試合で力を発揮できなかった選手時代の自分に伝えたい 「セルフトーク」トレーニング
私は選手の時、「技術・体力と同じで『考え方(心)のスキル』も鍛えることで、最大限のパフォーマンスを安定的に発揮することができるようになる」ということを知らなかったし、理解していなかったし、信じてもいませんでした!
なんでそう思っていたんだだろう、、、目に見えないからなのか、、、後悔しかない(泣)
スポーツ心理学に触れてきた現在の自分が、もし過去の15歳の自分に会って話ができるなら(なぜ15歳?:15歳までは全国優勝したり、日本代表になったり、アジア大会で優勝するなど、ノリにノッていたがその後競技成績がた落ちで、どん底に転落して行ったから)、そのころ自分が持っていた一つ一つの誤解を解き、
「練習も、体力トレーニングももちろん大事だけど、1日30分でいいから『考え方・心のスキル』を鍛える時間作ってみよう」
って言いたい。そしてそこで、まっ先に伝えたいのが「セルフトーク」についてです。
選手時代に持っていた「思考・心・メンタル」に関する誤解
選手の頃の自分は、誰に言われたわけでもないですが、思考・メンタル面に対してこんな↓思い込みをしていました。
<思い込み>
・自分とは遠い世界のトップレベルの選手が、上を目指して追い込む経験から、強靭なメンタルは鍛えられていくものなのだろう。
・トップの人達は、技術も体力もずば抜けていて努力もすごくしているから、その人達と比べたら自分は心理面鍛えるレベルではない。
・よくわからない心理のことに時間を割くなら、今の自分は練習したり試合した方が強くなれる。
・心理とか考え方とか、そもそも生まれつきみんな違うんだから、変えられるわけがない。
・自分はなにも考えない方がいいプレーができるから、考え方にしばられたくない。
・心理とか思考を変えるとか、なんとなく怪しい。洗脳されそう。
・心理面のトレーニングは、弱い人がやるもの。自分が自分なりに問題に立ち向かっていくことで心は鍛えられ強くなる。
選手の頃の自分は、試合になると緊張しすぎたり、集中できなかったり、そんな自分にイライラして、いつもできていることがほとんどできなくて、情けない思いばかりしていたんですよね。。。
「心を強くしないと、、、」って思っていたけど、どうやって強くするのか、鍛えられるのかわからなかった。しかも、上記の誤解があったので、ひたすら競技に打ち込んで、頑張るしかないと思っていました。
技術体力はコントロールできるのに、思考・心はコントロールして鍛えられるだと思っていなかった。。。
15歳の私に伝えたい「セルフトーク」を鍛える5STEP
時空を超えて15歳の私に伝えたいことは『セルフトークのトレーニングせよ』ってことなんですが、突然そんなこと言っても、わけわからないだろうから、こんな感じ↓で5つのステップで説明しようと思います。
語りかけているイメージでまとめてみました(‘ω’)ノ
①おぬしに足りないもの
おぬし(15歳の私)は技術とか体力をがんばってトレーニングして、ベストな動きができるようコントロールすることに注力しているけど、自分の「思考・考え方」をコントロールするための努力は全くしてないね。
技術・体力・思考心理の掛け算で、発揮できるパフォーマンスが決まってくるので、技術・体力10点でも、思考・心が2点だったら、発揮できるパフォーマンスは20点にしかならないわけで。どちらかだけが優れていても、パフォーマンスは最大にならないんだよ。
試合中に実力が発揮できないって嘆いているなら、いま鍛えるのは、「思考のコントロール」スキル!!!これが低すぎなんだよ。
②見方=セルフトーク
「私たちは物事によって乱されるのではなく、物事に対する自分の見方によって乱されるのである」
哲学者ベルクソンの言葉です。ビビっと来たでしょう。
スポーツで必要な「思考のコントロール」ってのは、試合中の出来事に対する『見方のコントロール』のことです。『見方』って、「どう捉えるか」ってこと。捉えていることって、自分で自分に語りかけている言葉なんです。これ心理学では「自分への語りかけ=セルフトーク」と言われています。
例えば、試合中にミスを繰り返してしまったとします。
A「またミスった、、、次またミスしたら流れが相手に行ってしまう・・・」
とセルフトークする人もいれば、
B「いまのミスは相手のナイスショットだった。次は軸足をセットを速くしよう」
というセルフトークをする人もいる。
同じミスが起こっていても、AかBのセルフトーク(見方)をするかによって、その後の気持ち、行動が違いそうだよね。
③セルフトークの種類
セルフトークには大きく分けて2つ種類があります。
1.「役に立つ(生産的な)セルフトーク」
次にどんな行動をするか、どうやって問題に対処するかを明確にして、物事を発展させられる。
例「いまのミスは相手のナイスショットだった。次は軸足をセットを速くしよう」
2.「役に立たない(非生産的な)セルフトーク」
