短編小説『SOS』



俺は人間たちにとても嫌われている


俺が現れると
人間は口々にこう言い出すんだ


「勘弁してくれよ」
「もう本当に嫌だ」
「マジで困るんだけど」


何もそんな言い方しなくてもいいじゃないかと思うけど、そう言われても仕方ないのかもしれない

俺が現れると
怖がってじっと動かなくなる奴もいれば
パニックになり騒ぎ出す奴もいる
そのまま慌てて怪我をしてしまう奴もいる

俺だって別に、人間を怖がらせたいとか、苦しめたいと思ってるわけじゃない
でも仕方ないんだ




かみからの司令だから




「ちょっと人間たち、最近調子乗りすぎだね」
「あぁ、乗りすぎだ。明らかに天狗になってる」
「かみさまにでもなったつもりなのかな」
「ここいらでまた思い出させなきゃじゃない?」
「だる。どうして学習できないんだろ」
「すぐ忘れちゃう生き物だから、人間たち」
「嘘でしょ⁈ こんな大事なこと忘れる? 普通」
「普通じゃないんだよ。狂ってる」
「馬鹿だね」
「馬鹿だ」




「「「とゆうことで、思い出させてあげて」」」



それは早朝だろうが夜中だろうが、お構いなし






俺は世界中、どこにでも顔を出すことができるが、
いつどこに行くのか、それは俺にもわからない


かみたちが言うには、「人間はとても身勝手」とのこと
自分のことばかり考え
今日も海にゴミを捨てている
今日も二酸化炭素を増やし続けている
今日も命を奪っている
100年後、自分たちが生きていないからと
100年後の地球のことなんて考えてやしない、と


きっと100年後には
誰も存在しなくなるんだろうな
俺も、地球も、
当然、人間たちも
でもかみたちは、
どっかで永遠に生き続けるらしい(ずるい)



だから人間たちに
自然の大切さや恐ろしさを
カタチにして伝えること
それが俺の役割


あぁ、かみから次の指令が来てしまった


本当は嫌なんだよな
人間たちの叫び声や泣き声
聞きたくない
やりたくない
だけど、仕方ないんだ
かみには逆らえないし
これが俺の使命らしい
でも、人間たちがもう少し
いろんなものを大事にしてくれたら
こんなにも俺が嫌われることも、
ないのにな



次回は10年前と同じ規模か
また大変なことになるなぁ。
その前にどうか、
かみたちの怒りが治るように
みんな早くこのメッセージに気付いてくれ






----次回の司令----

202×年×月×日
○○大震災

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