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初恋の話(※クズ注意)


幼稚園の頃3年間好きな子がいた。
Kくんとしよう。

背は低めで小柄で、かっこいい系というよりはかわいい系の男の子だった。

幼稚園児の私は照れという感情を知らず、毎日Kくんに大好き!と愛を伝えていた。
そのせいか幼稚園のクラス内では公認カップルのような扱いを受けていた。

バレンタインには必ず
「ママ!Kくんにチョコあげたぁい!」
と言い放ち、(可愛すぎ)
絶対に毎年チョコをあげた。

数時間後には好きな人が変わってしまうのが当たり前のような幼稚園生にしては、3年間同じ男の子が好きだったのはだいぶ快挙だ。
今思うと一途の才能がある。

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そんなある日、Kくんのおうちに数人で遊びに行くことになった。
人数ははっきりとは覚えていないが5、6人だったと思う。

みんなでリビングでおやつを食べ、Kくんのおうちにあるおもちゃや絵本で思い思いの遊びをし、楽しんでいた。
わたしももちろん、大好きなKくんのお家で楽しく過ごしていた。

トイレに行った際、ふと隣の部屋が目に入った。
隣の部屋の扉が開いていて、そこにも幾つかおもちゃが置いてあるのが見えた。

隣の部屋は「入っちゃダメ」と言われている部屋というわけではなく何人かが出入りしている部屋だった。
その時はその部屋に誰もいなかったが、おもちゃがあるということで私もなんとなく部屋に入った。

そのおもちゃたちの中に、
今の大人たちに見せたら「あ!懐かしい!」と言われるであろうぬいぐるみが置いてあった。


このぬいぐるみ。
胸にハートがついていて、お顔もとっても可愛らしい。
今でも私はぬいぐるみが好きだし、幼稚園の私はとにかくぬいぐるみ大好きっ子だった。
自分の持っているぬいぐるみには絶対に名前をつけ、「〜ちゃん♡」と話しかけるのがルーティンだったくらいだ。(実は今もそう)

私はそんな愛らしいぬいぐるみをみて

幼稚園児の私はひとつの感情が湧いた











「…憎たらしい」






!?

こんなにも可愛い顔をしているのに?!
と今の私がツッコみたい。
だけどその時の私はもうとにかくそのぬいぐるみがむかついてむかついてしょうがなかったのだ。

その時の苛立ちは、生理前の時の荒れ狂う私を彷彿とさせるものだったと思う。

そして
その謎の苛立ちを抑えつつ、私はとりあえずみんなのいるリビングへ戻った。

みんなは楽しそうに笑って純粋に遊んでいる中、私1人だけがあのぬいぐるみへの憎悪の感情に溢れていた。
私1人だけみんなとは違う感情、という部分で若干孤独感があったのを覚えている。

そしてしばらくして
それぞれのお母さんたちが迎えに来た。

まずはKくんのお母さんが玄関へ向かい、迎えに来たお母さんたちと立ち話を始める。
Kくんのお母さんの
「みんな!お母さん迎えに来たよ〜!」という声と同時に、みんな一斉にわーっと玄関へ駆け寄っていく。

何人かおもちゃに夢中で動かない子もいたが、しばらくしてその子達も玄関の方へ向かっていった。

私は1人、あのぬいぐるみがどうしても忘れられなかった。

あのぬいぐるみへの憎悪の感情をそのまま胸にしまって帰ることなんてできない、

と突発的に感じた私は
みんなの目を盗み、一目散にあのぬいぐるみがいた部屋に走り出した。

ぬいぐるみを前にした私は
どうしよう。このぬいぐるみに何かしてやりたい。と思い、
ヤツに向かい一言





「ばーーーーか!!」




と言い残し、そのまま一目散に部屋を出て何事もなかったかのように玄関へと逃げた。

「ばか」なんてまだ可愛い言葉じゃないかと今なら思うが、
幼稚園の私には「ばか」はこの上ない最大の侮辱言葉だったのだ。

しかしその直後から
「今のをKくんのお母さんに聞かれていたらどうしよう」
と一気に恐怖が襲ってきた。
もしKくんのお母さんにバレて性格の悪い子どもだと思われたらどうしよう。そして私のお母さんにそれを言われたらどうしよう。怒られる。

愛しのKくんに今の姿を見られていたらと思うより先に、やはり保護者バレが怖かったのだろう。


そして帰ってからは
あのぬいぐるみへの罪悪感が急に湧いてきて、
なんであんなにむかついていたんだろう、、ちょっと可哀想だったな、、
なんて思ったものである。

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今思うと幼き頃の私は、Kくんの家にいるぬいぐるみ、つまりKくんに可愛がられているであろうぬいぐるみというだけで憎たらしかったのかもしれない。

……なんとなくただ単純に顔がムカついたような気がしていたけど

でも確かに私は、自分の彼氏が「可愛い」と言うアイドルや女優に嫉妬してしまいがちである。
なんならちょっと嫌いにもなる。
幼稚園の頃から私のソレは始まっていたのかもしれない…。


Kくんのぬいぐるみ…ごめん。
そしてKくんもごめん。
Kくんのお母さんも、ごめん。

今ならわかる
あの結構でかいぬいぐるみを買うのに2〜3千円は確実にかかるということを。
もしかしたらおばあちゃんおじいちゃん親戚からプレゼントされたものかもしれないけど。

Kくんが大切にしていたぬいぐるみ、ということはきっとそのぬいぐるみにも名前があったことだろう。

そのぬいぐるみの名前を知ることはあるのかな。

Kくんとは小学校にあがったタイミングでカップルではなくなったが、
いつか小学校の同窓会でもあれば聞いてみようと思う。


私は今に至るまで何個もぬいぐるみを持っていて、今もぬいぐるみが家にあるが、
絶対にぬいぐるみに暴言を吐かない。
ふざけて殴ることも絶対にしない。
その行動の背景には、あのKくんのぬいぐるみへの罪悪感があるのかもしれない。

………

彼氏の好きな女性芸能人も、好きになれる日がきますように


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