見出し画像

202005001-07のあいだで

自転車に乗って出かけた。

一度は、隣の隣の駅の、さらに北に行ったあたりの花屋で、切り花をいくつか買った。緑の小さいバラと、カーネーションを2色と、ユーカリ。ユーカリはドライのものがすでに部屋にあって、2年くらい前にトシエさんのワークショップのとき作った花束のうち、花びらや花粉らしきものが巻き散りやすいものを除いたら、残ったのがそれだった。そのほかは、多肉植物など観葉植物をいくつか鉢で買い始めて以来、ほぼ切り花は買わなくなっていた。
そのお店では、マスクをしていたわたしに店主の女性が「地声ですか? ハスキーな声に憧れます」と言われた。声について指摘されることは、ままある。そういうとき、これはあくまで感じ取ったもので確かめてはないのだけど、「男性的」あるいはもっと直裁に決めつける「男だろう」というニュアンスを含んだ言い方というのがけっこうあって、傷つくというか、またかという感じでもう慣れてしまったのだけれど。その花屋で言われたのはそっちじゃなかった。そっちじゃないパターンで、例えばバーとか居酒屋で隣り合わせて話す場合によくあるのは、「酒強いと思った!」というやつで、つまり酒灼けだろうという推測を立てられるほう。
声からいろいろ推測される同じ系統のやつで、「飲み屋で働いているんだと思った」というもので、これはいわゆるクラブとかショーパブで働いているんだろうと、職業を決めつけられているニュアンスのやつはジェンダー差別と思ってる。だけど、そうではなくシスジェンダー・ヘテロセクシュアルの社会規範としての「飲み屋」就労と推測を立てられているのもあるみたいだから、ちょっとよくわからない。

2年前のトシエさんのワークショップで、そのあと参加者のひとりから「あの人ゲイ?」と尋ねられた、と聞いたのだけど、その経験は、去年3月から1年間伊勢丹メンズ館に展示された「自分らしさの文体練習」に寄稿した「視線の上書き」の創作の際に使った(企画・編集した山口博之さんがつけてくれたタイトルはとても気に入っている)。
3-4年くらい前にタブラ奏者の湯沢さんと飲み会で知り合ったとき、「え、うそ、女性でしょ。女性の声だよ。アルトっていうよりテナー」と言われた。もうそれで通そうと思ったのだけど、ときどきやっぱり迷う。今わたしはハンター・シェーファー(の声)になりたい(というエッセイがもうすぐ発売の「エトセトラ」VOL.3に掲載されます)。

もう二度は新宿まで自転車で行って、そのうち一度は、24時間営業の新宿郵便局も郵送サービスがコロナ対応と祝日仕様で閉まっていて、せっかくだからと街を歩いた。静かだったけど、それなりに人はいた。東口駅前のあの常に混んでる感じ、歌舞伎町側に上る交差点も、伊勢丹方面へと東に開かれた交差点も、あ、たぶんこれが8割減というやつか、と思えた。
Newsweekの日本版ウェブに掲載されていた丸川知雄さんの論考で、安倍晋三氏の「都市部では(現状では)人の流れが平日は6割減、休日は7割減で、接触機会の8割削減にはさらなる努力が必要です」という4月22日の発言には「人の流れ」と「接触機会」との混同がある、という指摘があった。人の流れを減らす割合は、接触機会の減と丸ごと数字として同じものとして相関するのではないのだと。つまり、前者が5割程度減れば、後者は8割以上減って、さらに後者を減らすことが大事なのだから、前者をもう少し抑えようという話と理解した。
これを打っている7日(深夜で、もう8日になっているのだけど)の昼間にえいきくんとやりとりをしていて、紀伊国屋書店新宿店や、首都圏でも一部百貨店を開けるかもという話を聞いていたので、そしたら足を運ぶ人の流れが生まれてしまうのでは、と驚いた。
それでその新宿に自転車で行った一度目は、伊勢丹を見ようと歩いていたら手前の無印良品が開いてたので、あ、収納を買い込んでキッチンを整理しようと思い立った。以前、えみりから「もっと整理できる。得意だから手伝うよ」と言われて、どうにかしたいと思っていたし、オカダの家でカゴとか引き出しとか上手に使ってるのを見ていたのも思い出して、いくつか買った。
閉まっている伊勢丹の写真を撮った。新宿駅西口のほうのレンタルサイクルのポートにはほとんどなかったので、新宿中央公園まで歩いて(収納用品をけっこう買い込んでたので疲れた)、そこのポートで借り、帰った。マスクなしで走っているランナーを10人くらいは見かけた。いやだ、と反応する自分がいた。
新宿中央公園では、大西連さんらもやいの方々などが野宿者や生活困窮者に炊き出しをしていると聞いているのだけど、確かこの時期に、CNNかBBCが「コロナ難民」(corona refugee)と報じていたのを思い出したのは公園のそばを通っているあいだだったか、後日だったか、今は思い出せない。
夜にキッチンを片付けたら、半間くらい部屋にスペースができた。

もう一度新宿に行ったのは再度郵便局を利用するためで、レンタルサイクルは前回の帰り時分に駅付近ゼロ台の反省を踏まえて、局前の駐輪場に置いて、郵送を終えてから収納用品を再追加するため今度は新宿ピカデリーにテナントで入ってる無印のほうに行った。店前に自転車は停めた。
店は混んでいた。評判のジャム用のシリコンスプーンを買った。入口が2cm弱の小瓶のジャムも、そこまで掬える優れものだった。

いろいろ呆れるというか腹立つというか、まあめんどくさいことが重なって、夕方、近所の評判のパン屋の名物ホットドッグだけで済ませるつもりが、冷凍して少しずつ食べようと思っていたはじめて買った食パンも早速食べてしまった。無印のシリコンジャムスプーンで、2年以上前にベトナム・ハノイに行ったとき買ったミニジャムセットのいくつかを。バナナチョコジャムは、チョコペースト感がなく、ちゃんとバナナジャムって感じで、でもチョコですごかった。
22時ごろにお腹が減ってきて、ラジオを聴きながら、痛みそうだった春キャベツを1/4千切りにして、グルテンフリーな大豆粉と米粉の天ぷら粉と小麦粉の天ぷら粉を合わせて卵と水で伸ばしたのに加えて、豚バラといっしょにお好み焼きにした。ソースがないから醤油を混ぜた。
その天ぷら粉前者は、郵便局と無印に行った2回目の日の夜、クィアな友達数人とzoomで飲み会をしようと誘ってもらったから、奮発して天ぷらでも揚げるかと買ったもので、タラの芽とフキノトウを揚げてみた、というか多めの油でフライパンでやった。けどあんまりおいしくなかった。やっぱり小麦粉や! と思って翌日買ったのが後者で、タラの芽がスーパーで大量に半額だったのでそれらいくつかと、あと海老とを揚げた(焼いた)。おいしかった。

クィアな友達らはシス男性で、だからときどき、頼りになると思いながらも、同じような立場で話せる人か、同じシス男性でもわたしを性的に求めてくれる人がほしいと思う。
去年の今ごろ、ひどい別れ方をしたデート相手(付き合ってはない)のことが思い出されながら、また似たような人に興味を持ってるねとクィアな友達らのひとりと話しながら、でもなにか違う気がする、確かに、みたいなやりとりを詮ないなと思った。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?