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世界一無意味な、愛についての自説


自己満足のための好意が、ひどく不快だった。あの子を心配してやる自分。あの子のためになってやる自分。あの子の特別になり得る自分。

かわし方をずっと昔に忘れてきた人間には、それらを正面から受け止めるしか処理する方法がなかった。

与えられたものには感謝しなさい、と母の声か、あるいは目に見えない何かに強く従うように、全て有難いものだと喜び、そしてそれらに絶望した。


恋愛は所詮勘違いと思い込みだと誰かが言ったが、全くその通りだ。
実際は、認められたい、見返りが欲しい、同じ感情を抱いて欲しい、独占したい…そんなエゴの塊だ。

キラキラとした名前のせいで随分見栄えはいいが、その球体は薄い膜で辛うじて包まれていて、少しでもえいとつついてしまえば、簡単に弾け、その本性を現す。

そもそも様々な感情があるうちの、大まかな好意を恋愛感情と位置付けるのはあまりにも乱暴ではないか。

そんな薄っぺらな容器を無理やり押し付けたり、投げて飛ばしたり。

人間は、その中身が鋭く尖るカミソリと同じくらい、簡単に他人を傷つけるものだと云うことを自覚することはできないのか。

恋愛とはそういった傷も痛みも流れる血でさえも、刺す人も刺される人も喜び愛おしく思うような狂気のことを云うのだ。

確かな狂気に晒される日常は、とても恐ろしいものに思う。

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