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深夜の通りすがり

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夜だったら何言ってもまあ許してよね、と思ってた
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昼寝と夜風

昼寝と夜風

昼寝を纏えばよく眠れるのに
夜を演出されると目が覚める
電気はつけたままでいて
ずっとそのままでいて

太陽があっちを向いたとき
こっちの出番だって
震えて待てと強気でいて
下がる気温に身が震えて

シフト通りの役割だけ過ごして
景色が似た色に変わっていく
たまには家で映画を観ていたい
雲の裏で暮らす13時半

たまには夜な夜な本を読みたい
身を削る生活に憧れて
胸まで持ち上げた布団の重みと
抗え

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行くあての

所謂リア垢を散策していると、地元や中学に対するコンプレックスが浮き彫りになってくるし、当時は飲んだことすらなかったエスプレッソの味が舌先に思い出せるくらい、苦さとともに曖昧な記憶に襲われることがある

知らない土地に行きたい気持ちが強くなっている、それはあくまで不安と似た期待もあわせての感情ではあるが

街は海が見えてくるまで、地続きで行き先を伸ばしていける

何も知らないところで、見ず知らずのタ

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炭酸が嫌いだと言い聞かせてきたのに、眠れない夜のせいで缶コーラを買ってしまった
待ち構えていた、痒みを促すあいつに自動販売機に案内され、缶一本と痒み三個で勘弁してもらった
飲み干すのに苦労して、また眠れない時間を伸ばしては、人向けの表情を作り直して、言い聞かせる朝になっていく

もう眠れる用意もできて、もう横になってるのに眠らないようにしてるのは、いらない意地がまだ残ってるせいだ

期待すればするほど何にもないんだから、夜

眠ったふりして

眠ったふりして

一般的には奇行だと思われることを少しだけでも足しておかないと治まらないのだ、眠れなかった夜を埋めるには

幾分か風通しに気が向くようになった外に出て、口が慣れないままで苦手だってことにしてる炭酸ジュースをわざわざ自販機まで買いに行き、草が近く茂っているベランダに腰掛け、青を失い始めた空を見上げながら舌を痺れさせ、足先の痒みを風物詩だと言い張って夏を迎えようとしている

ふたご座流星群が降る夜に

ふたご座流星群が降る夜に

ふたご座流星群が見頃だと知って、冷え切った空気をかき分けて高台を目指した。3:04の影が落ちる。

光を打ち消しあいながらひとつの空が出来上がっていく。フジファブリックの「星降る夜になったら」に身を任せて、明度に対して敏感になっていく。

思いやられずに追いやられた騒音を置いてけぼりにして、赤く染まっていく肌を見る。点と点が結ばれていくように、この世の辻褄が合っていく。

探すまでもない、小さくて

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無味で無実

無味で無実

味のしないホットケーキが食べたかった。

甘いものが好きな人、辛いものにご執心の人、いやいや私はお酒のおつまみになるようなしょっぱさがないと食べた気にならないよって人。

奮い立たせるするために、刺激欲しさに、反応の強い何かを口にしているし、一口目で思わず真上を眺めたくなるような気持ちよさのために食事を重ねてしまう。他の追随を許さない、数秒の煌めきのために、たまには良いものが食べたいと意識して食事

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さいど

今日に満足したかい?
聴いてくる彼女は卑怯だね
烏とともに現れて 風に攫われてまた消える

窓に打ち付けられた雨粒がノックする
早いものでもう朝が来るね
はだけては震えて 重さを変えてのしかかる

一度カーテンを閉めてあくびをひとつ膨らませる
数字だけが止まって虚しいね
コウノトリはいなくて 烏が乗せてくれた雲の上

嘘とフィクション

現実に興味がなさそうに不貞腐れるのなら、代償として、虚構の中を飛び回れるほどの裏世界にも幅を持っておくべきであって。
二つを行き来しているつもりでも表はなく、アウェー会場を目移りするのみで迎え入れられる懐は見つからないし探すあてもない。逃げてきたはずの嘘に追いかけ回されている。
フィクションが欲しくて下を向く合間に、時計が1秒ごとに針が鳴る。