ぬくもりだらけの江戸前ファストフード
ーあたたかいお店に行くとなぜか「おいしかったです」が言えるー
休日のお昼ごはんに淡路町のお蕎麦屋さん「神田まつや」へ。
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初めに言っておくと、私はそばに詳しくない。
「大人になったらうどんよりもそばが好きになる」と聞いたときも、「ずっとうどんを好きでいたいからずっと子どものままでもいいや」と思っていたし。
どんなそばが「おいしいそば」なのかのルールがよくわかっていなかったということもあって、なかなか手を伸ばせなかったそば。
そんな私に2年に一度訪れるかどうかというのが、この「そば食べたい期」。
満を辞して行ってきた。
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雨の日だった。
11時の開店とほぼ同時に行ったのに、店内はすでに7割くらいの席が埋まっていた。
店頭で待ち構えていたおばさまがたの「いらっしゃ〜い」という声に続くのは、店内のおばさまがた(大勢)の「いらっしゃ〜い」というやわらかいハーモニー。
席に座ってお品書きを眺める。
「もりそば」も「かけそば」も「ざるそば」も何が違うのかわからないけどとにかく冷たいおそばが食べたかった私は、リスク回避のために「ごまそば」を頼んだ。
(これならあったかくはないだろう、という予感。)
注文して3分くらいで出てきた。
さすが、江戸時代からのファストフードだけあるなあ。
イメージ通り。
(昔京都で食べて感動したごまだれうどんのおいしさを思い出したくて頼んだ。)
ひとくち食べるとごまのまろやかさが溢れ出す。
もはやまろやかを通り越してまろまろしていた。
そしておそばが大ビンゴだった。
私はうどんが好きなことからもお察しの通り、コシがあるものが好きなのだが、ここのおそばは歯ざわりとのどごしが最高なだけでなく、コシもあって食感まで最高だった。
キュッと引き締まったおそば。
おそばはたまにしか食べないけど、毎回このおそばに出会えるならもっと食べたいなと思う。
そして早食いしているつもりはなくてもすぐに完食してしまい、最後に蕎麦湯で一息ついた。
(「蕎麦湯です」と言って渡されたものの、どうすればいいのかあんまりわかっておらず、とりあえずつけ汁に入れて飲んでみた。)
あったかくて落ち着く。
ここまで含めて江戸前のファストフードなのか。
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ガラス張りのそば作りスペースでは、職人さんがまんまるの生地をあっという間に薄っぺらいものに変身させていた。
もっと見ていたかったが、お客さんがひっきりなしに入ってきていたのでこの辺で、と思って席を立つ。
お会計をしてくださったおねえさんに「おいしかったです」と伝えると、「1番嬉しいお言葉です。」と笑顔で言ってくださって心が温まった。
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私は普段お店の人に「ごちそうさまでした」以外のひとことを言えないタイプの人間なのだが、このときは萎縮することなくスルッと口に出せた。
なんでだったんだろう。
お店の方がゆったりと構えてくださっていたから?
あったかい雰囲気だったから?
いろいろあるんだろうな。
でもお店の方のおかげだ。
とにかく気持ちを言葉にして届けられたことに幸せを感じたお昼だった。
ちょうど最近見終わったドラマ「椿の花咲く頃」でも主人公が言っていた。
「自分の気持ちを言葉にしない人は多いけど、僕は何ももったいぶることではないと思うんです」
そうなんだよなあ。
もっと伝えていきたいね。
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