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人生に計画通りいくものなんてあるかね?【韓国エッセイ・試し読み】

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「どうしようもないことはどうしようもない」と考えるのがよい時もある。でも「どうしようもなかった」とクールにふるまおうとしても思い通りにいかないのが平凡な私たちの人生。

 韓国から届いた、自分甘やかし系(いい意味で)エッセイ『怠けてるのではなく、充電中です。』(ダンシングスネイル 著/生田美保 訳)。

 今回はその中から、完ペキを目指しすぎて苦しくなってしまうとき、気持ちを楽にしてくれる一遍をご紹介します。

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■■■ ときには答えがわからなくても ■■■

 ものを食べるときの変な習慣がいくつかある。プリングルズのようなポテトチップスの筒を開けると、普通、上のほうは割れていなくてきれいだが、下のほうに行くほど割れたり欠けたりしている。まずそれをトレーに全部出して、割れているものといないものに分ける。それから、割れていないものはもう一度そっと筒に戻し、割れているものを先に食べる。その後で丸いきれいなのを1枚ずつ取り出して食べるときの気分といったらもう。果物で一番好きなブドウを食べるときにもその儀式(?)をするのだが、房を軽く持
ち上げて落ちた実をお気に入りの皿に集め、それを先に食べてしまうと気持ちが落ち着く。もちろん、外で誰かと一緒に食べるときはそういう行動ができないので、微妙に疲れが溜まる。


 もうひとつの「こだわり」は、ケータイのバッテリーが100%充電されていないと落ち着かないというもので、約束の時間が過ぎているにもかかわらず、数字が100になるまで出かけられないことがある(約束の時間を守ることには強いこだわりがないのがアイロニー)。97%や98%ではダメ。絶対に
100%でなくてはならない。また、非常事態でもない限り、節電モードになるまで充電しないでいることもないので、「ごめん、バッテリーが3%しか残ってないから途中で切れるかも!」という人が理解できない。友よ、なぜに補助バッテリーの存在を忘れるのか。


 こんな性格は計画通りに事を処理しなければならないときにはプラスに働くが、知っての通り、人生においてだいたいのことは計画通りにいかない。特に人間関係において自分で1から10まで統制できない状況が生じると、実体のない不安に包まれて夜も眠れなくなってしまった。相手の感情と反応という変数にいくら完璧に備えたつもりでも、計画外のことが起こるものだから。だけど、自分の持つどんな性格であれ、それが連鎖的に別のことに悪い影響を与えないならば、ムリして変える必要はない。「こだわり」も生活に大きな差し支えがなく、一種の安心感を与えてくれるものなら、そのままにしておいたって構わない。残念ながら、私の場合は仕事や人間関係に悪い影響が出る日が増え、調節のためにいくつか努力が必要だった。

 まずは普段の「こだわり」とは反対のことをしてみることにした。ものを食べるときは形の整っているものを先に食べた。最初は少し引っかかったが、形の悪いものを先に片づけなくても、形のいいものを食べるときの気分は悪くなかった。重要な仕事の連絡があるときを除いては、ケータイのバッテリーが節電モードになるまで放っておいた。それから、ケータイの通知を0.1秒以内に確認する癖も、かなり自分を疲れさせているようなので、しばらくはロック画面にも表示されないようにほとんどのアプリの通知機能を切って、外部の刺激への露出度を調節した。いざそうしてみると、バッテリーが3%でも不思議とひどく不安にはならなかった。大したことではないようだが、これは認知療法(「思考」を変化させることでつらい気持ちをコントロールしていくもので、現在ほとんどのメンタルヘルス系の疾患において最も効果的な非薬物治療として認められている)とも通ずるものである。それから、強迫観念のせいでほかの人より疲れやすいので、計画的な性格を逆手に取って、休憩時間をあらかじめスケジュールに組み込んでおいたりもした。


 こんな風に日常生活で自分を縛りつけるものが減ると、ほかのところでも余裕が生まれ、自分と世の中に向ける視線が寛大になるのがわかった。小さな行動の変化が実際に思考と感情にまで影響を与えたのだ。

 世の中に変わらないものがあるとすれば、それは「変わらないものはないという事実」のみ。計画がひとつ狂ったからって残りの人生が丸つぶれになるわけではない。だから、ときには結果を恐れず、ちょっと試してみるのも悪くない。

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 今日という日が、あなたにとって余裕の持って過ごせる一日でありますように。



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