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★東京の地下鉄は川をどのように越えているか?:④隅田川・永代橋の東西線とその近くを探訪する

このテーマですが、実は昨年東京の舟遊びのガイドを担当させてもらうことになり、何をテーマに舟遊びをする?と考えた際に思いついたテーマです。キッカケは、下のリンクの①にあるように、全く別件で東京メトロ銀座線の昔の姿を調べた際に見つけた、ネットで公開されている、「東京地下鐡道史 坤」を眺めていたら、銀座線は日本橋の下を通っておらず、日本橋を避けて通っている、ということを知ったのがきっかけです。

同じ文献には、②で紹介した、神田川を越える銀座線(万世橋駅付近)のことも記されていて、それも含めると、これはすごく深い内容になるなと確信したのでした。

そんな感じで、色々と調べていたのですが、東京メトロ各線の建設史は、「メトロアーカイブアルバム」が公開されていて、これも素晴らしいバイブルにできる内容で、その他の鉄道も、図書館や何人かの愛好家の皆さんのサイトなどを参考にして、調べていくと、河川の下では、「開削工法」「潜函工法」「シールド工法」「凍結工法」「沈埋工法」など、実に様々な工法が採用されていることを紹介したのが、③の内容です。

③については、noteのお題企画、「#私の学び直し」で受賞させていただくことができました。そんな感じで取り組んだのが、昨年10月に実施した、「舟遊びみづは」さんの舟での舟遊びガイドでした。そちらのことを紹介した記事が、以下のものです。

それで、今回はこの舟遊びを、2024年10月に改めて開催することになりました。それで、今回は前回訪れなかった、「永代橋」に立ち寄ることにしたので、その部分に行ったのが、今回の探索ということです。(すごい長い前置きでした(笑))。

■探索①:茅場橋を避けて通る日比谷線

永代橋には、この駅からアクセスします。

日比谷線と東西線が交わる、茅場町駅です。
地上は、永代通り(東西線)と新大橋通り(日比谷線)が交差します。

少し寄り道して、日比谷線が日本橋川を渡る、茅場橋に行ってみます。

日本橋川を渡る、茅場橋。

ここも、「メトロアーカイブアルバム」によると、茅場橋を避けて潜函(ケーソン工法で施工されたとか。

潜函工法で茅場橋を避ける日比谷線。

その痕跡を探してみたら・・やはり、ありました!

茅場橋上流にある、埋設標。
躯体中心がここにあることを示しています。

面白いのは、ここなのです。下記は、この付近のGoogleマップなのですが・・、茅場橋も、永代橋も、地下鉄の「黒い線」は、「橋の真下」を通っています。本当は「橋を避けて」通しているのに・・。ということで、地図も結構デフォルメされていることが多いです。

地下鉄の走る位置は若干デフォルメされている地図。

そういいながら、地理院の地図は、きちんと「橋を避ける」線形で記載されています。

橋を避けてカーブする日比谷線。

■探索②:霊岸橋の真下に作られた東西線

次は、東西線沿いに永代橋を目指して歩きますが、その直前にあるのが、亀島川に架かる、霊岸橋ですが・・。こちらは、国土地理院の地形図で見ると・・、

おや、橋の真ん中に地下鉄が通っていますね!!

ここの工事は、メトロアーカイブアルバムの、東西線建設史に記録されていました。ここは、亀島川を締め切り、開削工法で施工されたのですが、その際、霊岸橋の構造物を仮受杭で仮支持させながら、直下を掘削する工法が採用されました。橋脚と橋脚の間は、「イコス工法」という、当時最先端の地中連続壁工法が採用され、恐らくそのコンクリートの壁基礎で、橋の荷重も一部支えているのでしょうね。橋台の下は、トレンチ工法を用いて、小さなトンネルを掘って地下に躯体を作りました。

