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あの日々に告ぐ

21
最近投稿している詩のシリーズをまとめました。20篇の詩と写真で構成されるシリーズです。完結しました。
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(詩)意味のない話

(詩)意味のない話

意味が無いということに

意味が無いのか考える

意味があるということが

意味があるのか分からない

時間のあってない時計

買っただけで読まない本

蹴り飛ばした石ころに

意味があるのか問いかけた

意味が無いということに

意味があると思い込む

意味があるということが

意味がないと嘯いて

一人ぼっちの教室

遠くに沈む夕焼け

バスの来ないバス停に

意味があると信じていた

この話

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(詩)砕けた感情

(詩)砕けた感情

心が砕ける音がした

それは乾いた音だった

ガラスが割れたようなよく響く音だった

その破片を見つめると

無数の私が写っていて

数えきれない感情が見返してきたのだ

私は咄嗟に目を逸らし

その場から逃げ出した

その破片は今も

私の奥底で散らばったまま

いつまでも来ない片付けを

待ち望んでいるのだろう

時が経ち

落ち着いて破片を見返すと

相変わらず私たちが

私のことを見てるけ

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(詩)おうちにかえろう

(詩)おうちにかえろう

午後5時のサイレンが鳴った

よいこはおうちにかえりましょう

悪い大人は街を歩く

そういえば

夜の公園に入ったことがない

気まぐれに足を踏み入れた

それだけで悪いことをしている気分

夜のとばりが降り始め

帰る子供の足音だけが響いている

自販機が暗闇を照らし出す

幼い頃に出た街の

初めてみる光景

高くなった目線に覚える違和感が

月日の経過を突きつける

知っていたはずの公園も

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(詩)常夜灯

(詩)常夜灯

毎日歩いた通学路

常夜灯の色はもう覚えていない

そして永遠に

あの時の色を確かめることは出来ない

全部無機質な

白に変わってしまっていた

(詩)常夜灯2

(詩)常夜灯2

わずかな記憶をたぐり寄せて

こんな色じゃなかったはずと思うだけ

街の明かりは

全てあの日と違うように見える

どこまでが正しくてどこからが間違っているか

それすら、もう解らない

(詩)たとえ闇しか見えなくても

(詩)たとえ闇しか見えなくても

道を闇が覆っている

深く、冷たい闇だ

わずかな常夜灯が淡く照らしているけれど

足元はおぼつかない

躓かないように、転んでしまわないように

慎重に踏み出してゆく

落ち葉の音に怯えながら歩く道のり

でも確かにコンクリートを踏みしめる感触はある

例え闇しか見えなくても

道は確かに続いている

さあ、前へ進め

(詩)どこまで行くの?

(詩)どこまで行くの?

どこかに行けるのだろうか

どこまでも行けそうな気がする

どこにも行けないように見える

どうやってここまで来たのだろう

これからどこへ行くのだろう

行き着く先に何があるのか

ここが終着点なのか

ふと波が押し寄せて

全てをさらっていった

(詩)流れ流されて

(詩)流れ流されて

流れ、流され

波にもまれてここに来た

砂浜に一人

はるか彼方の水平線

孤独なんて今更だ

風が冷たく吹きつけて

隣には誰もいない

寂しさはあるけれど

歌を口ずさみ歩いて行く

随分と遠くに来たものだ

落とし物は数え切れない

後悔ばかり拾ってきた

それでも振り返りはしない

精一杯今を生き抜く

いつか迎える終わりまで

この詩を書くうえで麻枝准作詞作曲「きみの横顔」の影響は計り

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(詩)ある日星が落ちていた

(詩)ある日星が落ちていた

ある日星が落ちていた

流星群からはぐれてしまったのだろうか

ぽつりと一つ落ちていた

星は宇宙にあるべきで

見上げるものであってほしいのに

無造作に横たわっていた

見下ろした星は影に呑まれ

輝きは消え去っていて

砂にまみれて汚れている

それでも

くすんだ星がなぜか綺麗に見えたのだ

たとえ宇宙に戻れなくとも

気高さだけは失わず

大地に在り続ける星の

姿はとても美しかった

(詩)全てが凪いで静寂へ

(詩)全てが凪いで静寂へ

瞬間 全てが止まった気がした

海は凪

潮騒は静まり

鼓動と鼓動の間

一瞬にも満たない

永遠にも感じられる

静寂が訪れる

そんな世界に一人

私だけが立っている

美しき孤独の中

止まった世界と向き合った

浅く息を吸うと

世界は再び動き出し

波の音が鳴り響く

澄んだ空に流れる雲を

いつまでも眺めていた

そんな海辺の昼下がり

(詩)始まらない 終わらない

(詩)始まらない 終わらない

始まらなければ終わらない

終わらなければ始まらない

いつか訪れる終わりと

いつもそこにある始まりと

その間を表現するのは難しい

始まりはいつも唐突で

終点に向かって走り出す

ブレーキなんてものはなく

止まることは許されない

そんな世界に私は在る

終わりはいつもそばにいて

現れたその時は

容赦なんてしてくれない

せめて覚悟は持っておく

終わりが美しくなるように

始まった

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(詩)とまれない とまらない

(詩)とまれない とまらない

とまることはもうできない

とまるつもりは今更ない

ビックバンから加速する

時の流れを追い風に

無我夢中で駆け出した

景色は次々変わってゆく

何もかもを置き去りに

目的地は決めてない

どこまでだって走って行ける

そんな気がしてるから

(詩)曇天を掻く

(詩)曇天を掻く

曇天の空模様

雨が少し降っている

雲へ届きそうに見えたから

手を伸ばしてみた

でも、届くわけはなく

ただ空を掻くだけで

小さな水滴が

頬をつたった

曇り空でも空は遠く

空っぽの手のひら

世界は薄い灰色に包まれている

そろそろ傘を差しておこう

びしょ濡れになるその前に

(詩)あの日が消えてゆく

(詩)あの日が消えてゆく

時の流れが無情なことなんて

昔から知っていたはずなのに

今更になって思い知る

何もかもが消えていき

全てが更地になってゆく

工事現場の隅っこで

思い出が削られていくのを

見つめることしか出来なくて

傷ついた記憶が緩やかに

フィクションへ変わってゆくのを

ただ、感じていた