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うんとお腹をすかせてきてね


同じものを食べて、
同じ成分で肉体をつくる。

全く同じは不可能でも、
できる限りそうあろうと心掛ける。
それは執着でも依存でもなくて、
お互いに自然とそう在りたいから。

そんな関係が素敵だと思った。

私にはそういう人はいないけれど、
それが幸福であるのはわかる。


28年と8ヶ月でようやく
いつか誰かと一緒になることが
当たり前な結末じゃないと理解した。
依存体質だった私はとうとう、
恋愛という「のろい」から解放された。

私が愛した、或いは愛した風でいた様な彼等に
ほんとうは必要とされていないと理解した時、
それはあまりにも唐突で、
しかし存外優しく視野を広げた。

きっと、愛することと幸福であることは
正確にはちがう。

愛することはもしかすると、
私のこころには
あまり良くないのかもしれない。

終わりがきたとき、
或いは折り合いをつけられなかった場合、
酷く執着してしまうから。

ほかのものに目線を合わせられないから。
別の道へ飛び移ることに臆病になるから。

ここまで沢山の人と関わり合いを持ち、
人間の美しさも、醜さも、
10年で随分この手で触れて、感じて、
きっと私の一部になっているはずだ。

それなのに何度も間違えて、
その度に喜怒哀楽を振り回して。

当時は難解だった警告文が、
今になってやっと解読できた様な
随分と時間差でチクチクと心臓を突くのだ。

それでも後悔はしていないのが
また不思議なのだ。

この短編を読んで、この2人の関係性が
とても美しいものと感じた。

しかしその実、「のろい」と
完全に離れ離れになることは
ないのかも知れないと、
ぼんやり考えている自分も居るのだ。

これからどの様な人たちと
どんな日常を送るのかは
想像もつかないけれど、

少しだけ、この「のろい」と距離を置けた
今この一瞬だけでも、
美しいものと出逢えるように祈りたい。

愛することと同時に幸福を望むこと、
どちらもままならない代わりに、
私は私の為にいまよく眠ろうとおもう。

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