チキ

生きることをあきらめない女。明るい根暗です。

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最近の記事

たゆたう季節

まだ若かった頃、恋に恋をしていた頃、素敵な誰かに選ばれて、その後の物語を私が選べると思っていた頃。 好きだとか、一緒になりたいとか、そう言う言葉を敢えて遣わないで、のらりくらりしていた時期があった。 あれってなんだったんだろう。 すごく楽しかった。 楽しかったと言うより、繊細な記憶で、まだ心に瑞々しさと脆さがあって、夏の夜の匂いで。 私は家庭環境が終わってたし、優等生をずっと演じていたし、性犯罪被害者だった。 だからなんだかすごく、そう言う時期が、逃げ場所が、救いだった

    • 「非」指定難病

      症状が同じなのに、原因がハッキリしないだけで難病指定されない。 そもそも手術だって保険適用外。自己負担だ。 症状が同じなのに、同じ保障は受けられない。 保障が受けられないと、目に見える「証拠」がないから周囲からの理解を得難い。 底なしの、社会の穴に突然つき落とされて、それで一体どうやって生きていけと言うんだろうね。

      • 懺悔

        共感が強い性質である。 役に立つこともあるが、本来背負うべきでない感情まで、余計に背負うことがある。 共感を超えて、自分の感情になる場合、それは歪で、丁寧に、正しく受け止められないものになる。 例えばそれは人の痛みだ。 わたしがそれを背負ったところで、相手の痛覚が鈍るわけではない。 理解していても、心はそれを処理しきれない。 大切な人の痛みほど、質量が大きく、深いところまで自分のものになってしまう。 例えばそれが、わたしの愚かさに起因する苦しみや痛みの場合、もうほと

        • ごまかし

          「ごまかし」 見せかけは良いが内容が伴っていない。 表面だけ取り繕って中身のない。 自分の感情、楽しい、嬉しいを、人に見せて喜んでもらうために演じてはいないか。 他人からどう見られたいかでその場をやり過ごす癖がある。 物心ついた時からそれは少しずつ始まっていて、今となってはもう染み付いて離れない。 それでも、数年前までは、今よりはもっと感情を表に出して、怒ったり泣いたり、本気で人を好きになったりもしてきたはずだった。 大人になるにつれて、そりゃまあ、その場に適応する

        たゆたう季節

          うんとお腹をすかせてきてね

          同じものを食べて、 同じ成分で肉体をつくる。 全く同じは不可能でも、 できる限りそうあろうと心掛ける。 それは執着でも依存でもなくて、 お互いに自然とそう在りたいから。 そんな関係が素敵だと思った。 私にはそういう人はいないけれど、 それが幸福であるのはわかる。 28年と8ヶ月でようやく いつか誰かと一緒になることが 当たり前な結末じゃないと理解した。 依存体質だった私はとうとう、 恋愛という「のろい」から解放された。 私が愛した、或いは愛した風でいた様な彼等に ほ

          うんとお腹をすかせてきてね

          こころ

          巡り合わせ 文学は不思議な巡り合わせが有ると感じる事がある。 それは不朽の名作であったり、そうでなかったりもするけれど、確かにその瞬間は有る。 少なからず、誰にでもそういった経験があるのではないかと予想する。 先に記述した通り、私は今きちんと私自身と向き合わなければならない時である。 そんな時に、吸い寄せられるように手に取ったのが、この本だ。 こころと私 ここ最近、他人に裏切られることが多くあった。 声を大にして騒ぎたてたのは弱さからだったのかもしれない。

          こころ

          世界一無意味な、愛についての自説

          自己満足のための好意が、ひどく不快だった。あの子を心配してやる自分。あの子のためになってやる自分。あの子の特別になり得る自分。 かわし方をずっと昔に忘れてきた人間には、それらを正面から受け止めるしか処理する方法がなかった。 与えられたものには感謝しなさい、と母の声か、あるいは目に見えない何かに強く従うように、全て有難いものだと喜び、そしてそれらに絶望した。 恋愛は所詮勘違いと思い込みだと誰かが言ったが、全くその通りだ。 実際は、認められたい、見返りが欲しい、同じ感情を抱

