り取って、「音取りしてこいよ」と一蹴しても、多くのケースは解決につながりません

相対音感がまだまだ弱くて、1週間くらいの音取りでは自分のパートを正しく追い切れないのか。
どうしても難しい音飛びが数か所あって、そこに対応しきれていないのか。
発声の問題で、求められるピッチや音質で歌うのが難しいのか。
練習日直前まであまりに忙しすぎて、まともに音を取れていなかったのか。
あるいは、単純なサボりなのか。
さまざま理由はあると思いますが、その理由に応じて、かけるべき言葉は変わってくるはずですし、本人がやるべきことも違ってきます

そんな細々と他人のことなんか気にかけていられない、というのであれば、もうその人とバンドを組むのはやめたらいいと思います。
もっとストレスなくコミュニケーションできる相手とだけ、思う存分歌ったらいい。
でも、バンドを大事に思い、後れをとっているそのメンバーを心配し気遣う気持ちがあるなら、その人が改善すべき点、そしてその人自身の努力で改善可能な点も、あわせて教えてあげてほしいです。
他人に努力を求めるのであれば、それは必ず押さえておかなくてはいけないポイントです。

もちろん、アカペラを始めて3年も経たないうちは、問題点を的確に見抜き、具体的な改善の道筋を提示することそのものが、きわめて難しいと思います。
そういうときは、自分たちだけでなんとかしようとせず、先輩をはじめ、あてになる指導者を頼りましょう。
そこでもらったアドバイスは、問題を抱えたメンバーだけでなく、問題を正しく指摘できなかったメンバーたちにとっても、有意義なものとなるはずです。

何もかもが1週間で解決すると思うな

「具体的な改善への道筋を示す」ということに加えてもう一つだけ、大切なことを述べておきます。
それは、メンバーが解決すべき問題が解決するまでの時間的な見通しを頭に入れておくことです。

つまり、ある問題は1週間も練習すれば十分改善可能だけれど、別の問題は5〜6年かけないと完全な解決にはいたらない、といったばらつきが、アカペラにおいては存在します。
それを知っておくと、「個人練をしてきたのに、すぐには効果が出なかった」というメンバーを、無意味に責め立てて追い込むことを避けられます。

たとえば、音感がある人だったら、自分のパートの音取りは1週間もあれば十分済ませられるでしょう。
しかし、相対音感そのものからしっかり培わなくてはならない、という人の場合、3か月や半年くらいは見ておく必要があります。
さらには、発声を根本から良くしようと思ったら、年単位は見越しておいたほうが無難です。

「音が取れない」「ピッチが当たらない」という悩み一つとっても、こういう射程の異なる問題が絡み合っているのであり、すべてがすべて1週間や1か月といった短いスパンでの努力によって解決するものではないのです。
その点をふまえて、指摘すべきところは指摘し、見守るべきところは長い目で見守りましょう

おわりに

以上、「個人練をしてこないメンバーがいるとき、どうしたらいいか」という問題について考えてみました。
まず大切なのは(1)具体的な指摘、そして(2)問題解決の時間的な見通しを理解しておくこと、この二つだとあらためて述べておきます。
アカペラに限らず、色々なチームワークにおいて生かすことのできる考え方だと思いますので、是非参考にしてみてください。

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