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蛍の詩



飛びなれて

忘れたくないものも

なくなってしまってる

草で切れた中指に

露を垂らそうとしても

風に拭われて


オオカミの遠吠えだけが

この谷に響いて

青く光るこの花の名前も

忘れてしまったみたい


覚えていても

心地良さなんてなくて

あれば狂ってしまうのに

今の今まで

そうしてまで

見たかったもの


この谷の守り人も

絶えてしまったというのに

美しく残ったまま

変わらずにいる


泉のほとりから

溢れ出る

光っては消える淡いひかりが

この谷を埋めつくして

静かに黄泉へ

繋げてゆく


あのころの光を

蛍は知らず

導くままに

ほほえんで


茶埜子尋子

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