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【新年度】子どもにとって変化は負担  新しいハードルに注意しよう 3年生の事例

進学・進級は、子どもたちには大きな変化。今までとは違う何かの連続。ドキドキワクワクがある一方、戸惑うことも多い。
「なんで?」「どうすればいいの?」「違った?」
予定外、予想外な変化は、不安やイライラの元。何度も続けば大きな負担。誰だって疲れる。集中できなくなる。クラスの雰囲気が悪くなる。
だから教師は、新年度スタートに気を配る。

その中で、気をつけて欲しいのが3年生。
2年間の学校生活で、授業、給食、清掃、日直や係り活動など日々の生活が一通りできるようになった。学習用具の準備なども自分でできるようになった。全てが初めての1年生とは違う。
また、4月早々から、委員会や登校班・たてわり班、学校行事の係り活動など責任を負う高学年とも違う。
全学年を見渡すと、変化が少なく、教師が新たに指導することは少ない印象。

でも3年生にも、新しいハードル(変化)がある。それを見落とすと負担をかけ続けることになる。子どもは8歳児、集中できる時間、我慢できる時間は短い。ハードルに何度も引っかかればパニックになる。
そんなことにならぬよう、3年生のハードルを確認しよう。

【ハードル①】3年生以降、算数に苦手意識をもつ子が徐々に増える

理由は簡単。算数の学習内容は積み重ねでできている。
例えば2年生の九九で8×7=56を覚えていない子には、3年生のわり算で56÷7は解けない。七の段を七一から暗唱してやっと七八にたどり着くようでは1問解くのに時間を要する。
このように、これまでの学習につまずきがあると、そこで引っかかる。だから、算数は学年が上がるほど苦手意識をもつ子が増える。
算数は、既習内容が身についているのかを確認しながら進めよう。
九九で遅れていると気づいたら、目立たぬよう筆箱に入るくらいの小さな九九表を持たせてもいい。九九表で復習しながら、わり算を学習させてもいい。「九九ができないから、わり算はできない」のではなく「九九ができれば、わり算は簡単」と思える支援をしよう。
そのためにも「何を間違えたか」が子ども自身に分かるようなノート作りをしよう。自分のミスに気づいて直せるようにしよう。

大切なのは、子どもが頑張り続けられるようにすること。「時間はかかるけど、間違えることもあるけど、やり方は分かってるんだ」そんな自信をもてるようにすること。(注1)

【ハードル②】国語で、毛筆指導が始まる

いきなり上手に書けるワケがない。そこで焦る教師はいない。
ただ、この毛筆指導、地味に保護者からの苦情が多い。
「時間割表にない(いつやるのか分からない)」
「洋服を墨で汚した」
「なぜ、家で筆を洗うの?」
保護者には事前に以下を説明しておこう。
・毛筆指導は不定期実施になる。授業する日は連絡帳またはプリントで事前に知らせる。(学校に予備が無いことも多く、道具忘れは子どもの授業参加に支障が起きる。事前の連絡には気をつけよう。)
・洋服を汚すことがあるので、黒っぽい服・汚れてもいい服の着用またはスモックの利用をお願いする。
・学校で筆洗いをしていると「書く」時間が無くなるので、学校では簡単な筆の墨落としだけ行う。筆洗いを家庭にお願いする。(注2)

保護者への連絡以外にも、道具の置き方、作品を一時収納する紙ばさみの準備、時間配分など、指導以前に教師が考えておくことは多い。ここで失敗すると、汚れた筆が机や床に転がったり、「清書(提出用作品)が破けちゃった」「もう時間がない」と騒いだりで、頭を抱える。次の時間が給食だったら、これ以上の最悪は無い。

【ハードル③】生活科がなくなり、理科・社会が始まる

理科・社会は、生活科よりも抽象度が上がる。実験や観察、調査活動で分かったことを図や記号、グラフを使って表す方法を学ぶ。
最初に難しいなと思わせたら、理科嫌い、社会嫌いを作る。
理科・社会のノート指導は一気に進めず、少しずつでいい。文字は少なめ、イラスト多め。ノートの使い方(日付や課題など、どこに何を書くか)から始めよう。

【ハードル④】音楽でリコーダー指導が始まる

これまでの鍵盤ハーモニカに、リコーダー(縦笛)の指導が加わる。
厄介なのは、指で押さえるリコーダーの穴が、演奏する子ども自身から見えないこと。
これ、手指操作が苦手(不器用)な子には辛い。見えないから、どこを押さえているのか自分でも分からない。また、指に思うように力が入らず(入り過ぎて)笛を支えるのに精一杯。当然、曲に合わせて運指ができない。
そういう子は、タンギング(口内で舌を操作すること)も苦手なことが多い。口の中は見えないから、真似するにも真似できない。必死に吹いているとヨダレが落ちる。

困難の程度はそれぞれだけど、30人いれば3~5人はいる。教師はそんな子どもの苦労に気づいて、早めに手を打とう。指導の工夫はいろいろある。(注3)

