鈴木みのり

文章を書いてお金をもらえるようになって8年経ちましたが

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最近の記事

自尊心を獲得しようと規範や言葉と格闘するすべての人たちへ

* この記事は、2019年に韓国のメルマガ「アリババと30人のチングチング(친구친구)」連載で9月に配信されたものを、少し加筆修正した記事です。 この2年のあいだ、4月末頃に行われる東京レインボープライドのパレードで歩いた。「ハッピープラーイド!」と笑顔でハイタッチができるものと信じている人たちに対して、「自分は性的マイノリティに理解がある」と信じている人たちに対して、わたしは何度も「ハッピーじゃなくてもプライド!」と返した。日本において、そうした人たちの多くが口にする「L

    • Black Lives Matterとトランスジェンダーについて

      * 51年前の6月28日は、ニューヨークのストーンウォール・インというバーに警察が踏み込み捜査に入り、それまで不当に扱われてきた性的マイノリティ、特に非白人、貧しい階層の人々を中心に抗議活動に発展したきっかけの「ストーンウォールの蜂起」が、50年前には現在のプライド・パレードの源泉となった行進が始まった日です。 その日に向けて、2020年6月24日に公開された以下の記事から始まる、5つの記事で構成するBlack Trans Lives Matter(黒人トランスジェンダーの命

      • 20200521

        ひどいことが多すぎて日記を書ける心境じゃない。 ほとんどすべての人にとって(経済的にも、予測のつかない理由による物理的な死という意味でも)危機的な状況において、これまで日常的に差別されたり、不当な社会的処遇を続けられてきた人たちがさらに追い込まれるだろうと予想していたけど、思った以上にひどい。 自分ひとりのことを考えれば、生き延びられる予感はしているけれど、自分さえ良ければいいと、選別される命や保障対象に優先順位をつけられる政治や過酷な立場に置かれてるもの同士が居場所を削り合

        • 202005001-07のあいだで

          自転車に乗って出かけた。 一度は、隣の隣の駅の、さらに北に行ったあたりの花屋で、切り花をいくつか買った。緑の小さいバラと、カーネーションを2色と、ユーカリ。ユーカリはドライのものがすでに部屋にあって、2年くらい前にトシエさんのワークショップのとき作った花束のうち、花びらや花粉らしきものが巻き散りやすいものを除いたら、残ったのがそれだった。そのほかは、多肉植物など観葉植物をいくつか鉢で買い始めて以来、ほぼ切り花は買わなくなっていた。 そのお店では、マスクをしていたわたしに店主

        自尊心を獲得しようと規範や言葉と格闘するすべての人たちへ

          20200429-30

          『チオベンの弁当本』に載っている千織さんのオリジナル調味料の海老醬を作ってみようと買い物に行った。1軒目のスーパーで、ボイルホタテを探せど探せど見つからないので冷凍ホタテを買う。 2軒目のスーパーにあった。 舞台芸術界のセクハラなどハラスメント勉強会の、相談窓口リストを作成するグループのオンラインミーティングが始まる15分前で、冒頭は聞くオンリーになるかもとメールし、急いで帰宅。 zoomを立ち上げてから、買ってきたもののうち海老醬の材料を袋から出して、それ以外を冷蔵庫に入れ

          20200428

          その前の日は、頭痛がひどくてお茶を残した。ヨギティとpukkaの、ミントとリコリスの、を混ぜたのを。ベッドの中でずっと喉の奥からにんにくと酒粕の香りが登ってきた。 去年、ベジでカルボナーラっぽいもの作れないかと思って、調べたら酒粕と白味噌があればできるというレシピを見つけたので、反射的に買って、一度試したまま冷蔵庫のなかに放置されていた酒粕だった。 それで、運動ができなかったので、そのぶん歩くか自転車に乗ろうと思ってたけど、いつの間にか時間が経ってしまった。雨がいかにも降り

          20200426

          2週間前にオンラインで注文したFenty Beautyのメイクアップが色々と届いた。 箱に書かれている説明文の冒頭で「ELECTRIC PASTEL POP」とある、ヴィヴィッド・リキッド・アイライナーの3色セットはそのとおり、鮮やかなネオンカラーのトリオで、わたしはその「BAESIDE」と名付けられたものをオーダーした。babeを略してbaeというのが流行っているらしいのだけど、それとbesideを合わせたのだろうか、君のそばで的な意味なのか。 セールで24ドルだから1本

          20200425

          ずいぶん前に買ったレシピ本や、友達からもらったレシピ本を引っ張り出してきて、気合いを入れて料理をしてみた数日間だった。 インスタストーリーに何人かがアップしていた旬のたけのこを灰汁抜きして作った料理を見ていて、千織さんが『チオベンの弁当本』で紹介していたたけのこのココナッツ煮を以前オカダと作ったのが思い出された。それから、ベジ料理に関心があるというわたしに泰ちゃんがずっと前に勧めてくれたオズボーン未奈子『オズボーン家のベジタブル食堂』にあった、黄パプリカとオリーブの白ワイン

