生きにくい片耳ウサギの物語
ヒトが言葉を覚え始めた頃
動物たちも言葉を詠んだ
動物たちの暮らす風変わりな村
ここは片耳ウサギの暮らす村
片耳ウサギは白毛を纏い
毎日なにか大変そうだ
仲間のウサギは草原で
おしゃべり盛んに草を食む
片耳ウサギは隅っこで
悲しい目つきで空を眺めた
若い雄には付き合うが
心はどこか宙を舞う
時々自分に咬みついて
片耳ウサギは傷だらけ
父親ウサギはいじけてばかり
母親ウサギは怒って泣いた
悲しみ溢れた片耳ウサギ
飛び出しこの村住み着いた
慣れない笑顔、震える脚に
漏れ出す言葉は声にもならない
夜更けに詠う嘆きの詩は
微かな風に紛れて溶けた
感性豊かに彩る旋律
誰聞くともなく宵の向こうへ
ある日優しき雄ウサギ
そっと抱きしめ愛を伝えた
片耳ウサギはほっとした
涙を流し春を詠んだ
(イラスト:atelier KK〜絵と言葉〜)
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