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生涯でたったひとつの愛だった

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内省にまみれた散文集。
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#日記

無防備な恐怖、不安とひとつ

無防備な恐怖、不安とひとつ

 私はひとつになりたがる。
 どこででもぴったりくっついて、身も心もひとつの存在でありたい、あろうとする。

 でも彼はそうではなくて、ふたつであろうとする。
 ふたつで、ふたつだから愛せるようにいようとする。

 それは日常生活のなかでも顕著で、外にいる時いつも手を繋いだり彼のどこかしらに触れていたい私と、あまりそうしたがらない彼と。
 べたべたに甘えたい気持ちでそうしているというより、私は彼と

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孤独とさみしさとデリバリー

孤独とさみしさとデリバリー

 ここ数日、彼は所用でよく家を開けていて、泊まりがけで出ている日も多くて。

 それはどうしようもない理由でまして浮気だとか、そういった類ではない事を私もきちんと知っているのだけれど、もちろん私はさみしくて孤独に溺れかけている。

 所用の方が私より優先すべき事柄なのは理解しているけれど、理解しているからと言ってすべて納得ずくで待っていられる訳ではないのだ。

 こういう時いつも思うけれど、言葉を

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もし明日死んでしまったとしても

もし明日死んでしまったとしても

 朝起きた時はなんとか無事でいられるのに、昼になり陽が傾いて夕方になってやがて太陽はおやすみして夜になって、その頃にはもう自分とさよならしたくなってくる。

 私にとっての一日は死へ向かう一日だ。毎日毎日、飽きずに変わらずに。

 夜を越えてやがて陽が昇ると、ようやくもう少しここにいてもいいかなと思える。

 死ぬ、ということは怖いけれど、ここではないどこかに確実にいけるという面では、とても魅力的

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ひとりでいること、ふたりだけどひとりを選ぶこと

ひとりでいること、ふたりだけどひとりを選ぶこと

 孤独でいることと、一人でいること

 ふたりでいるけど、ひとりでいること

 ふたりだけど、ひとりを選ぶこと

 全部違うな、と思う。
 自分の為にお洒落をして出掛ける瞬間の幸福と、帰ってくるあの人の為においしいごはんを作って待っていることの幸福は、似ているようでまったく違う。

 私は一人でいた頃の私も好きだった。
 自分の為にアルバイトをして、自分の為に着飾って、自分の為に誰かを繋ぎ止めてい

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飛び方はあなたが教えてくれた

飛び方はあなたが教えてくれた

 「あなたじゃなきゃいけないの」

 ほんとうの意味で、この人ではいけないなんて事はあるのだろうか。

 どれだけ激しく愛していたとしても、もうこれ以上人を愛するなんてできないと思っていたとしても、さよならを告げて泣き暮れたとしても、でも代わりは現れるものだ、大体の場合。

 身をもってそれを知っていたとしても、なんとなく知っているつもりになっていたとしても、それは静かな事実としてひっそり横たわっ

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特別を信じ追い求めた僕らへ

特別を信じ追い求めた僕らへ

 12歳頃から18歳の頃まで、私はただ無力で、それから無敵だった。
 いや、もっと前、物心つく頃からだったような気もするし、今もそうなのかもしれない。

 私は小学校に上がった頃から、学校には余り寄り付かない子供だった。
 担任の先生が家まで車で迎えに来てくれたり、昼休みの時間に母が学校まで送ってくれたり。先生の、車高の低い紺の車をよく覚えている。
 みんなが当たり前に通う学校という場所に、クラス

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