茶埜子尋子

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潜水艇の詩

きみが知りたい あたかも入水するように 薄い紙が尊い気もちを知ったかのように 変わることのない気持ちは 深いところへおちてゆく 息苦しさを知らずに この海の暗さを知らずに きみが知りたい まるで底を探していつまでも着かない錨のように ぼくはそれでも きみが知りたい もしも暗やみの中 ぼくの息の根が止まってしまって ようやく底に辿りついても そこにきみがいなくても この暗やみは星降る夜より 気高い宇宙より ぼくにとって美しいものだったと

    • 浜辺の合唱団

      息を呑む わたしたちのメモリーズ 見えないものへ きらめいて 口笛も 飛べない鳥のメモリーズ 足首のきず 庇って 白鳥を抱いた人 木陰で捕まった人 窓辺で飛びだった人 かなしみは おそれを知らない 危険な露 泣きそうなほどの やさしさを 知ることはなかった 悔やんでできた ハーモニー 夕焼けに染まる 海に似ている 茶埜子尋子

      • 月のおもかげ

        月のおもかげひろがって あなたの肩へとどいたら ねむれない夜も あたためてゆく ギターはひかないよ きみがいるから きみがいるから 茶埜子尋子

        • 銀色の詩

          高い音がする方へ トキメキが足りない方へ 変わって 変わって 花のいのちも 奪ったら 明日への切符が 届くから 土星のまわりで 引き裂かれて きみのそばで 詩を書くよ 窓のかぜを つまみだして 茶埜子尋子

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        • 詩集
          61本
        • エッセイ集
          16本
        • 不思議な体験談
          5本
        • 言葉のおもちゃ箱
          3本
        • 心の詩
          2本

        記事

          銀河のかげろう

          きみのなみだが 言霊のように 降り注いで どうすれば生きれるかなんて 分からなくなってしまった 見たこともない 宇宙の意味を考えて 裸足のまま飛び降りる 蜃気楼はただ 美しいだけ 遠くを見つめて 傷になる 夜の星は ぼくのものではない そして だれのものでも なにも知らないのは 穢れた少女が抱えた 深い傷のような 凄惨なこと 美しさのなかで 化石になった 銀河のかげろうを みつめて 茶埜子尋子

          銀河のかげろう

          草創の詩

          青く燃える きみの瞳のように 時代が輝きはじめている ざわざわと震える あの山々の連なり 時代は君を待っていた 花びらの先のように 細やかな潤いは いずれ黒曜石の刃のような 鋭い孤独になるのだろう 時代に生きることなく 時代を攫っていけ 茶埜子尋子

          蛍の詩

          飛びなれて 忘れたくないものも なくなってしまってる 草で切れた中指に 露を垂らそうとしても 風に拭われて オオカミの遠吠えだけが この谷に響いて 青く光るこの花の名前も 忘れてしまったみたい 覚えていても 心地良さなんてなくて あれば狂ってしまうのに 今の今まで そうしてまで 見たかったもの この谷の守り人も 絶えてしまったというのに 美しく残ったまま 変わらずにいる 泉のほとりから 溢れ出る 光っては消える淡いひかりが この谷

          月読の詩

          薄いからだに 光を廻らして きみのいのちの在り処を説く 自然が生まれたようにしていれば きっとぼくらは死ぬのだろう だからいつまでも 自然を殺さねばならないのだろう 摂理というのは 近い未来じゃなくて 遠くの宇宙をいつもみている それをぼくらに知らせずに されるがままに死んでいく それかぼくらが気づけていないのか なすがままに殺していく まったくそれは 簡潔な気持ちであって 冷たい色も温かい色も 何もない そんな僕らなのだから ようや

          花葬乙女

          海辺の会食には 白いワンピースで リボンをほどいて 生贄になれないのが 苦しいの 数奇な運命に 指を刺されながら ギラギラ光る 無数の単眼を とめどなく浴びて 死んでしまいたい 支配されてもいい 血しぶきを丁寧に 舐めあげてゆく うっとりするような 殺気に慄いたら どうかここへ おいでください 身体の奥が あつくなるような わたしはあなたを 心待ちにしています 背中のお下げは 乙女のしるし もっと もっと ジンジンさせて 茶

          痛いの痛いの

          痛いの痛いの とんでいけ 絡まった針金を ぐるぐるって メリーゴーランドにしたら 逆夢のはじまり こんどの夜は 指を切って 愉しかったら 裂いてあげよう 面白いの見たさに 見失って ピエロになったのは どっち? 深い淵に はまってしまって もがいてるのは どっち? 痛いの痛いの とんでいけ 見えないフリしてる あいつに トンデイケ 茶埜子尋子

          痛いの痛いの

          航海薄明

          青と赤が はじめて繋がる時間に ひんやりしたおでこを きみの頬にくっつけてみる この朝とおなじように 少しだけかなしい この気持ちはきみのもの? ちょっぴりも動かないで 心だけを繋いで 紫になる 艶めいた肌に 痕をつけたら 終わってしまうんだ 薄暗いままで 陽の光も見えないままで だから声はきこえない きみとぼくの この世界への代償 だから世界は美しい きみのぼくの この世界への代償 地平線の下でふたり 十字架をにぎりしめて 茶埜

          ユラユラの詩

          ちぎれた糸を 雲の切れ間に 紡いでゆくような そんな生命になりたい ユラユラ とっくに解けている腕に 繋がれたくて 星を眺めた 淡くひかる 小さな星は きみの喘ぎを孕んで ユラユラ 何も奪うことはなかったのに 大きな力に 解き放たれて 震えている ふたつの星は 雨の温もりをふくんで ぼくらこれから こんなことに 慣れていかなくちゃいけないのかな ぼくは大丈夫 君が無事なら ユラユラ まだ生きていたい ユラユラ 生

          ユラユラの詩

          夜窓の詩

          元いた場所に 帰ろう 虚宿行きの列車に乗ろう 窓を開けて ぼくに身を任せて 瞳をとじれば 満天の星々が迎えにきているよ ようやく君に見せることができる 銀河へつづく夜を 車掌さんも お客さんも いないんだ ぼくときみだけ 風と星だけ それだけで宇宙はできる ポッペンを割ったような 弾ける音がぼくらを包みながら 遠い遠い夜へ 元いた場所に帰ろう あたりまえだった宇宙へ 茶埜子尋子

          朝霧の詩

          本当にきみは きれいな色でできている 髪も 瞳も なにもかも だから今もこうやって ぼくに夢を見させつづけているんだろう ひんやりした世界で やさしく囲って 夢のような 現実のなかで 夢をみている 残酷なきみ 美しいきみ ぼくの好きなきみ 茶埜子尋子

          玉響の詩

          殺しにくる 見境のない 仕草で 見とれている 直刃のような 眼差し 重ねられた羽衣 屍は山河ですすいで 手折られた精霊 流れ星のような美しさで 首元で揺れる 銀色の勾玉 しんと森へ響いて 青く光る 蟲らの声よ 茶埜子尋子

          トビウオの詩

          目の前を 飛び交ってゆくのは 気高く有りつづけた 先人の火の玉 パシャン パシャン 幾千の意志が 海にはじけて 空に散る 手を振って サヨナラ告げた日 手を握って 愛を伝えた日 手を震わせて まだ見ぬ未来へ手紙を書いた日 重ねた日々の端くれを 繋ぎ合わせて 日ノ本の旗になる 歪んだ空へ 虹色の鱗を散りばめて 太陽は昇るよ 新しい国に 茶埜子尋子

          トビウオの詩