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詩集

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2024年3月の記事一覧

僕のなかの赤毛のきみ

僕のなかの赤毛のきみ

トキメキだけで

すべてを失ってしまえればいいのに

ほんの僅かな企みが

未だにぼくを

大切にしている

こんなはずじゃなかった

ぼくは何者なのだろうか

もっと上の

ひかりだけの世界から

やさしいうたが

聴こえているのに

ずっと遠くの世界から

僕らのこれからを

ささやいてくれているのに

むらさきいろの

向こうから

赤い手紙が

送られて

ずっと いっしょに いようね

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草原の輝き

草原の輝き

ちぎれた鳥の足が

僕を導いてゆく

跡をたどって

ぬかるみに

はまっているのも

知らずに

あの輝きへ

生ぬるい痛みも

忘れられた傷も

ぜんぶ

そのひかりで

思い出させて

破裂した音

きらきらと舞う

腐敗した肉

これは僕の記憶

君の手を汚す

ぼくの血液のほうが

何よりも温かいこと

浅ましくなる

それでも

僕の頬に流れ落ちた

君の涙のほうが温かかったこと

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さよならの春

さよならの春

春の匂いが
僕らをおいだして
街は虹をつかんでる
ギターをきかせて
あいを歌えば
破顔するきみが
たまらなかった

嘘を重ねていくよ
上辺の恋に焦がれて
きみを苦しませるよ
本当の恋をしてたから

古びたバスが
僕らを追い抜いて
虹は愛をつかんでる
同じでいたいから
気づけなかった
恋してた君も
恋をしていた

きみを跨いでいくよ
煙草の火をつけながら
きみを忘れていくよ
最後の日を待たぬまま

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ノスタルジア

ノスタルジア

遠くの島で

うたが聞こえる

なぎさの宴

懐かしい音

待っていて

私が子どもに戻るまで

やさしい波

潮風に揺られて

白い時は

嵐のようなはやさで

なぎさの心

美しい島

待っていて

私が子どもに戻るまで

ほのおの香り

文明の呼び声

茶埜子尋子

星座

星座

ふたりで星座になれたら

いつかの日も見つめあえるね

かるいままで

刹那さを探して

いちめんきら星

裂け目から

こぼれて

きらきら 潮騒

目をつぶって

銀色 夜の方舟

いい夢を

茶埜子尋子

白い約束

白い約束

辿りついたの

浮かんでは沈んでゆく

星の丘の十字架の前に

いつからここに居たの

今までなにを見てきたのだろう

私もここに繋いでください

血をふき取って

罪ほろぼしの詩

草むらに散りばめるの

光るといいな

きらきら きらきら

きらきら

ここに来るまで

たくさんの約束かわしてきたの

すべては許せないかもね

白い約束

茶埜子尋子

遠吠えの詩

遠吠えの詩

死ぬために造られた

海の見える崖で

昇ってゆく月の光りに

照らされて

あなたのおかげで

こころ遺りも

忘れました

このきらめきがいま

わたしの陰を

消していくのです

あなたがもし

悪であっても

憎むことは

しません

ただそれだけを

この一晩の月のひかりに

残してゆきます

朝焼けと共に

さよならするの

慟哭

茶埜子尋子