【ハードル⑤】外国語活動が始まる

外国語って言っても、ここで言う外国語はたいてい英語。読み書きは少なくて主な活動は音声言語(読み書きは、5年生以降)。
私が体験した英語活動は、絵や数カード、または歌や動作を使った楽しいゲーム活動が多かった。(担任のみ、または講師のみで指導する学校もあるけれど、私が経験したのは外国人講師とのTT授業。)
大勢の子どもの中には、ゲームのルール理解が苦手、歌や動作を使った活動が苦手、大きな音が苦手などの子もいる。慣れない外国人講師に戸惑う子もいる。
そんな子どもたちの対応を講師に任せるのは厳しい。上記のような困難が予想される子には担任ができる限りの配慮をしよう。

【ハードル⑥】専科教師の授業が始まる

図工や音楽(時に、英語、算数少人数)など、担任以外の授業を受けるようになるのが3年生だ。教室を離れ、図工室・音楽室での授業を受ける。
先生が違う、場所が違う。それを楽しみにする子が多い一方、それを不安に思う、慣れるまで時間がかかる子もいる。それ以外にも、リコーダー指導のように、何かしらの困難が予想される場合がある。
そんな時は、専科教師と連絡を取り、慣れるまで担任が授業に付き添う(または授業内容を予告する、授業後に学級でフォローする)などの対応を考える。(注4)

【ハードル⑦】教科数が増える・6時間目が増える

生活科が無くなり、新しく理科・社会・英語活動が始まる。授業時間も増えて6時間目まで勉強する日が増える。
給食を食べて1時間だけ頑張ればいいのと2時間頑張るのとでは、ずいぶん違う。3年生になったばかりは、大半の子どもたちは6時間目には集中が切れる。集中力は体力。これは体力の問題。
そうでなくても慣れないことの連続、子どもだって疲れる。体力切れの子どもに「ちゃんと」「しっかり」を求めても無理! それ、学級崩壊への道!(詳しくは『悪魔払い 2つの極意』)

中学年はエネルギーに満ち溢れた「やりたいこと一杯」の時期。これを「やってらんないよ!」という反発のエネルギーにしたら残念。
せっかくの新年度スタート、子どもたちが慣れるまでは子どもの様子を見ながら楽しく助走期間と考えよう。フルスピードにするのは、その後だ。

以上、小学3年生、春のスタートの課題。

でもね、4月が大変なのは全学年共通。
学年が上がるごとにハードルも上がるから、スタートはみんな大変。
どの学年にも、それぞれの「初めて」がある。ハードルがある。
年度始め、教師はそのハードルを確認しよう。
そして、それを乗り越えるための学習パターンを作ろう。
(パターンの作り方は『学級崩壊を防ぐ《活動パターン》を作ろう』)

さぁ、始まったばかり!
前を向いて行きましょう!


(注1)かけ算の筆算も同様にハードル続き。1問解くのに何度もかけ算をして、繰り上がりの足し算をする。そのどこかで間違えればバツになる。2年生までより1問解くための労力数倍!
別件だけど、道具の問題にも注意したい。算数では2年生以降、三角定規、コンパス、分度器など、道具の使用が次第に増える。この時、道具がつかみにくい(操作しにくい)、目盛りが読みにくいなどの問題が生じる。理由は、道具の問題、子どもの手指操作の問題(不器用)、目の不自由(ブレて見える)がある。いずれにしても、子どもが使いやすい道具の選択、使いやすい操作方法の工夫が必要。

(注2)筆洗いの手順は授業で教えるだけでなく、予め保護者にもプリントで伝える。実際問題として、毛筆指導の度に水回りが墨で黒くなるのは誰だって御免だ。予めの連絡があれば、初回は保護者が手順を確認しながら一緒に洗うなど出来る。

(注3)学校規模によっては、3年生以上は音楽専科の教師が指導する。もし学校規模が大きく担任が音楽を指導する場合は、音楽専科の先生に相談してノウハウを聞こう。可能ならリコーダー指導の初めの1時間だけでも応援に入ってもらうといい。
以下、簡単に指導例を紹介。
最初は吹かない。口をすぼめてタンギング遊び。次に、吹き口(先っぽ部分)だけを使って、タンギングで遊ぶ。その後、次第に指を使う。使う指を増やす(または減らす)ことで、少しずつ指の感覚を覚えさせるのがコツ。指使いは、高音のドから始めて増やしていく方法と、ソから始めて減らしていく方法がある。

(注4)授業についていけない不安で保健室に行く子どもがいる。養護教諭に聞いた話では、算数、音楽、体育が多い。どれも「できる」「できない」が外からも見えやすい教科だ。そんな子どもたちは、保健室に逃げ出したいくらい辛い思いをしてるんだと思う。保健室に行くのがいい・悪いではなく、そんな子どもたちを作らないような授業の工夫、指導の工夫をしたい。もしもの時は、養護教諭と連携して、子どもの状態を把握しよう。養護教諭は、子どもの味方であり担任の味方だ。専科教師と同様、養護教諭との連携も大切に。

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