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【広告展覧会・10の視点】 第九章 ボツ・オブ・ザ・イヤー受賞作品。

クリエイターにとってボツは恥ではない。むしろ勲章だ。
そりゃこれだけ大量に作ってりゃ、箸にも棒にもかからない企画や表現も中にはある。でも、それを考え出したことをまずは誇ろうではないか。他人の制作物にケチばかりつけている割に自分では何も新しいものを生み出せない、そんなエセクリエイターよりも、“新しすぎる” ボツ案を量産できるクリエイターを私は尊敬する。
世には出なかったけれども、アイデアやクォリティに秀でていた価値ある仕事を表彰しよう。名づけて「ボツ・オブ・ザ・イヤー」。授賞式は…、今夜どこかの寂しいバーで。



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化粧品AVONはニューヨーク発の現代的なブランド。同じ会社の中に別ブランドとして誕生したCHERAVONはそれと明確に差別化する必要があった。
そこでパリのイメージに方向を定め、60年代ヌーベルバーグ映画のモノトーンの中に、商品をカラーで浮かび上がらせる手法をとった。中面、4つのモデル写真内に小さくレイアウトした“主人公のつぶやき”には字幕書体が使われている。
※最終的に実現した別案「フレンチポップ編」は第五章でご覧いただけます。



秦千春回顧展「加工用」

「ラインズショット」というのはシワ対策の美容液である。その新発売キャンペーンが入稿直前、急遽、SALEキャンペーンに変更された。当時のスタッフのリカバリーには改めて感謝申し上げたい。「ラインズショット」のために試した表現の数々(上記、12個の小さな画像)は決してムダではなかった(と思いたい…)。
ちなみに、厳正なオーディションを経て選んだモデル(上記、赤いSALE表紙の上。横顔)は、私がこれまでに見てきた中で最も「顔の造形」が美しいモデルであった。私の記憶が正しければ、もしかしたら、ウクライナのかたかもしれない。彼女の無事を心から願う。



ローズ

「契約無期限、ギャラなし、いつでも出演可能、取材・撮影の必要なし、あらゆる表情・コメントが可能」なタレント=オリジナル・キャラクターは、その企業やブランドを広告する際にとても便利な手法である。
そして昨今の状況を考えると、さらにもう一つ、強力な特徴があった。それは「絶対にスキャンダルを起こさない」ということである。



ラグビー

広告やキャンペーンは半年後を見据えて企画が立ち上がることもざらにある。この新製品キャンペーンは、その実施時期となる半年後、まさにラグビーW杯・日本大会が開催されていることを踏まえ、そのムーブメントを利用しようと考えたもの。スポンサー企業ではないので直接「W杯」には言及できないが、ラグビーというスポーツをモチーフにすることで時代とのリンクを図ろうとしたのである。
けれども半年前の段階では、社内の誰もがラグビーW杯の盛り上がりに対しては疑心を抱いており、最後まで賛同は得られなかった。



ボツ。ダメ出し。大幅修正。やり直し。ちゃぶ台返し。etc. クリエイターに限らず、あらゆる職業においてそういうこと、よくありますよね?  よくあってはいけないのですが(非効率的!!)、そういうことが起きない仕組みにしなければいけないのですが(意思決定の明確化!!)、どうしても起きてしまった場合に「いかにリカバリーできるか」も大事なスキルかもしれません。むしろメンタルの問題かな。



最後までお読みいただき、ありがとうございました。(第十章に続く)




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