          20200421

          叫ぶ練習をした。 服や髪型のスタイルみたいに、声のトーンを変えて。 善意の旗振りのもと、固有性や個人が軽視されゆうのに、そこで生き延びるためにある部分での一致を優先しようとして、本当は対立する部分の犠牲が言葉にならずに消えていくみたいに見える。特に、これまでも端に追いやられちょったのに、声が小さいきって、なかったことにされてきた部分の滲みが悲惨なほど横暴に踏みにじられるゆう感じがする。 Netflixで配信されゆう『ハイエナ』でキム・ヘスが何度か叫ぶ姿を見て。 キム・ヘス

          20200418

          鬱ではないけど、やる気が出ない。 何も書かないでいると読まないでいると、堕落しているように感じられるけど、「書けない」であり「読めない」であり、書けない・読めない状態へのなんらかの外圧も働いているのかもしれないとも思ってる。数値化とかで、自分でどうにかできる程度なのかどうか、わかるわけではないのだけど。 ポリンキーのめんたい味がおいしい。すごい胃の中に味が残って、咽頭からずっと昇ってくる感じが続く。しつこい。 フィオナ・アップルの新作『Fetch the Bolt Cut

          20200417

          自分のことを説明する人生やったから(未来もきっとずっとそう、と覚悟はしている)、そしてその言葉に対して考える時間もとってくれず、知っている範囲から出ようとせず、何かにまとめられたり当てはめられたり、あるいは一切無視されるような経験を重ねてきたから、知的な人に惹かれてきた。 高学歴な学者とか編集者とか。浅はかとも思うけど、どこの学校に行ったのかも気にしてしまうところがあって、ただ自己弁護すると先述のとおり、他者を傷つける可能性を知識が軽減するかもしれないのに、無自覚に思慮のない

          20200416

          何年か前に、台湾に逃げようかと思ったことがあった。そのことについて簡単にふれる文章がそろそろ公開される予定だけど、そこでは「逃げたい」という意志については、ふれていない。 台湾でも使われている普通語(北京語)ができれば、日本に住むのが本当に厳しくなったとき、今まあそこそこできる英語とあわせてなんとかどこかで生き延びられるんじゃないかと思って、友達がその少し前に写真展の縁で台湾にしばらく滞在していたこともあったしと、すぐに桃園空港に飛んだら高知市の中心部と同じ風景に見えて、気に

          20200414

          オンラインのミーティングが遅くなり、夜ごはんを作るのが面倒やったけど、酒粕が余ってどうしようもなかったので、味噌と牛乳でクリームペンネにした。鯖缶があったので入れてみたら、見た目がやばい。最後に入れた、塩の加減でちょっとしょっぱくなってしまった。「ひとつまみ」のぐあいの難しさ、あいまいな未来の不安と予期せぬからこその楽しさのジレンマ。 部屋におったけどメイクした。前にも書いた、『Beauty the Bible』にイガリシノブが出ちょったときの、囲みアイメイクをさらに自己流

          20200413

          夜ごはんは、牡蠣ときのこのパスタ。にんにくと玉ねぎに続けて、缶詰のスモークオイスターと冷凍しておいたしいたけやしめじを炒めたもので、和えただけ。オカダが教えてくれたやり方。 言葉も、生活のしかたも、ほとんどが誰かから借りてきたもの。 メディアなど主流の社会で注目されるのは、そのうちひと握りで、中には立場とか属性で少数派だったり表に立てない人のものは、ないものとされて、多数派や表に立てるだけの能力を得られた人のものは価値があるとされる、みたいな風景をずっと見てきた。 本当は

          20200412

          さっき、コンビニのレジ内で、たぶんマスクかティッシュ類について、朝早くに出かける会社員の人が買えなくなるから的な、品出し時間の分散を店員同士が話していた。それ自体が政治的やと思った。政治がその先にあると思った。 昨日の夜、同じコンビニにポリンキー(PBバージョン)を買いに行ったら、アイス類の近くにティッシュ類が出してあって、ボックスティッシュはバラ売りやった。分配の意識を感じていた。 ポリンキーは棚から消えていた。 夜ごはんはインスタントのお味噌汁、かぶの浅漬け、唐揚げ

          20200411

          インスタグラムのストーリーで、オーストラリアに住む友達が、庭で子どもたちを遊ばせている様子を見て、良いなと思う。イースターで、庭とか家の敷地内にたくさんエッグを潜ませて、遊ぶ姿。 でも、たった数十秒の動画で見ているに過ぎなくて、その街で暮らすこと、子どもを育てること、母語が日本語の人間が英語でコミュニケーションを取るのが生活の標準に変わること、思いついてこうやって書き記せるなにかだけでは言い尽くせない機微を省略して、「いいね」と言い切ってしまって良いのかと、ときどき考える。