そのセルフトークをすることで、自分の気持ちが後ろ向きになったり不安になったりする。モチベーション低下、諦め、怠惰も生み出す。
例「またミスった、、、次またミスしたら流れが相手に行ってしまう・・・」
試合中にはどれだけ「役に立つ(生産的な)セルフトーク」ができるかが大事。そして知っていてほしいのは、役に立つセルフトークは、必ずしも前向きでなくてもいいってこと。
不安になったり、ネガティブになるのはしょうがないから、その不安を自覚して「なにをするのか、どう対処するのか」をセルフトークで明確にできればOKです。
③スポーツ選手はセルフトークをコントロールできるようになろう
セルフトークは選手の、自信、集中力、感情、パフォーマンスに影響を与えることがわかっています。目に見えないことだから、疑う気持ちもわからんではないが、選手はセルフトークをコントロールできるようになると、パフォーマンスが上がる!これはスポーツ心理学の研究で明らかにされている事実です。
動きをコントロールできるようにするだけじゃなくて、思考(セルフトーク)もコントロールできるようになることがパフォーマンスを上げるためには欠かせないんです。
④セルフトーク鍛える方法
鍛える方法は、↓の1~3を繰り返すこと!何度も繰り返して、習慣になるまでトレーニングしよう。
1.【事前】振り返る/書き出す
自分がいつどんなときに、どんなセルフトークをしているのか知る。良かった試合、良くなかった試合を全部振返って、思い出してみる。それをノートに書き出す。
2.【事前】転換する準備
書き出して明らかになったセルフトークの中で、役に立たないセルフトークを、役に立つセルフトークに転換して書いておく。
3.【試合中】止める・転換する
実際のプレー中に、セルフトークに意識を向けてみて、役に立たないセルフトークをしていることに気付いたら、その考えにストップをかける(ストップするトリガーとなる動作を決めておくと尚良い)。役人立たない思考がストップしたら、準備していた役に立つセルフトークを思い出し、行動する。
⑤試合中のセルフトークをより役立つものにするためのコツ
試合中は、緊張、焦り、力みなどから、どうしても感情的になったり、不安になるような考えが浮かびやすいよね。だから役に立たないセルフトークが生まれやすい。
しかも「試合中に考えても意味ないでしょ。むしろそれ自分を自分で追い込んでるし。」ってことを考えてしまう人が結構いる。
例えば、試合中こんなことを考え↓てしまうのは、無駄というかもったいないというか生産的では無いね。
・過去や未来のことを考える(変えられるのは「今」だけ)
・結果について考える(結果は最終的に出るものそこに意識むけてもしょうがない。「今」のつみ重ね。」
・コントロールできないことを考える(「今」自分ができることで勝負するしかない)
・完璧じゃないとダメだと思っている(相手も、環境も、調子も何もかもが練習とは違うので、完璧にできることは難しい。完璧にこだわり過ぎて失敗が怖くて、チャレンジしなくなるのが一番ダメ)
これらは「不合理な考え」と言って、試合中こういう考えに時間を割いていると、役に立つセルフトークが生まれにくい。つまり、パフォーマンスの向上を妨げるってことを肝に銘じておきましょう。
ということで、おぬし強くなりたいなら「セルフトーク」のトレーニングも取り組むべし!!!
まとめ
はい、現実世界に帰ってきました(‘ω’)ノ
こんな感じですね!15歳には難しいかなあ。。。でも本気で悩んでたから、15、16歳でこれ聞けたら、何かが変わっていたんじゃないかと思うんです。
技術の練習と同じで、1回やったらOKではなく、何度も繰り返して自分のセルフトークに向き合うことで変わっていくものなので、時間はかかる。心や思考は目に見えないから、自分は変わらないって諦めやすいけど、でも、なんでもそうだと思いますが、本気で向き合って変える努力をし続けることで、効果が出ますね。
これだけやってりゃ全て解決というわけではないけど、なかなか試合で力が発揮できずフラストレーションが溜まっている選手がいたらぜひ知ってほしいです。そしてもし、そんな悩みを抱えた選手に指導している、指導者の方が読んでくださったとしたら、ぜひ選手とセルフトークのお話をしてみてもらえたらと思います!
<参考>
・Larry Lauer , Daniel Gould , Paul Lubbers , Mark Kovacs(2015)USTA Mental Skills and Drills Handbook
・ロビン・S・ビーリー(2009)コーチングに役立つ 実力発揮のメンタルトレーニング
・ロバート・S. ワインバーグ(1992)テニスのメンタルトレーニング
・Robert S. Weinberg(1987)The Mental Advantage: Developing Your Psychological Skills in Tennis