クリスマス・イヴ[3-1]
クリスマスなんて嫌いだ。
子どもたちが幼かった頃は、毎年家族でクリスマスパーティーをしていたけど、2人とも大学生にもなれば、もうクリスマスを家で過ごすことはない。
そうなると、旦那と2人きりになるが、今更クリスマスっていったって、何をするわけでもないから、結局24日も25日もいつもと変わらないんだ。
街で若い子たちがキャッキャしてるのを見ると、寒さも相まって、自分がとても惨めに思えてくるから、もう何年もこの時期が来ないといいのにと思っている。
「あ、ママ、明日みんなでクリパして、たぶんそのままオールだから帰ってこない。」
「はいはい、あんまりハメはずさないようにね。あ、あんたは?明日と明後日。」
と慎二にも尋ねると
「あー、俺も出かける。」
との声が、やっぱり今年もパパと2人なのね。
「ママたち今年もなんもしないの?」
「え?うん、特に予定ないけど。どうせパパいつもみたいに帰り遅いし。」
「えー?美香もお兄ちゃんもいないんだし、せっかくなんだから久しぶりにデートとかしたらいいのに。」
「いいよそんなの。」
ーガチャ
「ただいまー」
絶妙なタイミングで帰って来るんだから。
「あ、パパおかえりー。ねぇ、パパ明日も帰り遅いの?」
「いや、明日は休みになった。」
「えっ!?」
思わず声が漏れてしまった。
「そんなに驚くことないだろ。明日は人手が足りてるからいいって。その代わり、大晦日に出勤になった。」
「へー、じゃあ珍しく今年は親父もクリスマス感を味わえるのか。」
「そうだな。クリスマスイブに仕事がないなんて、何年ぶりだ?いや、何十年ぶりかもしれないな。」
「ちょうどいいじゃん!さっきママにも言ってたんだけど、パパさ、明日ママとデート行ってきなよ!美香もお兄ちゃんも友達と遊ぶから家にいないし、毎年プレゼントだってあげてないんでしょ?たまには相手してあげないと、ママに愛想つかされちゃうよ。」
「もう、美香いいって」
本当に、今更2人きりになったらどうしていいか分かんないんだから。デートするくらいなら、いつも通りのクリスマスっぽくないクリスマスでいいんだよ。パパだってそんな、デートなんか行かないだろう。
「あー、確かに、それもありかもな。」
嘘でしょ。
付き合ってた頃だって、なんだかんだ言って、クリスマスにデートしたのなんか数えるくらいなのに・・・明日本当に2人で出かけるの?
「ほら!ママ、行ってきなよ!」
「おう、たまにはいいんじゃない?行ってこいよ。」
慎二まで・・・。
こうなるとなんか、自分が拒否し続けてることが変なのかと思えてきて、
「わかったわかった、じゃあどっか行くから!もうこの話は終わり!」
と、気恥ずかしくて、切り上げたけど・・・
そんなこんなで、今年はいつもとは一味違うクリスマスイブになりそうだ。
よろしかったら応援お願いします!いただいたサポートはより良いnoteが書けるように勉強・体験費にあてさせていただきます。