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なぜアスリートは「ノート」を書くと良いのか?《7つの効果》

トップアスリートが、競技に関して「ノート」をつけてているという話は、最近よく耳にします。(ここで使用しているnoteではなくて、リアルな紙のノート)

なんで「ノート」を書くと良いの?

 なんとなく思い浮かびますが、すごく気になっていたので調査開始!いろいろとアスリートのインタビュー記事などを漁ってみると、個々の選手によって書く内容は様々で、選手が実感するノートの効果もいろいろあるんです。

そして、とても参考になる書籍「世界を獲るノート~アスリートのインテリジェンス~」(島沢優子氏著)を見つけました!

 この本では、伊藤美誠選手や、早田ひな選手など世界で活躍するトップアスリートや、ゴルフ・ラグビー・柔道・卓球の日本代表を育成する指導者・監督、高校で輝かしい成績を残す部活動などなどで、選手がどんなノートを書いているのか、そしてその効果をどう感じているのかなど、アスリートの「ノート」について詳しく書かれているんです!しかも、脳科学篠原教授・スポーツ心理学荒木教授がノートについて解説もしている!夢のような本です。

ということで、この本の中から、「ノートをつけることはなぜ選手にとって効果的なのか」について、特に興味深かった部分をピックアップして、まとめてみました。


卓球・伊藤美誠選手、早田ひな選手の語るノートの効果

 卓球日本トップクラスの伊藤美誠選手、早田ひな選手もノートをジュニア時代からずっとつけているそうで、彼女達のノートに関するコメントは大変興味深かったです。

 伊藤美誠選手は、中学生の頃から2018年までに80冊のノートを書いてきたそうです。対策ノートには、自分の試合、次に当たる相手の試合を見て気付いたことを書き、練習ノートでは練習時の反省・分析を行い、次の練習に向けて試すことを明確にしてきたと言います。伊藤選手はノートを書くことによって「自分から考えられるようになった。」と述べていました。


早田ひな選手は、小学1年生の頃からノートを書き続けているそうです。アイデアの引き出しを増やすために自分の考えをノートに整理していると言います。ノートには、頭の中にある疑問や悩み(できないこと、わからないこと、迷っていること、技術、メンタル)をただ吐き出すそうで、それらを黒ペンで書いたら、下に赤ペンで自分なりの答えを書くそうです。答えはすぐ見つかる時もあれば、数日たってからわかって書き込むこともあるとのこと。自問自答して、少しずつ自分で考えられるようになってきたそうです。


二人ともノートに書くことがジュニア期から習慣化され、競技の一部になっているようです。そして、誰かから言われたから、誰かが見るから書いてきたのではなく、自らの意志で、成長のために欠かせない行動だと自覚して書いていることが明らかでした。

そして、二人の共通点に

ノートを書くことによって「自分で考えられるようになった。」

というコメントがありました。

この言葉は、この書籍の中でも最も重要なポイントとして挙げられている

選手が成長し続けるために必要な「主体性・自主性」を、ノートを通して身につけている

ということを象徴していると言えるでしょう。

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ノートの7つの効果

ということで次に、選手の主体性・自主性の育成に繋がる『ノートをつける効果』について、私の選んだ重要なポイントを7つにまとめてみました。

①外在化できるようになる

 外在化とは「問題や課題を、自分の感情や人格の外に取り出して置く」こと。問題を感情から切り離して考えられると、冷静になるので、解決すべき問題が明確になる。そうすると失敗や敗北とも冷静に向き合うことができ、次どうすればいいのか準備ができるようになる。


②客観視する力(メタ認知力)の向上

 脳科学研究者の篠原教授は、選手が成長し続けるには「自分が伸びていくためには何が必要か」「自分がうまくいっているのかいないのか」「先を予測しながら、現時点での自分の在り方を結びつける」ような自分を客観視できる『メタ認知力』が必要だと述べている。ノートを書くことによって、自分を客観視する力つまり、メタ認知力が向上し、さらに自分をコントロールしやすくなる。


③具体化・言語化能力の向上

 ノートに書くことで、考えていること・感じていることを言葉にして具体化できるようになる。スポーツではその場その場で素早い判断が求められることが多い。そのため、言語化能力を向上させ、プレー中に思考することを明確に、コンパクトに、要約できるようになると、スピードに対応できるようになる。また、書くことで何に意識を向けるべきなのか、何に集中すべきなのかがはっきりする。


④ひらめき/直観力の向上

 練習や試合を振り返ってノートを書いている時は、実際にプレーしている時以上に脳が活動することがあるそう。体の動きに指令を出す前運動野や運動野などが、競技中以上に活発になることがあることもわかっている。そのためノートを書くことは、脳内でのスキルアップトレーニングにもなっている。脳内でスキルの組み立てが定着するため、プレー中に都度適した動き・ショット・戦略を選択するひらめきに繋がる。


⑤リスクマネジメントができる

 試合に向けて選手はプレッシャーや不安でいっぱいになることがある。そこで選手がノートに何が不安なのか書き出し、どこからネガティブな感情がきているのか、それをどう解消するのかを整理することで、自分に必要な準備を明らかにすることができる。


⑥記憶の整理・定着

 ただ考えて終わるより、書いた方が記憶に残りやすい。就寝中に記憶が定着するので、就寝前に書く選手が多い。


⑦自己肯定感が高まる

 ノートを見返すことで、初心に還ることができたり、自分の成長を実感できたり、がんばった歴史を思い出すことができる。それが自分への肯定感や励みにも繋がる。


まとめ

ノートの効果をまとめてみて、トップアスリートや成長する選手達がなぜノートを書くのか、なぜノートを書くと成長できるのか、はっきりと見えてきました。

『「自分で考えて、動く」ことができる選手は、成長し続けられる』という理解は、最近では多くの選手や指導者に広がってきているのではと感じます。

しかし、そのような力を実際に選手が身につけるようになるには、選手や指導者がたくさんの工夫や努力を重ねる必要がありますし、なかなかの難しい課題ですね!

だからこそ!!!「ノートをつけること」が「自分で考えて、動く」ことができる選手に近づく一つの方法であることを、ぜひいまスポーツで頑張る選手のみなさん、指導者のみなさんに知ってもらいたいなと思いました。

いやー!自分が選手の時に知っておきたかったです!!!!!


<参考>
・島沢優子(2019)「世界を獲るノート~アスリートのインテリジェンス~」

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Challenge!チャレ子のTwitter
https://twitter.com/challeko2020
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