          世界一無意味な、愛についての自説

          凡人

          今生きている現実が夢なのではと思うことがある。そう考えなければやっていられない時がある。 佳人薄命に当たるほど美人でないくせに病弱であって、抜きん出たものは一つもなく、寧ろ他人ができることもできない。 努力の方法を忘れ、自分だけが繊細なつもりで生きている、ただの阿呆であると云うのが己の評価である。 常に今が人生のどん底であると思い込み、どんな人間と関わるか、どんな人生を歩むのか、熟考し、取捨選択をしているつもりでいて、全く己の頭は機能していない。 数学を忘れたこと、漢字

          まだ若いことばたち、10代の書きとめより

          心の中鳴り止まない 瞼閉じれば色付く夢 追いかける君鮮やかに 風の青さに包まれて 色付いた君 駆け抜ける 七色が僕を貫く 決心のついたなら もうなにも怖くないから 行こう 遠くの方で待っている ぼやついた雲をじっと眺め 踏み出せない君追い越して 重ねる掌 強く 吸い込んだ空 駆け抜ける 七色が僕を貫く 決心のついたなら もうなにも怖くないから 行こう 過去が君の手を引くなら 振り払って 僕と行こう 騒ぎだす肌に染み込んだ 高く響く音を探して

          まだ若いことばたち、10代の書きとめより

          散花 Ⅱ

          (二)  美しいものを知った時、人は何を思うでしょう。研ぎ澄まされたような感覚で、例えば色、例えば音や香り、或いは、心の奥深くの記憶とすり合わせて、その唯一無二の存在を確かめるでしょうか。溢れる感動が押し寄せ、抗えず、ただただその波に飲まれるように、胸のあたりが苦しくなり、窒息するほど深くまで溺れてゆく…「息をのむ」とはよく言ったものです。  その日わたしは街中のビルでこぢんまりとやっている精神科の鍵を閉め、さて今日は好きな作家の新刊を買おうか、それともいつもの喫茶店で食

          散花 Ⅱ

          散花 Ⅰ

          二〇一八年 十月 某日 (一)  真っ白な煙が重なる。それらが肌を攫っていくのを、迷わずじっと見つめていた。それからぼやぼやと視界をぼかしていく。花が散るように見えた。ボックスとジッポーだけ握りしめて、苦さに酔いながら歩く。南六条、背の高い立体駐車場からしきりに響くサイレン。  「車ガ出マス、ゴ注意クダサイ。」 優しくない、空っぽなこの街。どこかちぐはぐなネオン。その安っぽさが、まるで私の存在を許すかの様だった。フワフワと体が浮かび上がって、ほとんど無意識に細道に入

          散花 Ⅰ

          おりあい

          おりあいをつけようと思います。 あなたが抉った心の隙間を、身体は必死で埋めました。過食嘔吐、4、5日目で喉が焼け、はて、これはまずいと思いつきました。 あなたとお別れしてから、人と会う約束を取り付けては、くだらないことでよく笑い、痛みの風化を待ちました。私は大丈夫と何度も言い聞かせ、私は大丈夫と声に出しました。 身体が正直で助かりました。 私はこの強がりを一抜けることに決めました。 あなたが居ない人生はとても辛いです。 思い出さなくていいように、毎日泥のように眠り、動

          おりあい

          無題

          鳴らす葉さらさらと 一枚空へ そして心に落ちた 無知を装えば白でしょうか 繕えば笑う タイミング 損なえばもう エンディングは近い 水面に浮かぶ欲望に 酔う君は月と共に 揺らそうがもう物足りない 振り出しに戻されるの 枯らす喉ざらざらと メロデイが流れて そして心に落ちた 染まらない黒は確かに 切ない言葉の手錠に そう君は計算通り 濡らそうがもう聴こえない 振り出しに戻されるの 水面に浮かぶ欲望に 酔う君は月と共に 揺らそうがもう物足りない 振り出しに戻る 戻れない 物足