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ゲーム開発のデバッグ(QA)について

サイバーコネクトツー山岡です。

ゲーム開発には必ず「デバッグ(QA)」という工程が存在します。

近年のゲーム開発ではマルチプラットフォーム対応、多言語対応、ハイエンド化による制作物量の増大によりデバッグも非常に複雑化、肥大化しています。

そのため、デバッグに割かれる期間や予算も大きくなり、デバッグの進行次第で開発費やクォリティ、発売日も大きく左右する重要な工程のひとつになっています。

しかし、ゲーム開発のデバッグって自動化やAIの情報は良く見かけるのですが、それ以外の情報ってあまり見かけません。なので、今回は「ゲーム開発デバッグの管理」の視点で掘り下げてみたいと思います。

■制作以外にも多くの人が携わってデバッグは進行する

デバッグ進行時は非常に多くの社外の会社や部署、スタッフが携わっていまして

●開発会社(デベロッパー)
●パブリッシャー
 ・プロダクト担当
 ・品管担当
 ・マーケティング担当
 ・海外担当
 ・海外販社
 ・国内外部QA会社
 ・海外外部QA会社
 ・ローカライズ会社
 ・ローカライズQA会社
●プラットフォーマー
 ・提出リージョン(エリア)の各プラットフォーマー

などなど様々な方の協力の元、デバッグは進行します。だいたい制作スタッフの人数と同じかそれ以上の人が稼働していると思います。(制作が50名なら全体では100名以上)

もちろん制作期間中から協力いただきつつ進行しているのですが、デバッグ期間中は数ヶ月という非常に短い期間の中で進行する必要があり、足並みをそろえたり目線を合わせたり、情報を収集したり決定を促したりと常に全体をコントロールしないといけません。

これだけの人が動くわけなので、当然デバッグに計画や戦略が無いとあっという間に破綻してしまいます。

■デバッグを成功させるには

デバッグを成功させるためのポイントをいくつか紹介します。

①デバッグのマイルストーンを明確にする

デバッグの目的は想定した期間と品質でマスター承認をクリアすることです。そのためにはデバッグ開始前、デバッグ中、マスター提出前にいくつも達成しなければいけない事が多くあります。それらを一つ一つ丁寧に洗い出し目標の日付を明確にしましょう。

ざっくりですがマイルストーンとして設定した方が良い項目としては
●デバッグ開始前
 ・仕様書の最新化
 ・実装状況の確認(デバッグが開始できる状態の確認)
 ・QA工数の見積もり(QA側での物量把握)
 ・チェックリスト作成、スケジュール化のタイミング
 ・不具合報告フローやバグランク基準の決定
●デバッグ中
 ・ガイドラインチェックの開始と完了タイミング
 ・機能チェックの開始と完了タイミング
 ・LQAチェックの開始と完了タイミング
●マスター提出前
 ・残バグ精査のタイミング(不具合修正を絞るタイミング)
 ・ノンタッチチェックのスケジュール
 ・プラットフォーマーごとのマスター提出タイミング
あたりでしょうか。(もちろん他にもたくさんポイントはありますし、進行中は細かく調整する必要があります)

②進捗を見える化する

デバッグ完了とは
1.予定しているQAチェックが完了している
2.不具合対応が完了している
3.修正確認が完了している
状態を指します。

当たり前ですが、マスター提出直前に大量の不具合報告がなされたり、修正対応がなされたりしては、終わるものも終わらなくなります。

なので、QAチェックの進捗、新規不具合の登録状況、残バグ数の状況を細かくウォッチし、コントロールしていくことが必要です。

CC2ではデバッグ期間中はデイリーで上記進捗のレポートを作成し見える状態を作っていますよ。

③開発側も積極的にデバッグに参加する

いつの頃からかデバッグはプログラマーとQAが行うものという風潮が強くなった気がします。しかし、そのようなプロジェクトは絶対にうまく進行しません。

QA側は仕様書通りの挙動になっているか、プラットフォームのガイドラインに適応しているかのチェックは出来ますが、仕様バグや版権タイトルならではのバグ(見た目は軽微だが版権的には重篤な内容)等は開発側から積極的に情報を出さないとチェックはできません。処理負荷やメモリといったコードやデータの作り方によって変わるものは開発当事者でないとわからないことも多いです。

結果、デバッグ終盤に重篤な不具合やマスター提出に影響する不具合報告が発生してしまい、スケジュールに影響してしまうケースも多くあります。

また、徹底的にデバッグを行いバグが0件になったとしても、ロード時間が長い、触り心地や視認性が良くないなどはバグでは無いとは言え、お客様の不満や不利益につながる要素になります。

なので、開発側も実装状況や動作を把握、確認し、積極的にデバッグに参加することでそれらを防ぐことができるのです。

■まとめ

デバッグは制作と異なり予算と時間を掛ければ必ず終わらせることは出来ます。しかし、進め方次第で予算やスケジュール、クォリティを大きく変える(守る)ことができるものでもあります。

長い期間と時間をかけて、いろいろな想いを込めて作り上げてきたタイトルだからこそ、最高の状態でお客様の手に届けるためにも、しっかりデバッグを行っていきましょう。

サイバーコネクトツー 執行役員
山岡 寛典

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