亀島川を締め切って開削工法で施工した平面図。
橋の真ん中の地下に鉄道線路を施工しています。
霊岸橋です。
亀島川の水門。耐震改修工事中です。

■番外編:永代橋の手前にある、豊海橋。

さあ、永代橋を目指します。今回のメインイベントですが、その前に・・、

ちょっと寄り道。永代橋の少し上流で
隅田川に合流する、日本橋川に架かる、豊海橋。
土木学会選奨土木遺産に認定されています。
フィーレンディール橋という、珍しい構造形式です。
豊海橋から見た、永代橋。舟遊びでも通るルートです。

■探索③:永代橋のそばを通る、東西線

さて、永代橋を歩きましょう。東西線は少し南側を潜函工法で通過しているようです。

永代橋の南側を横断する潜函。
といわけで、このあたりが、その永代橋南側、ですね。
この地には、「船員教育発祥の地」の石碑が。
今の東京海洋大学の起源は、このあたりにあったようです。
東西線はこの真下に走っているはずです。

当時の貴重な写真が、土木学会のデジタルアーカイブスにありました。

潜函工法で建設されている、東西線の躯体。

永代橋は、関東大震災で被災し、その後復興事業で架橋された橋です。昔の橋の惨状も、土木学会のアーカイブスにありました。

震災で被災した、永代橋。

この古い橋が、実は今の永代橋の少し下流にあったそうです。ということは、東西線の施工箇所には、古い橋の残骸が出てくる、ということでした。そんなわけで、東西線の潜函工法での施工は、古い橋の基礎などを取り壊す工事を行いながらの難工事、だったそうです。

さて、埋設標、ありますかね??と思ったら・・、
何と、植え込みの中をガサゴソすると・・、
出てきました!!!
永代橋を渡ります。かつては都電が走っていました。
今は廃止され、5車線の「中央線」が可変する橋です。
反対、左岸の埋設標は・・、
木陰に埋もれてひっそりしていました。
こちらはきっちり読めます。
昭和40年に完成しました。
永代橋の左岸にある、換気塔が、東西線の構造物です。

■探索④:越中島駅に向かう、京葉線シールド

隅田川は、永代橋の南側で、2方向に枝分かれします。左は、晴海運河ですが。その晴海運河側にあるのが、越中島です。

京葉線のトンネルは、この枝分かれする少し手前を、シールド工法によって横断しているのです。

タワマンの手前で左右に分かれる隅田川。
左が晴海運河、右が隅田川です。
満潮が近いのでしょうか。護岸に少し水が浸水しています。
大横川を渡ります。
このあたりの真下を、京葉線が通過しているようですが、
埋設標など、目印はわかりませんでした。

後で見たこのサイトで、埋設標がこの付近の草の中にあることを教えてもらいました。冬場にでも再訪したいなあと思います。

■おまけ・・みづはさんの舟に遭遇

そんな感じで、越中島付近まで歩いていたら、なんとなんと・・、

10月にお世話になる、「舟あそびみづは」さんの舟に遭遇!
夕方の日本橋クルーズに向かう途中の一コマ、だったようです。

■探索⑤:半蔵門線のシールドトンネル

最後に、半蔵門線のシールドトンネルを探しに行きました。

永代橋の下を横断します。真ん中の支承は、耐震補強されたものだそうです。
永代橋を、こんな角度で歩いていきます。
見えてきたのが、隅田川大橋。2層構造の橋です。
Daiwaリバーゲートというビル。
このビルと隅田川大橋の間に、半蔵門線が走っています。
埋設標を探しましたが、見つけられずでしたが・・、
この護岸の裏側に発見!!
隅田川大橋を渡ります。
上層の高速道路は、複雑なことで有名な、
箱崎JCTにつながっています。
隅田川大橋の橋名板。
このあたりに半蔵門線が走っている、と思ったら・・、
隅田川テラス拡張記念時計台の説明板。
地下鉄工事の際に護岸改造工事を施した際に拡張された記念だそうです。
よほど地元にとっては嬉しい出来事だったのでしょうね。

■終わりに

舟遊びの下見で訪れた、永代橋周辺。舟からは見ることのできない、地上部分の隠れた探索スポットを歩いてきました。橋が主役でない、地下鉄が主役という、とてもマニアックな舟遊び。10月に開催予定ですので、また楽しみたいと思います。

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