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大学生自転車日本一周旅を振り返って⑩:辛いことは一人で、楽しいことはみんなで

 以前自転車で日本一周をした時の振り返りシリーズ。今回は、辛いことは一人で乗り越えざるを得ないが、楽しいことは一人よりもみんなで共有した方がいい、ということについて書いていく。

 目の前に現れた高い壁を越えるとき、他力本願では成功しないと思う。もし先に進んでいる人が手を差し伸べてくれたとしても、その人が引き上げ切ることは不可能に近く、負荷は軽くなるものの最後は自力だろう。そう、どれだけ仲間が多くても、どれだけ多くの友達と困難に向き合っていても、どれだけ多くの人が応援をしてくれても、辛いことは一人で乗り越えなければならない。そして、その時には必ずと言っていいほど自分の心との闘いを伴う。この瞬間に人は成長をするのだろう。自分の甘さに目をつむり続けていたら成長はない。自分と向き合って初めて壁を乗り越えられるようになる。自分を歩かせることが出来るのは、自分しかいない。
 個人的な意見だが、辛いことに関しては一人で向き合っても問題はないと思う。むしろ、一人で向き合った方が成長は大きいかもしれない。誰にも助けてもらえない分心との闘いは過酷なものになるからだ。ただ、周りの人の支えが成功に多大な影響を与えるし、それなしでは達成できないのであれば本末転倒になってしまうから、これは考え物でもある。人の助けは決して無駄というわけではないし、人に助けを求める力もこの世の中を生きていくうえでは重要であると思う。だから、自分の限界に近い困難は一人で乗り越えたほうが成長は大きい、と言い換えた方がいいかもしれない。ただ、どんな困難であれ最後はどうせ一人なんだから、どうせ辛いならより大きな成長に懸けてみるのもいいかもしれない。
 この自転車日本一周旅でも、辛い局面は多かった。何度も、一緒に自転車を漕いでくれる人がいればなと思った。だが、そんな苦しい場面では周りに友達がいたところで苦しいことには変わりがない。むしろ、一言も言葉を交わさなくなった結果、より雰囲気が暗くなってしまうかもしれない。一年ほど前に120kmを友達と徹夜で歩いたことがあったが、そのしんどさは思い出したくないほどだった。口数も減ってしまったし、決してこの辛さから目を背けることはできなかった。辛さを人数分に分割することなんてできず、結局は一人で歩くのと変わらないであろう辛さを背負わなければならない。逃げたいと思っても、一人だけペースが遅れたとしても、誰も代わりに歩いてはくれない。そして、自分が頑張らない限り報われない。友達の頑張りが燃料となることはあっても、それを燃やしてエネルギーに変えるのは自分なのだ。

 一方、楽しい瞬間は、一人では物足りない。一人でも100%楽しめるとしたら、仲間とだったら120%になる。もちろん、周りに誰かがいた方が絶対に良いと言い切れはしないとは思う。なぜなら100%の共有は不可能であるから。みんなの感情の最大公約数でしか分かり合うことができない。だけど、それでも一人で楽しむよりはいいと思う。
 一人だと、その瞬間がいくら良くても、どうも盛り上がりに欠ける。もちろんテンションは上がるんだけど、なんか物足りない。世の中にパーティーが好きだからと言って一人でパーティーを開催するやつなんていないように(性格の問題もあるかもしれないけど)、やっぱり楽しい瞬間というのは誰かと共有したいし、共有できたらその楽しさは何倍にも膨れ上がる。
 もし、あなたが、友達と一緒にいる時間より一人でいる時間の方が好き、というのであれば、この話は全く参考にならないのかもしれない。だが、完全に一人で生きてきた人はいないだろうし、全く友達がいない人もいないと思う。それはつまり、一人よりも誰かと一緒にいる時間の方が幸せに感じることがある、ということだと思う。その人と共有できた楽しい瞬間は、これまで乗り越えてきた辛さを覆い隠してくれるはず。

 辛い時は、歯を食いしばって意地でも乗り越えてやれ。助けなんて求めてもしょうがない。結局1番辛い時は自力なのだから。
 そして、その辛い時間を乗り越えた先には、必ず楽しい時間が待っている。目一杯楽しんでやろう。辛さを乗り越えた仲間と分かち合うんだ。この瞬間の幸せは、何にも代えることはできない。
 辛い時間は、楽しい時間のための助走だ。

 この自転車旅では、辛い時は一人だから多くの成長をしたと思うが、楽しい時も一人だったから、ずっと寂しさを抱えていた。出発してから2週間半ほどは気を置ける人と全く話すことが出来ず、神戸で高校の友達と久しぶりに再会して、人と話すことのできる喜び・ありがたみを噛みしめていた。その後もまた一人になっては、きれいな景色を見たり、一生に一度きりと思われる経験をした時に、周りに誰かいればなとずっと考えていた。辛いことは、目標があれば一人で乗り越えることが出来る。辛さは努力次第でごまかせる。でも、満たされない心は、努力したって満たされることはない。やっぱり楽しい瞬間は誰かと一緒にいたい。そう思い続けながら、48日間辛さと戦い続けた日々は、自分の宝物であると思う。次は、楽しい瞬間だけでもみんなと分かち合いたい。独り占めするにはもったいないものが、この世には溢れている。
 喜びを共有できる環境に感謝して。喜びを分かち合える仲間の存在に感謝して。一人で成長することはできるかもしれないが、一人で生きていくことはできない。ヒトの宿命だ。

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